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新規配信実践用「通信/環境編」(6/2時点。随時更新)

はじめてこちらの記事を見る人もいると思うので自己紹介を簡単に。

倉垣吉宏といいます。
舞台芸術創造機関SAIという日本の劇団を主宰したり、舞台演出をしたり、脚本を書いたり、アトリエサードプレイズという芸術・表現者のための小さなアトリエを運営したりしています。演劇に関わる人がなるべく幸せに活動出来るようにしていくための、色んなシステムをつくったりイベントをつくったりもしています。

この2月下旬から徐々に忍び寄っていたコロナの影響を受けて、4月以降の劇団の活動、アトリエでの催しを、中止・延期して、観客を招き入れない状態で出来ることを4月頭より開始しました。これにはとてもシンプルな理由が2つあって

①単純に収入がなくなるから代替となる新規事業の開発
②コロナ影響が2021年春まで続くと見越し、新たな創作・表現の実験。

というものです。

コロナ以降の演劇関係者が配信をたくさんはじめる流れに関しては賛否あります。
ひとつの方向に動いてないというのが実際で、多様的であるからそりゃそうなんですが、演劇が三密を要求する芸術形態であることが、大きな理由になっています。これについてはまた今度書きます(書かないかもしれませんが。)

この記事は、生き残りをかけて色んなチャレンジをしている中で得たノウハウをみんなにお裾分けするためのものです。
どういう理由・経緯であろうと、配信サービスを通じて作品の発表・お客様との交流を行おうとしている個人・団体にとっての一助になればと思い書いています。それが結果的に自分たちや文化そのものを救うことになると、大袈裟ですが考えています。
本日は「通信/環境編」です。

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前回更新から随分時間が空いてしまいました。
というのもその間に、実に様々な変更・更新があって、前二回の記事も改めようと思ったものの、そこからまた遠いところまで来てしまったという状況になってしまったからです。
具体的にどうなったかというと
「簡易的な配信スタジオ化してしまった」
この一言につきます。
ビデオスイッチャーの導入。


それに伴いOBS(配信用の便利なソフト。後述します。)の専任オペの登用。カメラや音響機材のセッティング変化。


と、さらっと書くだけでこれだけ変化があり、ライヴ配信特化型の配信スタジオとして変化が進んだのです。
スイッチャーに関しては複数のカメラを自由に切り替える事が出来る機材のことです。アトリエで使っているものは2カメラまで対応。
現在は4カメ使えるBMGのATEM Miniが主流なイメージです。どこも在庫がなく品切れていますし、キャプチャーボード機能を兼ねているため、コスト面でも頭ひとつ抜けている印象です。

V02HDとATEM Miniを組み合わせたら面白そうやな・・・
というのが現在の野望ではあります。なお、V02HDはそのまま繋いでもPC側では認識されません。ので、キャプチャーボードを使います。現在は以下のものを使用しています。

2か月やってきて感じるのは
配信において何を目的にしているのか決めておくこと。
そしてある程度の環境構築があれば誰でも安定したクオリティの配信が出来ること。
「とりあえずやってみよう」
「気になるからやってみたい」
の、一歩先のことをやりたい時に、目的と環境が揃っているととてもやりやすくなっていきます。この記事はそんな人に向けて書いています。

■動画の種類■

動画には2つの種類があります。
フロー型(YouTubeライブやツイキャスなど生配信)
ストック型(YouTuber的な定期的な動画配信)
(正確にはメディアやSNSの特性として用いられる表現ですが、動画にも当てはまることなのでそのまま使います。)

演劇関連はフロー型が多いです。
理由は単純に「手軽で、すぐ出来るから」であり、俳優が主体で配信を行っているからと言えます。スマートフォンひとつで賄えるためすぐに出来るのです。
ということは同じ考えの人、同じクオリティの人がいっぱいいるという事です。
逆に5月中旬以降からはじめた人にはストック型の動画が増えてきた印象です。これからも「ストック型」「番組形式」のものが増えていくでしょう。 ちょっと動画編集を勉強してストック型の動画配信+ライブ配信の組み合わせをしてみるというのも一つの手段です。

■生配信別通信環境の問題■

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「有線」+「光回線」が最強。

生配信をするなら「有線」+「光回線」が最強です。
Youtube  LIVEやニコ生、ツイキャス等なんでも同じです。まずこの組み合わせが配信の安定感・安心感に繋がります。

Wi-Fiの場合。

Wi-Fi環境でも出来れば「有線」接続して配信することをオススメします。自宅のWi-FiルーターからLANケーブルを差して配信用PCと接続します。スマホやタブレットでもLANケーブルを接続出来るアダプタがあります。これは試していなので分かりませんが、理論上通信は安定するはずです。

特にゲーム配信や、「Nintendo Switch」の「クラウドゲーム」を始めとした「ゲームストリーミング」系サービス等の場合、有線は必須と思って下さい。またWi-Fi環境の場合も、ポケットWi-Fiのように一日の通信料制限があるものは要注意です。
※ポケットWi-Fiの場合も下記のようなクレードルで優先化が可能となります。契約会社によって対応するもが違うのでそれぞれの公式サイトで型番等要確認。

携帯通信(4G通信)での配信は「出来るけれどやらない。」
これ一択と言っても過言ではありません。短時間のお喋り配信なら問題ないですが、それ以上を望まない方が事故がなくて済むと思います。



ADSLは???
提供が2024年3月末で終了予定です。各社によって終了時期が違うため、早めに切り替えてしまいましょう。

現在、兎亭&アトリエサードプレイズの配信環境は、光回線+有線となっており、非常に安定しています。一回の配信が二時間ということもあり、結構重要なポイントです。(果たして関係があるのかどうか明確には分かりませんが、Youtubeプレミアに加入してから、60分を超える長時間配信でも切れることがなくなりました。)


ここから先はYoutube LIVEをメインに約二か月、生配信を続けてきた感想や経験についてを書きます。

■SAIがYouTubeを使う理由■
・だれでもアクセスしやすいこと。
・動画のストック制限がないこと。
・生配信の制限時間がないこと


この3つです。
1つ目はそのまま。
2つ目は、つくった動画の時間・本数等に制約がないことはとても大きいことです。
3つ目は、劇団として、生の舞台と同じ様な臨場感を作り出すのにYouTube LIVE+OBSでの配信が一番相性がいいなと感じたからです。

収益化はされたらラッキー程度のものだし無いよりは全然あって嬉しいものです。
実際2010年頃に、収益化チャンネルのモニターとして昔のSAIのチャンネルは収益化されていた時期がありました。今とは条件も何もかも違う時代です。しかし、どういう風に課金されるのか実験しまくっていたらそれが規約に引っかかり権利を剥奪されました。抗議しましたがGoogle先生は厳しいので却下されました。登録者数のスパムによる増加でも、似たような裁定になるそうです。気を付けましょう。
 (※旧チャンネルはこちらです→https://www.youtube.com/user/SAI20XX)


○なぜYouTubeにこだわるのか
「YouTubeはお金が増えるツール」ではありません。
YouTubeで収益化出来るようになるのは2020年6/2現在では
・チャンネル登録者数1000人
・年間再生時間4000時間

です。このラインを超えてはじめて収益化(再生されると広告料が発生し、チャンネル主にお金が落ちる)します。
スーパーチャットという投げ銭もここではじめて申請し使えるようになります。
収益化されたYouTubeチャンネルは、1再生で0.3〜0.5円程度だそうです。ですので、1万回再生されて3000〜5000円になるかどうかという話です。多くのYouTuberは10万回以上の再生動画でようやくうまくいったと感じるレベルだそうです。
動画一本の撮影時間と編集時間を考えると1万回再生だと時給1000円にも満たないです。
つまりYouTuberはそもそも動画配信したい意欲やモチベーションがそれなりに高くないとまず向かないものです。好きだから出来るのは何でも一緒ですね。

OBSを制する者はライヴ配信を制する

実際これにつきます。
ZOOMもYoutubeもツイキャスでも・・・あらゆるものを支配下に置き、フリーソフトはとは思えない多機能っぷりを魅せ付けてくれるのがOBSです。何が出来るのか?と聞かれたらなんでもできる。
実際何でも出来るから難しいところもあります。
「OBSを使わないと配信が出来ないのか?」というとそんなことはありません。ただ、使わない理由がないくらい便利なのです。配信設定、音、画質などもソフト側で設定出来るので、より安定感のあるライヴ配信を行うことが出来ます。試しに一度、ダウンロードしてみて色々といじってみて欲しいものです。

尚、現在のアトリエの配信ではこちらの記事を参考に設定しています。


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■ウィズコロナ時代の演劇と配信の間柄■

最後になりますが、配信分野はこれまで沢山の人が多彩なジャンルで実践してきたストックがあるため、後追いでもとても恵まれていると言えます。
「演劇」の視点でいくと、生配信には「音響」「撮影」「配信」というスタッフワークが発生していると考えられます。これは既存のスタッフスキルで賄いきれない部分でもあります。
OBSを使った効果は、視覚効果であり「照明」の分野とも言えます。
「撮影」に関してが一番遠いと思うので、ここが今後の課題の一つかなと感じています。「配信」に関しては、このページの最初の方に記載した設定を守ればおそらく平気でしょう。「音響」はPA的な技術になりますので、やはりここも人によっては別で学ぶ必要があるはずです。

手軽に出来るのは事実ですが、実は専門性の異なる技術が必要になります。
今後5G環境になり、動画は更に身近なものになっていくと言われています。今から少しずつでもいいので、自己発信の手段+新たなテクニカルについての理解を進めていき、アフターコロナ環境で訪れるであろう、上演+生配信に備えていきたいところ。同時にこの記事が、これからはじめる誰かの役に立てば幸いです。

【未曾有の危機を前に戦うSAIと倉垣吉宏を応援してくれる方はこちらもよろしくお願いいたします!!】


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