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「いきなり引っ越し」はNG!地方移住を考えているなら知っておきたい賢い始め方

 慌ただしい都会を離れて地方への移住を考える人、最近多いですよね。
 広報Nも通勤電車のサバイバル感が苦手で(得意な人はそういないと思いますが)ストレスを溜め、週末も週末でお出かけスポットには人があふれて全然心休まらず。
 生活条件さえ整えば郊外でのんびり…。などと妄想したことは一度や二度ではありません。

 しかし、「資産運用」と郊外での「農業」の両輪でゆったり暮らす「農FIRE」を実践・提唱する水上篤さんは、「300万円の資金があれば、空き家を買って農業を始めることは十分可能だが、いきなり移住するのはリスキー。まずは地方に片足だけ突っ込んでみるほうがいい」と語ります。

 今回の記事では、そんな水上さんの著書『資金300万円で農FIRE』から抜粋・再編集し、地方移住を考えている人がとるべき「段階」をご紹介。
 失敗しないための、賢い地方移住の始め方がわかります。

◆ いきなり地方に引っ越すのはリスキー

 若いうちに資産を作ってリタイアし、資産運用をしながら悠々自適に暮らすFIREに憧れる人は多いかもしれません。
 ですが、私は、資産運用だけで暮らす生き方ではなく、「農業」を起点にして衣食住エネルギーを自分で生み出し、お金では買うことのできない土地の恵み、人々とのつながりなどたくさんの豊かさを享受できる「農FIRE」を実践し、みなさんに広めています。

 日本の地方や農業の現状について話すとき、ここまで空き家が増えているとか、農作物はどんどん安くなるが安全面は不安であるとか、一方で日本の購買力が下がっているので輸入品では手が出ないものが出てくるだろうとか、オフグリッドについて真剣に考える必要があるとか、少し暗めの話しが話題に上ることもあります。
 ただ取りようによってはこれらはすべてチャンスでもあるのです。その気になれば、コストをかけずに安心と安全を手に入れて、世の中の変動をあまり気にせずに生きていくことが可能という話なのですから。

 まずやる気に水を差してしまったら申し訳ないのですが、やはり何ごとも慎重に始めることが肝心です。もしあなたに今300万円の貯金があったとすると、それで空き家を買って機械や設備を準備し、その空き家に引っ越して農業を始めることは十分可能です。実際に300万円をどう振り分けるかはのちほど説明します。
 しかし、いきなりこの土地と決めて移り住むのは大変危険なことだと言わざるを得ません。なぜならその土地が本当にあなたに合っているのかどうかわからないからです。「地方はどこも同じ」などと思ったら大間違いです。いくつかの土地を経験してから見極めることが肝心なのです。

「秘密のケンミンSHOW」という番組を見たことがあるでしょうか。関東と関西で県民性が大きく違うのは当然として、同じ関東でも埼玉県と神奈川県ではかなり県民性が違うことがわかります。関西でも隣同士の府県でぜんぜん違います。それどころか隣の町に行くだけでも、住む人の感性や考え方がけっこう違うということもよくあるのです。

◆まずは地方に片足だけ突っ込め

 私は、ニューヨークとフィリピンのネグロス島にしばらく住んでいました。どちらにいたときもアパートをいくつか引っ越して、自分に合う場所を探しました。
 すぐにはそこがいいかどうかはわかりません。まずは平日は今住んでいるところにいて、週末に2日ぐらい地方に通ってみることです。1年ほど通って、たまにはアパートを借りたりしながら、情報収集をしてみてください。アルバイトなどしながら人間関係を作ることも大切です。余裕があれば、一つの地方だけでなく、いくつかの地方を回ってみるといいでしょう。

 地方の人は、新しいものが好きです。また本当は新しい人も好きなのです。物ともとも新たに出会うことが少ないからです。最初は排他的と感じるかもしれませんが、それは仕方がありません。土地を持っており、畑やお墓を管理する必要があったり等々と、地方ではそう簡単に引っ越しできない事情がたくさんあるからです。だから、素性のわからない人が近所に住むことを極力排除したいのです。何か問題を起こされてからでは遅いのです。

 ですが、結局は営業と同じで、接触回数で変わってきます。お菓子などを持って挨拶に行けば徐々に受け入れてくれます。馬鹿にして言うわけではありませんが、全国的に共通する傾向として、地方の人は甘い物と無料のものが大好きなのです(シャトレーゼの商圏を調べれば、甘い物が都会よりも地方で売れることがよくわかります)。そうやっていくうちに、様々なことを教えてくれる人も出てきますし、いろいろとものをもらえるチャンスもあります。
 そのうちに価値観、すなわち何に価値があると考えているか、そのあたりの違いがわかってきます。たとえば都会の人は富士山が見えると喜びますが、山梨に住んでいる人はそれほどの価値を感じていません。あらゆる「あたりまえのこと」と同じで、仮に富士山がなくなったとしたら山梨県民と静岡県民が一番大騒ぎすると思いますが、普段は都会の人ほど富士山にありがたみを感じていません。
 古民家なども同じで、地方の人はただの古い家と思っているだけで、都会の人が何でそんなものをありがたがるのかよくわかりません。「使ってないから、買ってくれるなら大歓迎だよ」と安い値段で譲ってくれます。

 一方で先ほど書きましたが、地方の人は甘い物と無料のもの、そして新しいものが好きということも彼らと付き合ううちに見えてきます。大事なのはお互いに相手の価値観を尊重することです。

 まとめるとポイントは二つです。一つは、住みたいと思う場所に実際に通ってみて、事前に価値観の違いを見極めること。どうしても合わなければ別の場所を探すことです。もう一つは、拠点を決める前に住民と仲良くなっておくことです。農FIREの準備として、この二つは決定的に重要です。焦らず慌てずじっくり取り組むことが農FIRE成功の秘訣です。

◆書籍『資金300万円で農FIRE』

 いかがでしたか?
 地方移住に対するメリット・デメリットなど、全体的な解像度が上がったのではないでしょうか。

 インターネット上ではしばしば地方と都会の価値観の違いが話題になりますが、移住において大事なのは、その違いの理由を考えて双方歩み寄っていくこと、そして、歩み寄れるような関係を築いていくことなのかもしれません。

 書籍『資金300万円で農FIRE』では、こうした移住の話のみならず、移住したあと、「農FIRE」で有意義に暮らしていく具体的な方法・ノウハウを解説しています。
 地方移住に加え、農FIREにも興味が湧いた方は、ぜひ書籍も一緒に手にとってみてください。


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