レアジョブ英会話を #マーケティングトレース
先日カフェトーク のマーケティングトレースをしましたが、オンライン英会話の業界トップはここだろ……と思い、今回はレアジョブを取り上げます。
自分自身もユーザーとして使ってみたことがあるし、ちょっとした機会に元経営陣の方と話したこともあります。オンライン英会話サービスとしてのシステムの完成度の高さと、お話した方のお人柄から「きちんとした会社だな」という印象を持っていました。
まず、ざくっと基本情報。
グループビジョンは「Chances for everyone,everywhere.」
サービスミッションは「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」
「Daily News Article」というレアジョブの教材がブログ状態で無料で公開されています。300語弱の英文ニュースが文字+音声で無料公開されていて、リスニングやシャドーイングの練習に便利です。この音声版の最後には必ずグループビジョンの「Chances for everyone,everywhere.」という一節が加えられていて、ビジョン浸透が測られているのを感じます。
2019年現在、サービス展開は以下のようになっています。
・「レアジョブ英会話」個人向けサービス
・「レアジョブ英会話」法人向けサービス
・教育機関向けサービス
・「レアジョブ」本気塾
・「レアジョブ英会話留学」法人向けサービス
・レアジョブ英語学習アプリ「RareJob Apps」
12年やっている会社なので色々なヒストリーがありますが、主要どころを取り上げてみると……
2007年、会社設立、オンライン英会話事業開始
2009年、法人向けサービス開始
2011年、KDDIと業務提携
2012年、早朝・深夜レッスン提供開始
2013年、ロゴを刷新
2014年、リクルートライフスタイルと提携、マザーズ上場
2015年、スクール向けサービス開始、三井物産と資本業務提携
2016年、増進会出版社と資本業務提携、「レアジョブ本気塾」、iOSアプリ提供開始
2017年、法人向け「レアジョブ英会話留学」提供開始
2019年、レアジョブEdTech Labを発足、増進会との合弁会社エンビジョンを設立、タイのオンライン英会話会社 Globish社に出資、韓国の教育企業フィリピン子会社 Chungdahm Philippinesに出資
サービスは広く展開していますが、基本的なサービスは「オンライン英会話」一本なので、プロダクト分析4Pは取り組みやすかったです。
まずは4P分析・・・
2005年くらいからオンライン英会話が普及し始め、ぶっちゃけ最近はどのオンライン英会話事業者も似たようなサービスを展開していますが、今回改めてレアジョブの見直してみて、Skype不要のシステムを構築したり、レッスンカリキュラムだけでなくスピーキングテストも提供していたり、より良いサービス提供・差別化への意思を感じました。
Product/製品
・朝6時~深夜1時まで、思い立ったら5分前まで予約OKなマンツーマン英会話レッスン
・日常英会話、ビジネス英会話、中学・高校生コースがあり、目的・レベルに応じたレッスンを受けられる
・講師はほぼ全員フィリピン大学卒、5000人以上在籍
・独自システム「レッスンルーム」で、Skype不要
・学習サイクルを回すためのサポート(カウンセリング、カリキュラム、スピーキングテスト)が充実
しかしレアジョブの強みは、戦略的な販売網・提携拡大にあると思います。
Promotion/販売
・2014年マザーズ上場、現在は三井物産グループとしてサービス提供し、教育機関や法人の需要を取り込む
・東京・関西・中部・九州の四拠点で営業体制を構築、日本全国をカバー
・業界勃興期に創業、個人向けサービスとして速やかにサービス体制を確立し、事業拡大。設立3年目で法人向けサービスに参入
日本は大きな国なので、幸いなことに「英語がなければ生きていけない」という人は多くありません。なので個人でお金を払う学習者の数には限りがあります。法人需要やスクール需要を取り込むのは、事業拡大に欠かせない要素でしょう。
(記事発行日が書いてないのですがおそらく設立2〜3年あたりのタイミングと思われる)設立者へのインタビューで、以下のような発言があります。
「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」というビジョンからすると、そういう「シリアスな英語学習者」だけを対象としていては到底たどり着けません。
「レアジョブ英会話が無ければ英語を学び始めなかった人たちに、英語を話す機会を提供すること」こそが、存在意義だと思います。
すでに設立者はレアジョブを離れていますが、この発言を踏まえてレアジョブの直近のプレスリリース↓をみると、納得感。
これ、なんと「全社員を対象に、英語応対力の研修を強化」なんです。JR東日本は、単体でも4.6万人を雇用する会社です。この規模で全社員対象に、ある程度のクオリティのマンツーマン英会話レッスンを提供できるのですから、レアジョブのサービス基盤がしっかりしていることの証明ですね。それを実現する販売網の強さにも感服です。
長くなるので詳細は割愛しますが、STP分析はこんなふうにしました。
普段は4PとSTP分析をして終えていますが、今回はオンライン英会話事業そのもののマクロ環境が気になったので、PEST分析もしてみました。
政治・社会面の後押しというのはやはり大きいし、レアジョブはその波にうまく乗れていると感じます。
Politics
・国策としてのインバウンド需要誘致
・同上 外国人労働者受け入れの拡大
・日本企業の海外進出・越境ビジネス活発化
Society
・学校だけでは不足する英会話の機会創出需要
・インバウンド観光客や外国人労働者増加により、今まで英語が必要ではなかった業界でも英語学習ニーズ
・グローバル化による英語学習の大衆化
・欧米だけでなくアジア各国でも英語がビジネス公用語化
最後に「もし自分がCMOだったら」フレームに沿ってまとめた内容です。
国内の法人・教育機関向けサービスは、政治的・社会的追い風もあり引き続き拡大していくに違いないでしょう。しかし、さらに先のことを考えると、日本以外での展開をどうするか・・・が焦点になるのだろうと思います。
If I was a CMO
外国展開を継続・加速。タイ・ベトナム・インドネシアを重点地域として、現地での提携先を探す。三井グループの基盤を活用?
2019年に「タイのオンライン英会話会社 Globish社に出資、韓国の教育企業フィリピン子会社 Chungdahm Philippinesに出資」のような動きが既にあるので、「If...」というより既に起こりつつある現実な気もしますが(^^;;
今回マーケティングトレースのために調べてみて、事前に抱いていた印象以上に「とてもきちんとした会社」=戦略を考え抜き、それを実行し、成功させている企業であるということがわかりました。
今後は日本における成功をどうやって海外に広げていくか・・・国によって特性の異なる言語教育サービスのグローバル展開というかなりチャレンジングな領域に進んでいくものと思いますが、資本提携や現地法人買収などを活用してぜひ成功してほしいです。
ちなみにサービス面でのレビューはたくさんありますが、こちらがよくまとまってて読みやすかったです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
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