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医師の宿直中の飲酒

県立病院で宿直中の医師が病院内で飲酒をし、その後患者さんに医療行為(点滴)をしたことが発覚し、懲戒処分を受けたようです。

多くの人が「けしからん!」と言うと思いますが、この件は単純でない部分もあるので少し考えてみました。

まず、法律上「飲酒をした医師は診療を禁止されているのか?」

私が調べた範囲ではそういう法律は無いです。
関係がありそうなのは医師法19条の「診療を求められた医師は正当な事由がない限り診療を拒否できない」という条文です。

この条文を医師がどう解釈するのか。
「飲酒をして正常な判断ができない」というのは、診療拒否をする正当な理由になりそうです。
しかし、勤務中の医師が診療できない(=仕事ができない)状態になるのは、おかしな話です。
ですので、今回の件では宿直中の医師は飲酒すべきでなかったと私は思います(法律違反ではないけれど)。

では、小さな病院でその専門科に医師が1人しかいない場合の夜間の待機(自宅等で)はどうでしょう?
もし、整形外科医が私一人だけの病院に勤務した場合、365日コールされる可能性があります。

これは地域の開業医も同様です。
かかりつけ患者さんから、状態悪化の相談連絡はいつ来るかわかりません。
(夜間の相談は、近隣の病院へするように連携している地域もあるようですが、そうできない地域・診療所もまだ多いです)

開業医の飲酒を完全に365日禁止するわけにはいきません。

となると、専門科一人体制の医師の飲酒後診療を禁止した場合、恐らく夜間救急病院への負担が急増し、その救急医はもちろんですが患者さんも困ることになると思われます。

「ここまではOK」「これ以上はダメ」みたいな境界がはっきり示せれば良いのでしょうが、医師不足の現在では難しい面があります。

それでも、厚労省は現場に則した方針を示してくれると患者さんも医療従事者もより安心できると思います。

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