見出し画像

デジタル社会におけるブランド戦略 ― リキッド消費に基づく提案 ―

こちらを読んだのでサマリを。選んだ理由は、副題にもなっている「リキッド消費」を調べていてたどり着いたから。

リキッド社会におけるブランド消費

- リキッド消費とは…>人々がここのブランドに対して一時的にしか価値を見出さなくなり、その時時に応じて最適なブランドと付き合うようになり、所有にこだわらなくなること。
- 経験に価値を見出す、ブランドの価値が文脈特定的になるので寿命も短くなる(文脈が変わると価値がなくなる)。
- ゆるくてかんたんに解消できる関係が好まれるようになる、アップグレード可能な関係が好まれるようになる。=ロイヤリティとコミットメントの希薄化。
- 目的駆動的、実利的、道具的・手段的で、弱いつながりに基づくコミュニティが主流になる。

文脈への適合と消費の手軽さがもたらす心地よさ

- リキッド消費社会でのマーケターの課題は、消費者の流動的なニーズに適切に対応すること。そのためには、文脈に応じて製品を変えたり組み合わせて価値を提供すること、また選択や購買・利用に伴う消費者の労力を減らすことが重要。
- つまい、文脈への適合(Contextual fit)と、ブランド消費の手軽さ(easy consumption)がポイント。

2つの戦略

- リキッド消費を前提にしたマーケティングに置いて重要な戦略のポイントは、「裾野を広げる」ことと「生活の中に溶け込む」こと。

裾野を広げる

- リキッド消費ではブランドの乗り換え傾向が高くなることを好定期的に捉え、その上でより多くの消費者を獲得するためにはどうしたらいいのか?
- ダブル・ジョパディ:市場シェアの高いブランドは市場浸透率も購買頻度も高く、市場シェアの低いブランドは顧客の少なさとロイヤリティの弱さという二重苦(ダブル・ジョパディ)を背負っている。リキッド消費と相性がいいので、ダブル・ジョパディを前提とした戦術を考える。


- ダブル・ジョパディのメカニズム:市場には類似していて、かつ消費者にとって同等のメリットを持っている複数のブランドが存在しているが、マーケターが何をしているか・していたかによって知名度は大きく異なる。大半の消費者は知名度が高いブランドしか知らないので、類似していてもそちらを選ぶ。
- 一方で、市場シェアの高いブランド・低いブランドを比べると、購買頻度はあまり違わない。したがって、ダブル・ジョパディでは、市場シェアに大きな影響を及ぼすのは市場浸透率で、ブランドを育てるにはユーザーをとにかく多く獲得しないといけないという結論。

- 戦術1:選択・購買・利用を容易にする。その場に応じた価値をかんたんに選び、入手し、使えるようにすること。より多くの消費者をユーザーにするには、カテゴリに興味がない・単位機関あたりのしよ量が少ないライトユーザーにも目を向ける必要がある。
また、ブランドの意味のわかりやすさ(ブランドの意味の処理流暢性)利用にかかる手続きの容易さ(スマホ一つ、アプリ一つでできる。アプリの利用が簡単)、安心感(自分の選択に間違いがないことを簡単に証明ができる仕組み、誰かに褒めてもらえる仕組み。Amazon's Choiceなど。)が重要。

- 戦術2:消費者が多様性を楽しめるようにする。その時時の場面や状況に合わせて最適なブランドを消費したいという、バラエティを求める消費者の欲求に答えるもの=移り気な消費者を満足させる。
- 特定のブランドを使用し続けながら、消費者が飽きないように新製品を出したりリニューアルをしたり、多様性を提供する。もしくは、ブランドに留めさせることを諦めて、ブランド・ポートフォリオを充実させて、自社ブランドを回遊してもらえるようにする。

- 戦術3:非能動的な選択を促す。コカ・コーラでもジュースでもどちらでもいい、というときに選んでもらえる確率を高める。リキッド消費では、現実的な効用や機能性が重視され、象徴的な価値による差別化が難しくなる。ブランドのコモディティ化ガス済、ブランドに違いがなくなれば、「とりあえず買ってみる」が多くなる。
- たまたま目についたから買う、という偶発的な選択の鍵は、ブランド認知とセイリエンス(顕現性)を高めること。ブランド認知の深さと幅を広げ、セイリエンスを高く維持しつつ、入手容易性を高める。

生活の中に溶け込む

- 消費者がその時時に求めるものを察して、ブランド側が自ら柔軟に対応をし、生活の中でできるだけ多くの接点を設ける。⇒消費者の生活に馴染み、一体となる。「生活の中に溶け込む」戦略。

- Amazon,Apple:必要なときに必要なものを届けてくれるもの、存在することが当たり前。
- 生活に溶け込んだブランドの強みは、離反することを忘れる心地よさ。

- リレーションシップ・マーケティング:この相手であれば間違いのない取引が期待される という認識。持続的かつ安定的な関係を顧客の間に構築すること。基本的な発想は、製品やサービスが変わっても、顧客が取引を継続しやすくすること。
- ブランド・マーケティングも、「この記号がついていれば結果が期待できる」「このブランドなら価値がある」と認識されることで、リレーションシップ・マーケティングと似ている。
- 「期待と可能性のマーケティング」
- 「生活の中に溶け込む」戦略の本質は、関係性を強めることによって、顧客に満足が提供されること。

消費者ーオブジェクト集合体

- IoT化によって実現するスマートオブジェクト:人間中心ではなく、人間とモノを同類として考える。非人間中心的フレームワーク。ブランドが消費者ーオブジェクト集合体の構成要素となることは、ブランドエクイティの構築・維持の可能性を高める。
- 不可欠性とロイヤルティ:消費者が製品を継続して利用することで、不可欠と感じるようになること、集合体の要素になることで単体で接するよりも継続的な取引を実現できる可能性がある。例:スマホの中の様々なアプリ。スマホの要素になることで、単体よりも高い使用頻度を獲得できる。
- 愛着が生じにくいリキッド消費環境でも、ブランドが集合体の要素になることで、心理的結びつきを形成できる可能性がある。リキッド消費で消費者の生活に溶け込もうとするブランドにとっては、消費者との関係をどう形成し、そのために役割をどう変化させるかが重要な問題。
- 消費者は企業の演出のナジャで、ある瞬間やある時間に、企業が提供してくれることに価値を見出す。

※むすび※

- すべての消費がリキッド消費に向かうわけではない。例えば物質主義的な消費者は、自己とブランドの結びつきを強めることで、社会的な不確実性と不安を管理しようとしている。

- つまり、リキッド消費は消費スタイルのシフトではなく拡張。
- オーソドックスなブランド戦略:ブランド認知の深さと幅を広げる・ブランド連想を構築する・ブランドリレーションシップを構築する は、 リキッド消費での戦略(裾野を広げる・溶け込む)に代替するものではなく、新たに加わるもの。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?