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真っ直ぐに性格が悪い人の魅力 - 漫画【鉄風】感想文(前編)

考えすぎラジオ#4〜5にて、阿部くんは女子高生の<総合格闘技>漫画「鉄風」を紹介してくれた。

阿部くんも言っていたように「鉄風」は、なかなかのマイナー漫画で、私は全く聞いたことがなかった。もしかすると、ここで紹介されなかったら、一生読んでいなかったかもしれません。

「鉄風」は2008〜2015年にgood!アフタヌーンで連載されていた漫画で、巻数は8巻と少ないので、とてもとっつきやすいです。

Webでも読めるみたいですが、Amazonで中古全巻が1,700円で売られていたため、私はそれを購入して読み始めました。

<あらすじ>
身長182センチの女子高生石堂夏央は、生まれ持った才能ゆえにどんなスポーツもこなしてしまう。 そのため何をやっても退屈してしまい、努力することに飢えていた。 ある日夏央は校内に格闘技部を作るという馬渡ゆず子と出会い、充実した表情の彼女に対して激しい反発心を自覚し、女子総合格闘技の道に踏み出す。

マンガペディア

阿部くんは、ねじ曲がった性格をしている主人公の漫画が好きらしく(なんで?w)、この「鉄風」はまさに、主人公がねじまがった性格の高校一年生です。私も読んでみて、予想より全然狂気じみていて、ちょっと苦笑いしてしまいました(笑)

そして、これは同時にスポ根漫画でもあります。スポ根漫画といえば、主人公はとにかく真っ直ぐで、曲がったことが大っ嫌いという印象がありますが、この漫画の主人公「夏央(なつお)」はその真逆です。

このあらすじにもあるように、「充実した表情の彼女に対して激しい反発心を自覚し、女子総合格闘技の道に踏み出す」というのは、高校一年生の思考としては確かにねじ曲がっている・・・
普通、スポーツを始める動機は、「やってみて楽しかった」「友達がやっていたから」などの理由が多いのではないだろうか。
相手の充実した表情に反発して、やったこともないマイナー競技を始める人はかなり少ないと思う。

しかし、この「充実した表情の彼女に対して激しい反発心を自覚し」という部分までは、結構誰にでも共感できる部分ではあるんじゃないかな、とも思う。

少なくとも自分は、「なんとなく分かるな」と思いました。まぁ、その理由だけで「総合格闘技を自分もやって倒してやろう」などとは絶対に思いませんが・・。夏央は行動に移してしまうほどその思いが強く、キラキラした人間が気に食わないのです。

阿部くんは、この現象をSNSに例えて、夏央を「Twitter」その標的を「instagram / Facebook」と言っていて、すごく納得感がありました。インスタ・フェイスブックは充実していて、ツイッターはそれを妬んだり貶したりするという、なんとなくのSNSのイメージはみんな共通していると思う。
そう考えると、Twitterで誹謗中傷という「行動」を起こしている人は、まさに夏央くらいの何か強い反発心があるのかもしれません。

しかし、誹謗中傷をする人と夏央の違いはなんでしょうか?
おそらく、“相手と同じリングに立つか立たないか”というところだと私は思います。

夏央は学校の友達に、自分が相手に感じている反発心や、その相手を倒そうと思っていることを、とてもキラキラした表情で話します。かなり狂気めいたシーンではありますが、それを聞いた友達は、
「夏央ちゃんって性格悪いよね」と笑顔で言い、
「でも真っ直ぐに性格が悪いからいいと思う」と言います。
この子が言っていることは真理だな、と私は思いました。

どんなにひねくれて、ねじ曲がった性格でも、その解消法として、相手と同じリングに上がってぶっ倒そうとすることを選ぶ、その真っ直ぐさに人は好感が持てるのです。

私はこの友達の言葉を聞いて、南海キャンディーズの山ちゃんが思い浮かびました。
あんなにひねくれていて、性格が悪いと言われているけど、真っ直ぐにお笑いのリングに上がって、その性格の悪さを武器に全うに戦っています。おそらくその真っ直ぐさがお茶の間に、蒼井優に、響いているのかなと思います。それに、山ちゃんの不満や妬み嫉みは強度が違えど、実はみんな思っていることでもあるというのは重要です。

そういう意味では、山ちゃんも夏央も、ものすごく真っ直ぐな人間です。角度は変でも、この真っ直ぐさはまさに漫画の主人公です。

でも当の本人たちは、真っ直ぐかどうかなんてことは気にしておらず、そうすることで一番憎い相手の心をえぐることができるし、自分のイライラやモヤモヤを晴らし、そして自分が充実できるということを知っているのです。それを知っていて実践できる人間は、犯罪者にはならないんだと思います。多分。

それを知らない・もしくは実践できない人間が、リング外からヤジを飛ばし、ヤジだけならまだしも、凶器を持ち出してきて、どちらにとっても取り返しのつかないことになったりするんだろうな、とも感じました。

そう思うと、問題なのは彼女の「ねじ曲がった感情」ではなく、その感情の解消法と実行方法を知っているかどうかなのかもなぁ、とも思います。

3巻の作者コメントにこんなことが書かれていました。

「夏央の性格設定には、モデルにしている人物がいるのですが、性格が性格だけにまだ本人には伝えていません。しかも本人の方が数倍、悪かったりするのが、人ともかんとも…」

でもそれを、

「素敵な方に悪いんですけどね。もっと大人で、歪みのない知的な悪さです。」

と作者は記しています。

さらに、「夏央にもあんなカッコイイ大人になってほしい」とまで言っています。

そのモデルが誰なのかは分かりませんが、世間で「性格が良い」とされる大勢の人間よりも、何倍も興味を惹かれてしまいます。
それは怖いもの見たさでもあり、未知との遭遇であり、作者の言葉に「なるほどな」と納得したい、あわよくばその人から何かを学びたいという想いでもあるんだと思います。いざ会ったら自分にとってはものすごく嫌なやつかもしれないけど(笑)

「性格が悪い」というのも、十把一絡げにするのは勿体無いのかもしれません。今後もし「この人、性格悪いな〜」と感じる人がいたら、夏央に「性格悪いね」と笑顔で言った友達のように、その人を観察すると面白そうです。(もちろん相手に「性格悪いね」とは言わない方がいいけどw)

性格がどう悪いのか、それは本当に悪いのか?誰にとって悪いのか?などと分析してみると、最後にはその人を好きになっている、なんていうこともあり得るのかもしれないと思うと、なんだかゾッとしますね〜。

まだ3巻までしか読んでないので、夏央の性格の悪さの根源をまだ私は知りません。でも、もうちょっと彼女を好きになりつつあります。
最後まで読んだらまた感想書きます!


▲鉄風の話は後半


▲鉄風の話は前半


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