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舞台『アウターゾーン』を終えて。

終幕しました。
とは言え、来月から配信もありますが。

まずは、ここまで本当に長かったです。

元々3年前に上演予定だった舞台で、稽古も一ヶ月ほど進んでいたのですが、ちょうどその年に未知のウイルスがやってきて延期を余儀なくされました。

それから長く再開の見通しが立たない状態だったため、多くのキャストが座組を離れました。
最後まで一緒に走りきれなかった事は悔しかったですし、何だか、寂しいとも違うのですが、一部を失ってしまった様な何とも言えない喪失感がありました。

そういう状況もあり、残された人達もモチベーションを保つのが難しい状況であったと思います。ミザリィという役を預かった自分ですら揺らぐ時もありましたので、その中で踏ん張って、再開に向けて動き続けてくださったスタッフさん方には感謝しかありません。

再開時、「今回がダメだったら次は無い」と言われていました。今度は「延期」ではなく「中止」になると。
ですから、とにかく何よりも、無事に上演出来た事がまず良かったです。三年も待って、結局お客様にお届け出来なかったらさすがに辛すぎますからね…

アウターゾーンの案内人(ストーカー)ミザリィ。
「ミザリィ」には「不幸」という意味があります。

ここからは、自分が預かった役「ミザリィ」の役作りの過程について、少し振り返ってみたいと思います。

4月から舞台が配信される予定なのですが、視聴ページにログインしてから30日間は何度も観られる仕様みたいなので、よろしければこちらの記事の内容も踏まえてご視聴いただけたら幸いです。

今だから言える話ですが、心から自信を持ってお客様に「観にきてほしい」と言えるようになったのは、かなり終盤の方でした。

稽古の序盤はとにかく、ミザリィの「型」を作る事に苦戦していました。
ミザリィの様な、威厳ある大人の女性を再現するためには、普段自分が使わない音域で台詞を出す必要がありました。
しかし、声のトーンを気にするあまり、呼吸が乱れたり、身体の意識が抜け落ちたり、台詞の解釈が雑になったり、沢山の課題にぶつかりました。

身動きが上手く取れない時間が長くて、もしかしたら皆に不快な思いをさせてしまってるんじゃないかと不安になる時もありました。
そんな状況でも、一つ一つクリアするのを待ち続けてくれる、そんな環境に恵まれて大変ありがたかったです。

今回ミザリィを演じるにあたって使ったポジションは、今まで私が苦手な領域だからと逃げてきた部分もありましたので、その気になればここまで出せるのだという発見がありましたし、この経験は今後に活かしていきたいです。

こんなに稽古から緊張したのは初めての経験でした。しんどかった…!

型がある程度定まってからは、芝居の「具」を詰める事を意識しながら稽古に臨んでいました。

舞台が上演された後にもったいぶっても仕方ないと思うので、此所でしれっと触れておきますが、今回のチーム分け「Mチーム」「Bチーム」のMとBって何だと思いますか?Mはそう、皆さんご想像の通りです。
では、Bとは何でしょう。あ、B級のBではありませんからね。笑

正解は「Bliss」という言葉から取っているそうです。意味は今、皆さんがお使いの携帯なりパソコンでよろしければ調べてみて下さい。

自分が出演する回でこの名前を与えられた事に、何らかの意味を持たせたいと私なりに考えてみたのですが、最終的にミザリィという役を通して「肯定する」という事を表現出来たらと思いました。

アウターゾーンでは、人間の意志の力で不思議な出来事が起こりますが、その多くは一般的に悪い行いをした人には悪い事が起こり、良い行いをした人には良い事が起こるという「勧善懲悪」的な側面があります。

しかし、ミザリィはそれら全てに対して自らが善悪を決めつけている訳ではなく、あくまで「自分の意志でした事が自分の身に返ってくる」だけの話だと思うのです。
ミザリィ自身も色々な場面で発言していますが、彼女はあくまでその様子を見届けているか、手助けをしているだけ。
勿論それは彼女の主張に過ぎないので、それが本当かどうかは誰にも分かりません。
しかし、アウターゾーンが「人間の空想力」で入れる世界ならば、やはりミザリィではなく、各話で取り上げられる人物の意志が尊重された物語であってほしいと私は思いました。

これらの考えは私個人の解釈ですし、実は今回の舞台で演出をされていた啓さんにすら、ちゃんとお話はしていません。
ですが、自分なりのプランを芝居に乗せたら「面白い」と言ってくれたので、何となく意図は受け取ってくれたのではないかと勝手に思っています。違っていたらごめんなさい。(今更)

お世話になった演出の啓さんと、Mチームミザリィ役の夏陽さん。
この写真、緑すぎて何かツボです。

ダブルキャストでMチームのミザリィを演じられていた夏陽さんが「ザ・ミザリィ」という方でしたので、自分の座組での存在意義には悩まされたのですが、私の演じたミザリィが、アウターゾーンという世界の持つ二面性を表現出来ていれば嬉しいです。

今回、沢山の方の記憶に刻まれているジャンプの名作「アウターゾーン」の案内人という光栄な役を預かり、本当に貴重な経験をさせていただきました。
その役の大きさに心が負けそうになる事もありましたが、「不幸は幸福(ハッピーエンド)に繋がる伏線でもあるの」というミザリィの言葉を何度も思い出しながら稽古に取り組んでいました。
こんなにありがたい機会に恵まれたのに、それを不幸にしてしまっては勿体無いですし、不幸にするか幸福にするか、それは私次第だと思ったので。

お客様に観てもらう最後の最後まで恐怖と戦っていましたが、カーテンコールでの拍手の暖かさには心が救われました。恐怖に負けないで、最後まで戦って良かったと心から思えました。劇場で観てくださった皆様、本当にありがとうございました。
そして公演の再開に向けて、クラウドファンディングにご協力くださった皆様も。あの時支えてもらったおかげで完走出来ました。本当にありがとうございました。

千秋楽は、原作の光原伸先生と奥様の浅美先生が観に来てくださいました!

余談ですが、クラウドファンディングのリターンで「ゲネプロ観劇」という物がありまして、本来はMチーム公演とBチーム公演の両方を観てもらう予定でいたのですが、時間の都合で急遽一話ごとにMミザリィとBミザリィが入れ替わるというレアな公演を観てもらう事が出来ました。
お約束していた物を提供出来なかったのは大変申し訳なかったですが、あれはあれで誰も観る事が出来ない物を観られて、ある意味クラファン特典に相応しい内容になっていたかもしれません…

さて。長々とお話してしまいましたが、最後に舞台アウターゾーンの配信のご案内をさせて下さい。
今年の4月から来年の3月まで期間があるようなので、MチームとBチームを比較して観てもらえるのも楽しいと思います。
それぞれのお話に散りばめられた細かい演出を発見出来るのも配信の魅力ですので、劇場でご観劇くださった方も是非ご活用くださいね。
▼配信のチケットフォームはこちら

三年間に渡って預かり続けた役をお返しし、しばらく一般人ライフを楽しんでおりましたが、私もまた、これから少しずつ動き出して行こうと思います。
今回の舞台で出会った皆様、もしよろしければ、今後ともよろしくお願いいたします。

それではまた、そのうちに。

くらら

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