「SMQ-J(日本版場面緘黙質問票)」をかんもくネットHPに掲載しました

かんもくネットのHPの「資料・チェックリスト」のページに「SMQ-J(日本版場面緘黙質問票)」を掲載しました。https://www.kanmoku.org/tool
Selective Mutism Questionnaire(SMQ)は、2週間以内の子どもの発話行動の頻度を調べる尺度で、親が記入する質問票です。場面緘黙の研究では、世界で最もよく使用されてます。Bergman et al.(2008)が作成した17項目を、2011年にかんもくネットが翻訳し、長い間SMQ-R16項目として使用してきましたが、下記の研究により日本版としてその有用性が検証されました。
不安症研究 14(1): 47-55 (2022) (jst.go.jp)

場面緘黙の主な症状は,学校場面や家庭以外の社会的状況で話すことができないことです。発話に関してアセスメントを行うには、SMQを使用することが最低限必要と思います。子どもの発話状態の変化や治療介入の効果を測るためにも欠かせません。

ただし、SMQの臨床現場での感度は十分ではないと感じます。
場面緘黙への治療介入は、今話せている場面(人・場所・行動)を広げるために、スモールステップで少しずつ少しずつ小さなチャレンジを行っていきます。小さな成功はその子の大きな勇気の現れ。でも、残念ながら、小さな発話の成功はSMQに数値としてなかなか反映されないことが多いのです。そのため、SMQを記入するときは、各項目について子どもが話せた行動を具体的にメモすることをお勧めします。

また、SMQは発話行動のみを測る尺度であることに、注意が必要です。発話のチャレンジを計画する前に、「学校での行動表出チェックリスト」をつけるなどして、子どもの支援ニーズを把握しましょう。例えば、給食やトイレに関して配慮は必要ない状態でしょうか。作文や算数、体育や図工への支援はどうでしょうか。場面緘黙の症状をもつ子どもの状態は多様で、その背景も多様です。発話ばかりに注目せず、発話以外の苦手領域に対して理解と支援をまず行うことが大切です。

かんもくネット 角田圭子(臨床心理士・公認心理師)