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MikuMikuDance 生誕15年目において

 長年義務教育から抜け出せないまま生きているかんなです。
 先日、遂にMMD(MikuMikuDance)も15周年を迎える事となりました。
 残念ながらその生みの親は既に隠遁の身となっているので、表立つ事は無いのでしょう。が、今も生活を営みつづけていて欲しいと個人的には願うものです。
 Twitterでは何度も呟いていますが、まさかここまで長寿のコンテンツというかツールというかネットワークが続くとは思いませんでした。

■SNSの役割を果たした3DCGツール

 結果論というか、MMDがニコニコ動画を始めとした動画サイト等で普通に使われるようになって数年、「MMDとは何ぞや」という禅問答的な考えは常々ありました。
 前述の通り、本来ならばいちフリーソフトの名称に過ぎないものが、いつの間にか大きな塊というか部門というか、そういうものに成長していました。
 作者である樋口氏とは何度か話しましたが、その度にお互い

「こんなカタチになるとは予想できなかった」

 というのが、お互いの会話の締めくくりの挨拶になっていたような気がします。
 現在はVOCALOIDという枠を大きく超え、様々なジャンルやキャラクターなどが活用できるようになっていますので、MMD総体としてひとつにまとまる事はもうないでしょう。
 生物のごとく、一部を遺伝しつつも細分化され継承され、それぞれ集団(クラスタ)として存在します。
 それでもなお、現時点でもTwitterをはじめとした各種SNSでは、プロフィールにMMDユーザーである事が記されていれば、あるいは自身の活動をタイムラインに乗せていれば薄いつながりであろうとも、フォロー・フォロアーになる事は日常的に行われています。

 MMDが出た時にはニコニコ動画にはSNS的機能はまったくなく、ユーザー同士のつながりは5ちゃんねる(当時はまだ2チャンネル)の1スレッドが唯一のコミュニケーションの場でした。
 そこから匿名の不便さを感じた一部の方(あるいはもっと濃いつながりを求めた人)は、IRCチャットなどを使い、自身の作業を行いながら情報共有や冗談を言い合っていました。
 その時点でもmixiというSNSは存在しましたし、一部のユーザーはmixiでもコミュニティ運用をしていましたが、そう多くの人は集まりませんでした。
 その少し後、ボーカロイド専用のコミュニティ「にゃっぽん」が出来上がり、ここぞとばかりにその当時のMMDユーザーは集いました。
 シャイというか目立ちたくないというか、恐らく様々な事情があったであろう樋口氏をやや表立たせる事ができたのは、このコミュニティの存在が大きいのです。
 当初、樋口氏の予定にも無かった機能がMMDに付与されていったのもこの時期です。フリーソフト開発に不足しがちなユーザーのフィードバックをそこで得る事ができたのです。

 やがて「にゃっぽん」も運営上の理由で、止む無く閉鎖するに至りました。
 その頃にはニコニコ動画にも多少のSNS的サービスはありましたが、完全に移行したわけでもなく、新たに皆でSNSサービスを作るまでにも至らず……今思えば、それがMMDの幼少期の終わりを示していたのでしょう。
 現時点で古くからMMD関連のネットサービスを提供しているのは、Bowlrollさんだけになりました。

 その後も色々ありましたし、様々な新たな問題も出てきたりしていますけれど、MMDで動画を作る勢というのは今だ健在です。
 私自身もめっきり裏方周りになってしまっていますが、MMD自体は現在も触り続け、またそれを使って活動を続けております。

「まさかこんな続くとは……」

 という想いと共に。

 とにかく、たったひとつのフリーソフトが大きなコミュニティ(少なくとも数万人以上の人の集まり)を形成し、なおかつ今もってそれを使って楽しんでいる方々が居るという事実は、驚愕以外の何でもありません。

■MMDの寿命

 MMDに寿命はあるのか?
 そう問われた時に、私はこう答えるでしょう。

「むしろ寿命以上に活き続けている」

 と。
 今ではBlenderも進化を遂げ、プロの世界でも活用され、なおかつアマチュアでも手が出せる(やや障壁はあるものの)ツールがあります。
 またUnityやUnreal Engineのような即座にレスポンスを得られる描写エンジンも出てきています。
 これらを使えば、より高品質・自由度の高いものが生み出せるでしょう。
 特にここ数年でのBlenderのバージョンアップやアセットの充実性は目を見張るものがあります。
 またAI技術の進化も伴い、各3DCGツールにも今後大きな影響を与える事でしょう。
 そういった、いわゆる『次世代』のものが伸びている現在、あえてMMDで作る意義というのはあるのだろうか?

 MMDを単一の3DCG動画制作ツールとした場合の寿命は、そういう意味では既に寿命を迎えていて当然です。

 では何故いまだ使い続けられているのでしょうか?

 その答えはユーザー一人ひとりによって異なるでしょう。
 単純に「愛だね」と答える方もいらっしゃれば、「使い慣れちゃったから」というシンプルな理由、「好きなモデルがあるから」という答えもあるでしょう。
 そういう各々の『想い』というのを醸造したのがMMDというツールです。
 残念ながらBlenderやUnityなどでこういう『想い』の部分が醸造できるかと言われると難しいです。
 おそらくできないでしょう。
 それは、時期、環境、集まった人々による『たまたまそうなった結果』なのですから。
 ワインやウイスキーと同じです。

 MMD発表当初から使い続けているいわゆる古参な方々には耳の痛い言葉かもしれませんが、あの楽しかった幼少期は終わりました。また、それをもう一度というのは儚いものであり、二度と手にする事は叶わないでしょう。

 ですが、葡萄や麦が死んでしまっても酒というものに姿を変えて残るように、MMDも何らかの形で、その時代に生み出されていったものの一部が継承されていくでしょう。
 これは願いや想いではなく、単純な事実です。
 そう、

『創るよう楽しさを、こんな私でも実現できた』

 という美酒になり。 

■Re:3DCGではじめる創作生活

 これからどうなるかは分かりません。ですが少なからずの人が、パソコンとネットさえあれば暗雲立ち込める現世より一時避難し、自身の世界を創造する楽しさを味わえる事ができる世の中にはなりました。
 まさに文明と人類の進化の一部でしょう。
 わずかな見返りしか得られない税金をはじめとした犠牲を払う中、万人が得られるメリットではないものの、手軽に3DCGで遊べるという時代になったのは素直に喜ばしい、これまでの長年のJC生活の意味もあったと考えるものです。

 制約や制限が多いMMDだからこそ、敢えて使い続ける。
 そういう厨二病的な考えを持ちつつも、少なくとも私は(OSが完全に対応できなくならない限り)使い続けるのではないでしょうか。

 さて、皆さんはどのような『MMD』をしていくのでしょうか?

どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。 MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。