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若い外科医が、手術の基本である「糸結び」がきちんとできない

私は整形外科医で、私の勤務している病院には毎年大学からの若い医師が交代で派遣されてきます。(大学の医局制度によって)

医師になって、4年目~6年目くらいの人たちなのですでに基本的な事は習っており、もうすぐ整形外科の専門医試験を受ける年代もいたりするのですが、基本的な知識・手技が身についておらず、驚くことがしばしばあります。

これは「個人の能力」によるところはもちろん大きいのですが、このように基本的な事が身についていない医師が増えている要因として「医局の方針」が大きいとも感じています。

現在、大学医局は地位・権力が低下し(ドクターXのナレーション通り)、どこの大学も若い医師を欲しがります

すると、大学医局が若い医師が喜ぶような体制を作らなければならないのですが、外科系の医局で若い医師へのアピールポイントは「手術をたくさん執刀できますよ」です。

そして、大学医局は、下請けの各病院(私が勤務している病院を含む)にそのお達しをして、「若い医師が執刀したら、○○ポイントを付与する」という形で各病院がポイント稼ぎをするようになります。

私はもはや直接大学医局とは関係が無いので、そのような忖度をしません(する必要が無い)が、他の病院ではそのようなポイント獲得競争が起こっており、若い医師は手術の執刀数が増えています。

となると、手術の助手で入る場面が少なくなり(執刀ばかりするため)、助手の超基本的な役割である「糸結び(執刀医が患者さんの身体に通した糸を、緩まないように結ぶ)」の回数が少なくなります。

さらには「若い医師のご機嫌を取る」必要があるため、指導も甘くなっている面もありそうです。

働き方改革は、医師に関しても来年から本格導入されますが、見栄えの良い先端技術ばかりを覚えて、基本的な手技ができない医師が増えていくのでは?と危惧してしまいます。

私の所に来た若い医師には、愛情を持って厳しく教えるようにしていますが、そんな愛情もそのうち「パワハラ」と訴えられてしまうのかもしれません・・

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