2022年SM H.E.L.P.10月サミット(その1)ルーシーちゃん7才の取り組み

2022年10月のSM H.E.L.P.では、場面緘黙の体験者・保護者らが自らの体験や支援状況、取り組みなどを語ってくれました。絵本や活動本を出版したり、支援に関わったりしている人も多く、現在子どもの場面緘黙と戦っている保護者にはとても励みになると思いました。
 
講演者
アメリカ在住のヴェロニカ(Veronica DeStefano)さん。3人の子どもの母親で次女のルーシーちゃんが場面緘黙。自らの体験を生かして支援本『ルーシー・レモンと勇気のシャボン玉(Lucy Lemon’s Brave Bubbles )』シリーズを3冊出版している。
 
ルーシーの場面緘黙
3歳で入園し、1年間全く話すことができなかった。園に場面緘黙の知識がなく、保護者もそのうちに慣れるだろうと考えていた。家では姉弟の中で一番賑かで、ものおじしない性格。一方で頑固な面もある。
 
場面緘黙の診断・治療と取り組み
4歳検診の際に、ただ内気なだけではないと助言され、専門家などのリストを入手。デンバーの不安障害センターにて正式な診断がおりた。
そこで得た情報から、まず場面緘黙キッズキャンプに親子で参加。そこで出会った専門家の協力を得て、園での支援体制を整えることができた。また、家庭でのスモールステップの取り組みにも着手し始めた。
 
現在の状況
順調に発話の進歩があり、現在はレストランで注文したり、クラスで発表したりすることもできるように。支援チームができたことで先生とクラスメイトの理解も得られ、友達もできた。ただ、7歳になった現在、新しい支援チーム・新校舎など環境が変わって、家でかんしゃくを起こしたり、登校しぶりが出たりと、新たな困難も出てきている。

<SM H.E.L.P. 主催者のケリーさんとのQ&Aから>

米国の場面緘黙キッズキャンプ
ルーシーの参加時は最年少だった。1日8時間のセッションで、色々なことにチャレンジした。例えば、犬と猫とどちらが好きか、他の子たちに質問してステッカーで答えてもらったり、1ドルショップで買い物をしたり。チャレンジ帳に沢山のステッカーをもらえて、それが自信に繋がった。今でも時々「こんなに頑張れたんだね」と話すことがある。
保護者の会での質疑応答にも専門家が長時間応えてくれ、とても有意義だった。また、キャンプで出会った専門家に依頼して、園で場面緘黙の講習をしてもらい、支援体制を整える助けになった。
 
家庭での取り組み
キャンプで短時間の間に学んだエクスポージャー法を、帰宅してから日常生活で実行した。それが大きなターニング・ポイントになった。 
例えば、レストランでは事前に親がウエイトレスに「注文を取りに来る時、娘に水がいいか、レモネードがいいかきいてくれますか」と依頼する。娘が何ができそうかいつも考え、計画を立てた。娘の前で「この子に名前をきいてもらえますか」とお願いするのは恥ずかしいけれど、親が勇気を出している姿を子どもに見せることも大切だと考えている。
 
IEPと総合的な支援体制の重要性
園や学校に協力してもらうことは本当に重要。関わる人全員に子どもの支援ニーズを知ってもらい、学校全体で対処してもらえる。特に、IEP(個別教育支援プラン)を作成してもらえたことは大きかった。
 
みく感想
ルーシーちゃんの場合は4歳から治療を始め、7歳になった現在はクラスでの発表やレストランでの注文もできるようになっているとのこと。やはりスモールステップで取り組みを地道に積み重ねることが鍵なんですね。
 
米国には緘黙児のための短期集中型キャンプが複数ありますが、かなり高額なよう。スモールステップはそれぞれの子に合わせて組む必要があるので、子どものことを一番良く知っている保護者が主導で進めるのがベストかなと思います。そこに専門家や学校関係者を加えた支援チームができれば理想的ですが、そうはうまくいかないのが世の常。でも、諦めないで理解者・協力者を増やしていくことが大切かと思います。勇気を出して一歩を踏み出してください。
かんもくネット事務局 みく(ロンドン在住)