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「ユーコンを流れる」2019 ユーコン川344km、8日間一人旅①

1)「ホワイトホース」

 2019年8月下旬、まだ真夏の日本を出発して、川下りのためカナダに向った。その目的は、ユーコンYukon川上流部の344kmを、単独で8日間かけて下るという旅である。

2022年の今から考えると、よくこの時に行ったものだと思う。翌2020年春から今年にかけて、新型コロナウィルス感染症COVID-19の流行で海外旅行どころではなくなったからだ。また、ユーコン川があるカナダでは今年は猛烈な熱波に襲われており、山火事も頻繁に起こっている。川下りを楽しむという雰囲気ではない。また当時70歳という私の年齢を考えると、このレベルのアクティヴィティとしては、ギリギリのタイミングであったかも知れない。

 氷河を源流とするユーコン川は、途中いくつかの支流と合流しながら、カナダ、アラスカを西に流れて、ベーリング海に注ぐ北米大陸屈指の大河である。ここは、北緯60°に近く(北極圏が66°33′)、川は旅のベースとなったホワイトホースWhitehorseの町中を貫流している。

 また、この川はカヌーイストあこがれの聖地でもある。ここでは、カナディアンタイプのカヌーが主流であるが、私が使うのはソロ(1人艇)カヤックで、ユーコン川の畔にある「カヌーピープルKanoe People」という店でレンタルした。ここには日本人担当者S氏がいて、相談などの対応に乗ってくれた。簡単にカヌーとカヤックの違いを説明する。カヌーはオープンデッキで、前後に二人が乗り、後が運転手役で操作する。それに対してカヤックはイヌイットの人たちの乗り物で、全体が覆いで覆われ、人間や荷物を収める場所に穴が空いている。また、櫂はパドルの両端を使って漕ぐ。安定性は前者の方が優れ、荷物も多く載せることができる。では、なぜカヤックなのか?理由は簡単。格好がいいからである。

 私が日本から携えた装備は、1人用テント、食料とコンロや鍋などの調理用具類、衣類(雨具・着替えを含む)、シュラフ、医薬品、その他であった。川下りの途中に店の類はなく、携帯の電波は届かないので、計画を変更する仕組みはない。直前に、長崎県対馬でシーカヤックに乗って本番への備えとした。

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