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憎かった兄の死を綴った村井理子さん話題の新刊『兄の終い』!(No. 861)

考える人 メールマガジン
2020年4月16日号(No. 861)

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編集長のお気に入り

◎村井理子『兄の終い』CCCメディアハウス


当サイト連載「村井さんちの生活」の最新回「孤独死した兄のこと」で触れられていた村井理子さんの最新刊を読みました。

連載でも書かれていましたが、昨年10月下旬、夜遅く、村井さんは宮城県塩釜警察署から携帯電話に連絡を受けます。「実はお兄様が本日多賀城市内でご遺体となって発見されました」。もともとあまり仲が良くなく、二度の離婚後、生活に困窮し、借金を求めてくることも多かった兄。その日からの5日間、兄の元妻と兄の娘と息子とともに、いかに兄の人生の後始末をつけたかが書かれています。

はじめてこの話を聞いたとき、てっきり、お兄さんは一人で暮らしていたのかな、と思っていたのですが、息子さんと二人暮らしだったんですね。残酷なことに、お兄さんの死の第一発見者も息子さん。読んでいくうちに、お兄さんがすべてに捨て鉢になって死んでいったのではなく、病気で身体を悪くしながらも、お兄さんなりに息子のために動いたり、一所懸命あがいていたりしたのが分かってきます。

「一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。」こういう私的な家族のことだと、作品化するまで、距離をおいて起きた出来事を咀嚼できるよう、数年ほど時間をおくのが普通です。あえてそうせず、昨年後半に起きたことをすぐに書こうとするのが、村井さんらしいです。書かれている記憶の詳細は、急速冷凍されたように生々しく、しかも時系列に沿って見えてくるものが淡々と正確に記されます。乾いた筆致に、改めて村井さんの筆力を感じました。

ツイッターでこの本の感想に出会うと、同じような兄弟や親族を抱え、同じように家族を見送った体験のある人ってものすごく多いという印象を受けます。家族というものの、忘れようとしても、許してくれない独特なうっとうしさ。それぞれの読者の記憶を強く揺さぶる本です。

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