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政党の綱領をAIで可視化してみた・緊急番外「参政党」ってなんだ?

参政党の綱領をワードクラウド化してみる

2022年7月10日投開票の参院選では、「参政党」という党が新規参入して話題となっています。ホームページを見てみたところ、綱領もあり、基本政策も掲げられていました。

そこで、参政党の綱領をワードクラウド化してみました。

参政党の綱領ワードクラウド

スカスカです。本当のことを言えば、ワードクラウド化は必要ないのです。全文はたったこれだけです。

・先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる。
・日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する。
・日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる。

参政党綱領全文

90文字ありません。れいわ新選組の400文字よりも短い綱領です。綱領の日本最短記録です。

綱領は政党の憲法と筆者は思っています。こんな短い憲法ではどんな国を目指すのかさっぱりわかりません。

とはいえ、れいわ新選組やNHK党のように、国政の場に議員を送り込んでしまうかもしれません。当選すればその議員は我々の代表です。テレビ討論で、発言するかもしれないのです。

であれば、できる限り他党と比較しておきたいと思うのは有権者の切実な心情でしょう。

「天皇を中心にまとまる平和な国」

まず筆頭に出てくる「天皇」です。「天皇」を綱領に盛り込んでいるのは、他党では自民党と日本共産党しかありません。自民党は以下の記述です。

我々は、日本国及び国民統合の象徴である天皇陛下のもと、今日の平和な日本を築きあげてきた。

自民党綱領

自民党の綱領に「天皇」が出現するのは、現綱領が初めてです。1955年の結党以来55年間はなかった単語で、これも自民党の保守回帰を示していると思います。

一方で日本共産党は、

一人の個人が世襲で「国民統合」の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。

日本共産党綱領

と主張しています。立憲君主制ではなく、民主共和制にするべきだと明確にうたい、天皇制の廃止をにじませています。

それ以外の党は綱領で「天皇」に触れていません。

では、参政党の「天皇を中心」にした政治は、現行の象徴天皇制とどう違うのでしょうか。

参政党は綱領のほかに、「3つの重点政策」と「10の柱」という政策集があります。その10番目の柱に答えらしきものがありました。

「日本の国柄に即した国づくりと国民の自由な幸福追求」というタイトルの文書です。

・世界唯一の皇統を日本のアイデンティティの根幹として未来に継承する。
・日本古来の伝統・文化と革新性・多様性とを日本的なスタイルで融合することにより、新しい文化を不断に創造し世界に発信する文化大国をめざす。
・日本の国益と尊厳を守るために国際世論形成力を強化し、史実に即した歴史認識の形成を進め、戦後国際秩序からの脱却をめざす。
・社会主義的な戦後システムから、日本本来の強みや国柄・国民性を映じた21世紀型の社会システムへの転換・再設計を進める。
・「グローバル勢力vs国民国家」という対立軸が強まるなかで、自由社会と法の支配と民主主義を守る新たな国家の役割を強化・推進する。
・多様で自由で責任ある言論・思想の場を守り抜き、健全で有為な民主主義を育てる。

参政党「10の柱」

はじめにある「世界唯一の皇統を日本のアイデンティティの根幹として未来に継承する」というのは、天皇制の継続以上の意味があるのでしょうか。次のパラグラフも何を具体的に指示しているのか筆者にはわかりません。

3番目は、日本に関しての国際社会の歴史認識を修正したいとの思いがうかがえます。東京裁判史観や慰安婦問題などを念頭に置いているのでしょうか。

4番目も中身は不明ながらも、社会主義的な政策は取らないということはわかります。成長よりも分配を重んじるといった方向の政策を志向しているわけではなさそうです。

5番目は意味が取れません。ただ、参政党がグローバル勢力側ではないことは理解できます。「天皇を中心にひとつにまとまろう」と言っているのですから。6番目は参政党も含め、様々な主張に耳を傾けるべきだという意味だと解釈しています。

結論として、「10の柱」を読んでも、「天皇中心制」の中身はよくわかりませんでしたが、保守色の強い、歴史修正主義の国民国家を志向している雰囲気はわかりました。

「日本国の自立」

綱領の第2パラグラフには、「日本国の自立」とあります。「自立」という以上、何からの自立かが問われるのですが、「3つの重点政策」にも、「10の柱」にもそれらしき部分は見当たりません。

他党で「自立」という単語を綱領で多用しているのは、日本維新の会です。維新は、

日本維新の会は、「自立する個人、自立する地域、自立する国家」を理念に掲げ、我が国が抱える本質的な問題の解決に真正面から取り組み、具体的かつ現実的な提案と、建設的な議論によって、社会課題の解決と、国民生活を豊かにすることを結党の理念とする。

日本維新の会綱領

としていて、「自立」は結党の理念に結び付いた言葉なのです。この中で、「自立する国家」については、

外交においては、世界が直面する課題に対して新たな構想と解決策を自ら提示し、つくり出していくことによって、国際社会の新たな方向性やルール策定において主導的な立場をとる。それにより、国際社会の平和と繁栄の維持・発展に一層貢献するとともに、世界の成長力を日本の国と地域の成長力として戦略的に取り込んでいく。こうした方策により、日本が国際社会で一層のリーダーシップを発揮し、国益の確保と国際平和への貢献を両立する、「自立する国家」となることを目指すものである。

日本維新の会綱領

とあります。日本維新の会にとって国家の「自立」とは、国際秩序を主導的に作っていく国になることを意味しているのですね。

こうした文脈と一致しているのは参政党の政策集「7の柱」です。「日本が主導する世界の大調和」というタイトルです。

・日本が歴史的に営んできた「調和」「平等」「協調」「利他の精神」「循環型の思想」をもって、地球社会に多様な国々が自由に共存共栄する世界新秩序の形成を主導。
・各分野での課題解決を始め「世界のお手本」となることで生まれる日本の魅力の自然な伝播力や影響力で新たなタイプのリーダーシップを国際社会で発揮。日本新秩序を世界新秩序へ。
・自由で開かれたインド太平洋を日本の地政学的戦略の中軸に据え、この地域を魅力ある繁栄と安全保障のプラットフォームへと育てる。
・強国の論理や全体主義に対し、安全保障面では毅然たる外交を展開。
・人権弾圧や法の支配を破壊する国家に対する制裁発動要件の整備拡充。
・国際機関など国際社会で活躍する人材の育成と輩出。

参政党「7の柱」

「日本新秩序を世界新秩序へ」は、かなり強い印象を受けます。どんな秩序を思い描いているのか、もう少し説明をしてほしいところです。

さて、この「7の柱」は綱領でいえば、3パラグラフの「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」に対応している部分と思われます。

2行目にある「自立」が何を意味するかについては、結局、よくわかりませんでした。

「日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり」


最後に参政党の「3つの重点政策」を示しておきます。

<子供の教育>
学力(テストの点数)より学習力(自ら考え自ら学ぶ力)の高い日本人の育成
・探究型のフリースクールを地方自治体が作れるようにする法改正
・自ら仕事をつくり、収入を他者に依存せず、管理されない人生が設計できる公教育の実現
・国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育

自尊史観というのは、自虐史観の対義語でしょうか。

<食と健康、環境保全>
化学的な物質に依存しない食と医療の実現と、それを支える循環型の環境の追求
・医療資源の適正配分による、膨張する医療費の抑制
・農薬や肥料、化学薬品を使わない農業と漁業の推進と食品表示法の見直し
・先人の知恵を生かした日本版 SDGs の推進

<国のまもり>
日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり
・外国資本による企業買収や土地買収が困難になる法律の制定
・外国人労働者の増加を抑制し、外国人参政権を認めない。
・個人情報と通貨発行権を守るための新しいデジタル政府通貨の導入(松田プラン)

かなり排外主義的な色彩が濃い政策だと思います。

それにしても、「鬼滅の刃」の影響を受けたとしか思えない政策集の名づけ方です。大丈夫でしょうか。

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