見出し画像

映画「タゴール・ソングス」見た

こんにちは、勢いで記事を書くヒノカンです。

先日、ミニシアターで「タゴール・ソングス」という映画を見ました。
昨日の『バウルを探して』と似ている。
バウルは、吟遊詩吟者で、タゴールは彼らの歌を作った、そんな感じの分け方。
前回の記事もよければお供にみてください。

インドとバングラディシュの国歌を作り、
『ギタンジャリ』という詩で非西欧圏で初めてノーベル文学賞を受賞した人物、
ランビドナラート・タゴール。
彼が残した歌が、現代のベンガルの人々の感情を表すように、
脈々と受け継がれる、その精神と共感性の理由を求めるドキュメンタリー。

(何度も私はnoteで訴えているけど、)インドに行きたい欲を、せめて落ち着かせるために、インドの雰囲気が感じられる映画ということ、
あと、詩が人々の心に染み渡る光景が知りたくてこの映画を見た。

日本人にとって、詩は、「学校で学ぶ文学作品」という印象が強いように思える。
国語の問題のように、指示語の意味を探り、メタファーがどのように修飾しているのか、そういったことの解読法を学ばされた。
だから、詩はお堅いもので、現代人には難しいものだという印象が強い。
よって、詩集を読む若者が少ないと思う。
なんだか構えてしまうからだ、問題を解く前と同じ感覚で。
しかし、詩とはそうでなく、
J-POPの歌詞のように口ずさんだり、共感したり、
今は理解できずとも、軽く読み進め、言葉と言葉のリズムを捉え直感的に楽しむものだと、20歳を超えてから知った。
それを理解できたのは、高橋久美子さんの『今夜凶暴だからわたし』という詩集。
言葉を最初から読まなくても、後ろから読んでもいいし、最後のページから読み進めても、パッとめくったページから読んでもいい。言葉と言葉の空いた空間でさえも味わいを感じられる詩の自由さに面白みを感じた。まるで言葉がドレスを纏って踊るような感覚を感じた。言葉が自由で、それでいて一語一語がもつ言葉の力を感じ取られた。削ぎ落とし最低限の言葉の数々からの怒涛の情報量、そして開放的な詩を読むと、私の心が自然と社会のしがらみや不可解な矛盾でがんじがらめになって悩む脳がゆっくり解けてくるように思えるのだ。その解ける時の頭がすっと落ち着く感じが心地よい。
だから私は詩を読む。

さて、また話がずれましたね。

この映画は、終始ずっとベンガル人の方の歌声が絶え間なく流れる。
若い女の子も、お母さん世代の女性も、壮年の男性も、老人も、
みんな口を揃え、「自分たちの悲しみの理解者」だと言い、自分たちの社会への主張としてタゴールを引用している。
例えば、若者は政治に対して自らの不満を申す時タゴールを用いながらラップで叫んでいた。固定観念の強い家庭とぶつかる少女は、自由になりたいと言いタゴールの名前を論拠にして話していた。彼らの心の味方にタゴールの歌があり、自由になれず悲しい時タゴールの歌を口ずさむことでその傷を癒していた。

タゴール・ソングの歌詞はとても難しい。
『ギタンジャリ』を映画を観る前に読んだが、何が書いてあるのか理解できなかった。主語が、あなた、わたし、と訴えるものがあるが、対象が絞られてなくぼんやりしているので想像が難しいのだ。しかし、ここがタゴール・ソングの魅力だと思えた。対象が絞れないから、自分の身近な悩みを「あなた」「わたし」に置き換えて、読解することが可能だからだ。(詳しくは、『バウルを探して』を参照)
だから、毎度毎度読むごとに新しい感覚を感じる。主語を指す言葉が毎度変化するからこそ、読後の感情が様々に変化する。自分ともう一人の自分が対話するような感覚が感じられる。タゴールが書いたはずなのに、書き手であるタゴールの顔が一切出てこない。詩の文章がそれほどにシンプルで、無駄なものを削ぎ落としているからこそなし得る技なんだと思った。

詳しくは、ギタンジャリの詩集を一度読んでほしい。

画像1


 また、この映画には私と同世代の人々が多く登場したのが印象に残っている。オンナノが、タゴールの詩を胸に抱きながら自分らしさ探しと自由を求めて親と議論したり、日本に来たり、行動力が凄かった。東京で出会った就活中のタリタさんの、自分たちがバングラディシュの為にできる仕事を探している様子も心に響いた。自分しかできなく、熱意を持って挑戦できる人こそカッコよくてそういう人こそ社会を動かす力があると確信できた。この映像は(賑やかな東京の様子を見るに)去年であるから、タリタさんはきっと今新卒社会人でご活躍されているのだろう、どのようなお仕事で、邁進されているのかな、とふと思いお話ししたくなった。

この映画をみて、心に軸となる言葉を持って行動する人はかっこいいと学んだ。とにかく、自分を持ち、社会と自分の距離を図れて、何ができるのか考える人になりたいと思えた。登場人物たちの心にはタゴールの精神が流れている。彼らの情熱な目線に近づきたく、『ギタンジャリ』と映画見た後に購入した『わが黄金のベンガルよ』をこれから読もうと思う。

「タゴール・ソングス」
監督…佐々木美佳さん
公式サイト

あと、久々に映画見て楽しかった。空気の入れ替えされていて、みんなディスタンスを守るような席選びで、アルコール除菌もきっちりされていて好感が持てた。ウィズコロナで娯楽が馴染む社会が早く来ますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?