「劇場グラフィー」はじめました。

劇場グラフィー。

この名前は、フォトグラフィー(Photography)という単語から取りました。

ネットで調べてみたところ、この語源はギリシャ語から来ているらしく、「Photo」は「光」を、「graph」は「描く」を指すことから、「Photography」は、「光で描かれたもの」を意味するそうです。

劇場は、真っ黒で殺風景な空間ですが、そこに創造力を働かせることで、物語を照らし、人物を照らし、観る人の心を照らすことができます。

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、ついに劇場でのクラスター感染が報道されました。

多くの団体が公演の中止や延期に追い込まれ、大衆の、舞台演劇や劇場に対する風当たりも非常に強まっています。

少しでも、悪い印象を払拭することはできないだろうか。ワクチンが完成するまで、私達はじっと待つことしかできないだろうか。

何もしないよりは、何かをしたい。

この苦境を苦境と思わず、今なら何だって試せるのではないか。そんな思いから、この取り組みを思いつきました。

写真撮影をするのであれば、専用の撮影スタジオを使用することが多いかもしれません。
また、公演が行われる際に、広報や記録用として写真撮影をすることはよくありますが、これはあくまで、「写真を撮ること」を目的に劇場を使います。

自分の個人的な趣味である「写真」を、「劇場」という場所で楽しめないだろうか?
初めはほんの好奇心でしたが、せっかくなら、劇場ならではの魅力を振り返ると共に、新たな可能性を開拓し、発信するコンテンツに発展させていけたらと考えています。

多くの方がこの取り組みを知り、「いま、自分にできること」を考えるきっかけになれたなら幸いです。色々な個性を持つ人間がいるように、方法だって何通りもあるはずですから。


先日、初めて一人で劇場を借りて、照明、美術、被写体、カメラマンも全て自分で手掛けてみました。
本当に本当に、大変でしたが、撮りたい絵のために、劇場という自由な空間を活かして、一から作品作りをする楽しさを思い出すことができて良かったです。


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沢山の人と同じ空間の中で、出会い、感動を共有したり、協力してモノづくりをすることもままならなくなった今、やりたいこと・やるべきことは自分の頭で考え、自分の意思で実行するという自主性が必要になってきているのではないか。最近はそんなことをよく思います。

ライブハウスの閉鎖が立て続けにあった頃、私は演劇界も他人事ではないと思いながらも、そのうちどうにかなるのではないか、劇場は、何とか持ちこたえてくれるのではないかと、楽観視していました。

実際に、自分が立たせてもらった劇場が閉鎖するという情報を受けて初めて、状況が深刻であることや、自分の考えの甘さを痛感したのです。

人の共感力とはとても頼りないものですから、相手が実際に、身をもって体験していないことは、どんなに切実な言葉や態度を尽くしても、本当には理解してもらえません。

当事者にしかわからないのなら、自分自身の力で這い上がり、行動しなければこの状況を乗り越えることは出来ません。

私がこの活動をしようとしたもう一つの理由は、劇場で長くお芝居をしてきた一役者にとって、劇場の存続が決して「他人事」ではないと思ったからです。

日常を生きる中で、心から共感できないような他人事に、少しでも寄り添い、想像し、思いやれる「演劇」という表現活動を守るために、劇場という場所はこれまでに沢山、私達に力を貸してくれました。関係者にとって、沢山の思い出と恩が詰まっている大切な拠点です。仕方がないことだからと、この状況をただ傍観していることはできません。

演劇関係者はいま、収入を、生きがいを、未来を奪われようとしています。

しかし、それは何も私達に限った話ではありません。

感染対策を徹底し、公演を打てるよう努力をされている方々は本当に素晴らしいですし、少しでも報われてほしいと願っていますが、その一方で「娯楽なのだから」と、支援が十分に得られないことや、公演を行うこと自体を非難されるのも、仕方のないことだと個人的には思っています。

ですから、公演は満足にできないけれど、それでも何もしないよりかは何かをしたい。

私は劇場という空間を活かし、とにかく何かを産み出す、表現をするという作業がしたかったのです。私達一人一人には、ゼロからクリエイトする意思の力が備わっていると信じています。

私は自分に自信がなくて、卑屈で臆病な人間です。今回一人で準備から撮影までを行ったのも、ただただ被写体としても、カメラマンとしても、上手くやれる自信がなかったからです。

しかしそんな自分でも、舞台で照明の光を浴びている時には、「こんな自分でも、ここにいていいのだろうか」と感じることができました。

劇場は、そこにいる人間一人一人が確かに生きて、其処に存在していることを実感できる、そんな大切な場所です。
一枚の写真を通じて、どこかの誰かに「この場所に足を運んでみたい。実際に体感し、その目に焼き付けたい」と思っていただけるよう、微力ながらこれからも精一杯、私にできることを頑張ります。

今年の初めからは、役者活動の他に、オーディション情報サイトのライターなどもさせていただいております。よろしければ、他の記事も合わせてご覧いただけましたら幸いです。

https://note.com/kanikama444/n/n299266451515

この記事を通してほんの少しでも、舞台演劇の未来に「光」が見出せることを願っています。

それではまた、そのうちに。

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