見出し画像

社会思想の泰斗・佐伯啓思さんと考える「死生観」(No. 934)

考える人 メールマガジン
2021年10月21日号(No. 934)

吉川トリコさん『おんなのじかん』サイン本プレゼント!

先日惜しまれつつ終了した吉川トリコさんの人気エッセイ連載「おんなのじかん」が単行本になって好評発売中!

刊行を記念して、サイン本を3名様にプレゼント! ご応募はこちらから。

画像1

応募締切は10月25日(月)23:59まで。ふるってご応募ください!

『灼熱』刊行記念短期集中連載!
葉真中顕「封印された分断 ブラジル勝ち負け抗争」

フェイクニュースと、それによる人々の分断――。それは今に始まった問題ではありません。

戦後ブラジルの日本移民の間で起きた、「勝ち負け抗争」もそのひとつ。「日本が戦争に勝った」と信じる人が多数を占め、敗戦を認識した少数との間で抗争が勃発、多くの死傷者が出ました。

この抗争をもとに、小説『灼熱』を著した葉真中さんは、調べを進めるうち、事件の様々な側面や要因を知ることに。現代にも繋がる問題として、そして小説の副読本としてもお読みいただける「勝ち負け抗争」について解き明かす短期連載です。

第1回 5分でわかる“ブラジル勝ち負け抗争”入門

第2回 ブラジルに夢を求めて移住した日本人たち

第3回 日米開戦、「敵性国」となったブラジルに閉じ込められた20万人

第4回 日本は戦争に勝った! 戦勝デマがもたらした分断


以降、毎週金曜日に順次掲載予定です。お楽しみに!

アクセスランキング


■第1位 南直哉「お坊さんらしく、ない。」
六 私の「諸行無常」

■第2位 岡田暁生「第20回小林秀雄賞 受賞のことばと選評」

■第3位 道草晴子「よりみち日記2」
17. バイトふっき

最新記事一覧


■橋本陽介「ふしぎな中国語――日本語からその謎を解く」(10/18)
第8回 キューバで「幽默大師」に出会ったはなし

中国語初学者を悩ませる「離合詞」について。その謎を解くカギは「リズム」にありそうです。


■佐伯啓思「考える四季」(10/21)
死んだら「無」なのか、それとも「霊魂」になるのか

『死にかた論』が話題の佐伯啓思さんが考える「死生観」について。


「考える人」と私(34) 金寿煥


 大阪の天王寺区にある下寺町は、「聖徳太子建立の寺」としても知られる四天王寺の北側にあり、30もの寺院が密集する歴史ある寺町です。その一角に應典院はあります。
 應典院は、本寺である大蓮寺の塔頭寺院。「塔頭」とは、住職の秋田光彦さんいわく、「本寺の山内に建てられる子寺みたいなもので、わかりやすく言うと、『パラサイト寺院』」。大連寺創建450年の記念事業として、1997年にリニューアルした應典院は、コンクリート打ちっ放しの建物、墓地に面した外壁は一面ガラスとモダンな佇まいで、一見するだけではお寺とは思えません。
「お寺らしくない」のは、外観だけではありません。寺院内には「本堂ホール」と呼ばれる音響・照明設備を備えた劇場型の空間があり、そこでは毎日のように演劇やトークショーなど、さまざまなイベントが行われていました。「本堂」でも「ホール」でもないのがポイントで、あくまで「本堂ホール」。應典院が「イベント寺」「日本一若者が集まる寺」などと称される由縁です。

「近代になって西洋からショウビジネスの概念が入ってくるまで、日本の芸能の多くはお寺や神社の中で営まれてたんですよ。『勧進興行』といって、本堂を新築したり、ご本尊を新調するのに、お金が要る。そのお金をみなさんから恵んでいただき、その代償として見せたものが日本の演劇のルーツです。(略)今や應典院は鉄とガラスとコンクリートの愛想のない近代建築だけど、全国7万の寺の中でただ一つ、かつてお寺は劇場であったという原点を追い求めているお寺なんですよ」

 そう秋田さんが語るように、「脱線寺院」などと呼ばれ、奇抜と思われがちな應典院ですが、日本の寺院が本来果たしていた役割を踏襲、それを取り戻そうという意図に導かれてデザインされたものであることがわかります。
 それは、秋田さんが本寺である大蓮寺の住職も兼任していることからも明らかです。「こちらはれっきとした葬式仏教ですから」と語るように、日本仏教の「新旧」双方を意識し、「イベント寺」と「葬式仏教」の双方を往還しながら、寺院のあり方を問う。それは、以下の秋田さんのコメントによくあらわれています。

「應典院は若い人たちがいつでも帰ってこれる場所にしたい。どんなに年老いても、若い時の情熱の記憶があるから。大蓮寺はたくさんの檀家さんのふるさとでありたい。なつかしいご先祖さまがいらっしゃって、やがて自分も還る場所だから。この二つのお寺が呼応しながら、ひとつのイメージをつくっています」

 近年、お寺でもさまざまなイベントが開かれるようになり、葬式や法事以外で利用されるシーンも増えてきました。その嚆矢は、間違いなく應典院だと言えるでしょう。
 この「考える仏教」での取材をきっかけに、私も應典院で行われたイベントに足を運ぶようになり、ある時、住職の秋田さんに「これまでのことをまとめませんか?」と原稿を依頼。そして、2011年2月『葬式をしない寺 大阪・應典院の挑戦』という新書としてまとまりました。そこには、秋田さんのお寺に懸ける思いが詰まっています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■考える人
https://kangaeruhito.jp/

■note
https://note.com/kangaerus

■Twitter
https://twitter.com/KangaeruS

■Facebook
https://www.facebook.com/Kangaeruhito/


Copyright (c) 2020 SHINCHOSHA All Rights Reserved.
発行 (株)新潮社 〒162-8711 東京都新宿区矢来町71
新潮社ホームページURL https://www.shinchosha.co.jp/

メールマガジンの登録・退会
https://www.shinchosha.co.jp/mailmag/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

もしサポートしてくださったら、編集部のおやつ代として大切に使わせていただきます!