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(ワカサギ釣りは)Don't Feel. Look.
転勤前の職場の先輩たちが、仙台に遊びに来てくれることになった。
仙台に来客があった時に迷うのは、どこに皆を連れて行くかだ。
松島は全員行ったことがあるし、八木山ベニーランドという古式ゆかしい遊園地は前回行ってしまっていた。ニッカウヰスキーの蒸留所も僕自身がお酒をそこまで好きじゃないので微妙だし……
そこで今回は場所を福島にかえてワカサギ釣りに行くことにした。
調べてみると、現代のワカサギ釣りはストーブ付きの小屋が建てられていてその中でぬくぬくと快適に釣りに興ずることができるようだ。
事前に《初心者コース 午後の部》を予約し、ワカサギ釣りの聖地『桧原湖』に行ってきた。
猪苗代湖周辺でお昼ご飯を食べて、13時ごろに受付に到着。
今回は『森のうた』というところにお世話になった。
その日は結構暖かく湖面が水っぽいとのことで長靴を借りて釣りポイントへ向かった。
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移動がスノーモービルだということは事前にHPを見て知っていたものの、実際目の前にするとかなりテンションが上がる。
小型ボートみたいなソリに乗せられ、スノーモービルで牽引してもらう。
特段爆速というわけではなかったけれど、結構上下左右に揺れるのでスリルがあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1676293021150-Xi0leOngn4.jpg?width=1200)
5分ほどで氷結した湖面に出る。
だだっ広い氷の平原に、オレンジ色のテントがぽつぽつと建っている。
もちろん行ったことはないのだけれど、南極調査隊っぽい風景だなと思った。
![](https://assets.st-note.com/img/1676293334781-oHO7J0KRMR.jpg?width=1200)
この日の我々の拠点は奥に見える切妻屋根の小屋。
部屋の真ん中に6つくらい穴が空いていて、それを挟むように両側が座敷になっていた。
スノーモービルでここまで連れてきてくれたインストラクターのおじさんが、釣り方を教えてくれる。
餌はちっちゃいハチノコみたいな幼虫なのだけれど、ワカサギは本来それを食べるわけではなく、人間が竿で上下に揺らしたりしてプランクトンっぽく見せ、食いついたところで針を引っ掛けて釣り上げるというのが原理らしい。
朝一番だと食いつきが良いのだが、午後だと朝に比べると魚たちのリアクションが芳しくないとのこと。(午前中に学んで一晩経っては全て忘れてを繰り返しているのだろうか…)
一通りレクチャーを受けて、いざ実践。
まずは八王子から来てくれた先輩に引きが!
電動リールでツーっと巻き上げると、そこにはワカサギがいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1676294383274-xOlLkviCX9.jpg?width=1200)
本当に釣れるんだ!という感動と、ワカサギ自体の透明感に驚いた。
写真ではわかりにくいのだけれど、標本かというくらいに透き通っていて体内が見えるのだ。
後からインストラクターのおじさんに聞いてみると、水深の深いところで育った魚は透明で、浅いところで育ったものは日光を浴びて黒っぽくなるらしい。魚にもメラニン色素的なものがあるってことなのかな。
程なくして他の先輩方にもヒットがあった。
その後も入れ食いとまでは言えないけれどコンスタントに引きがある。
僕以外は。
釣れない。チャンスがあったのかすらわからない。
ワカサギが餌をついばむ感覚や、巻き上げてる最中に『かかってる』感じは体験した人にしかわからない。
早くその感覚を味わいたい。オトナになりたい…。
結果、2時間半やったけれど1匹も釣れなかった。
先輩たちはみんな釣れているのに…どうして…
帰り時間が近づき、片付けをしながら会話していると僕は根本的に間違っていたことに気づいた。
僕は、指先に神経を研ぎすまし、見えない水中の針の先の餌をワカサギがついばむ振動が伝わるのを待っていた。
だって、どうぶつの森の釣りってそうだから。
何なら目を瞑ってJoy-Conの振動だけに反応した方がミス少ないし。
そうやってシーラカンスもイトウも博物館に寄贈した。
実際は違った。
竿の先の揺れを目で見て魚が食いついたかを判断する必要があったらしい。
『手に振動を感じるほどは揺れないよ、竿の先端見てないと。』と先輩たちに言われた。
記憶を辿れば確かにインストラクターのおじさんは『先端を見て』と言っていた。実際、僕も竿の先端を見てはいた。見てはいたけど、指先で振動を感じることに神経を集中させていたために、見えてはいなかった。
人間の思い込みの恐ろしさよ。
ワカサギ釣りは、Don't Feel. Look.
これを肝に銘じてリベンジしたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1676295983011-sXy28pRulF.jpg?width=1200)
僕は一匹も釣れなかったのだけれど、ワカサギ釣り自体はめちゃくちゃ楽しかった。
手元の釣竿だけに集中する感じは忙しない日常にはあまりないない感覚で、当たりが来るまで待つ静寂が、餌をつけようとして指先に針が刺さってしまった時の感触が、リールの先の錘がサーっとが水中に降りて行くのを見守る時間が、とても心地よかった。
毎シーズン1回は行きたいなと思った。
![](https://assets.st-note.com/img/1676296766855-EhHitocnmF.jpg?width=1200)
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