チューバッカを小屋に入れる時、その人の本性があらわれる。
我が家にはペットがいる。
今のペットは三代目である。
ゆえに我が家では三代目と聞かれたらジェイでソールなブラザーズをおさえ、我がペットが上にくる。
一代目の犬はキャバリアの男の子だった。
私が保育園に通っていた時、親が私たち兄弟へのクリスマスプレゼントとして飼い始めたのである。
二代目の犬もキャバリアで、女の子だった。
この子は本当に美少女犬で、どれくらいかというと、
私が大学生になって初めて茶髪に染める時、初対面の美容院のお姉さんに「この子と同じ色にしてください」って真顔な親バカになるくらい美少女犬だった。
この子は14歳で、大きな病気もなく、安らかに天国へ旅立っていった。
最期、力を振り絞り、ワンワンと吠えて家族を集め、みんなが泣きながら名前を呼んでいるのをよそに、静かに深い眠りについた。
次の日、家族全員の目はパンパンに晴れていた。
そして、もうこんな苦しい気持ちになりたくない、だからもうペットを飼うのは辞めよう。と話し合った。
〜1週間後〜
新しい犬「くう〜ん」
飼うんかーーーーい!!!
主犯:母
悲しさに耐えきれなくなった母が、寂しさを埋めるべくペットショップに通い、運命の犬に出会ったらしい。
母は父、姉と外堀を埋めてイケると確信して、飼う決断をした。
もう私ね、母はアレだと思ったよ。
長年付き合っていて、もう結婚すんじゃない?って言われていたカップルが、あろうことか別れてしまい、しかもその次の日に新たな恋人と歩いている、語弊が生まれるがフットワークが軽すぎるフッ軽人間にしか見えなかった。
いや、いいんだ、母も選ばれし犬も悪くないよ。
ただ、びっくりしたのはキャバリアではなかったこと。
どうやらトイプードルとチワワのミックスらしいが、私にはどうしても和製チューバッカにしか見えなかった。
ということで、この記事では以下チューバッカと呼びます。
和製チューバッカは手のひらサイズ
初期のチューバッカはぷるぷる震えていて、チューバッカのエピソード0でも作れるんじゃないかって思えるくらい震えていて、西野カナより震えていて、
二代目が美少女犬ならば、三代目はついつい見守りたくなるアイドルでしょうかね。どちらにしても親ばかです。
そんなチューバッカもすくすくと育ち、
よりチューバッカみが増し、
全くかゆくもなんともない甘噛みが本気の噛みになり、
本物のチューバッカになったのである。
〜完〜
おふざけがすぎました。
まぁすくすくと育ったのだが、私が社会人とともに都会に上京したため、地元に帰ってくる頃には我が家を侵略してきた新・チューバッカに昇格していたのである。
崇拝していた母のことも、あろうことかチューバッカは牙をむけ、時には母の手から血が出るくらいの暴君になったのである。
しかし、せめてもの救いなのか、母が「ハウス」というと、新・チューバッカもおとなしく撤退するのだ。
そして次の朝には、当時のかわいいかわいい子犬のように
くう〜んと母の手をペロっと舐めては従順なチューバッカに戻っているのである。
ふんふん、やはり犬は忠誠心があるのだなぁ〜と思った。
今度は私に牙をむけるチューバッカ
私:「チューバッカ、口にくわえている物出しなさい!」
チ:「ヴヴ〜」
私:「もう…ハウス!!」
チ:「グルルルル」
私:「チューバッカ、ハウス!!」
チ:「フーッ!グルルルル!!!」
私ついにやられるのかな…?テレビに“飼い犬に噛まれ、重傷”みたいなニュースとともに我が家のチューバッカの写真が報道され、ツイッターに本物のチューバッカの画像と並べられてネタにされるのかしら。
私はそう思いながらも、犬用のおやつを取り出し
「チューバッカちゃん!ほら、おやつあげるからハウスにお入り!」と、何とも犬のしつけに良くない“おやつで解決させる”方法をとったのだ。
チューバッカは従順になることなく盗賊のようにスタコラとハウスに戻り、早くよこしな!と言わんばかりの表情で睨んでいる。
弱腰だった私は、小屋の鍵を閉めたら途端、ジャイアンを見つけ背中に隠れて威張りだすスネ夫のように「もう金輪際、牙をむけるんじゃないぞ!」と言い、小屋の格子のスキマから噛まれないようにおやつをポイッとなげた。
ふっ…所詮人間には勝てないのだよ…
母が家に帰ってくると、私は舞台並みに大きい手振り身振りでチューバッカとの一連の出来事を報告する。犬が喋れないことを良いことに、自分が被害者であること何度も主張する私の器の小ささよ。
母はチューバッカに「考えるおばけのことを噛みつこうとしたらダメなのよ。わかった?」と優しく言い、小屋の鍵をあける。
そこにはかわいいかわいいチューバッカが母の手をぺろぺろと舐めているのだ。
この忠誠心よ…
まぁなんだかんだ、私の膝の上にくるし、かわいいかわいい我が子なのだ。多分私のことは子分だと思っているけど、それでも良いな。
なんて思いながらチューバッカの頭をなでる。
〜夜〜
大体24時くらいにチューバッカは寝るため、小屋にかえすのだが
23時30分くらいから構ってほしいのか、悪さを始める。
私は普段、自分の部屋にいるので見ていないが、悪さをしたら昼間の私みたいにおやつで小屋に強制送還されるんだと思っていた。
どれどれ、母の対応をみようと思いチューバッカと母の部屋にいくと、そこには弱腰のチューバッカがいた。
しかし母の眼鏡を口にくわえたチューバッカは
此れ見よがしに、眼鏡をがじがじと噛み母を困らせていた。
母もかれこれ5分くらい奮闘していて疲れたのか
伝家の宝刀“おやつ”を取り出し、「ハウス」を唱えた。
やっぱり強制送還なんだなぁ。
しかし、次の瞬間、
母は丁寧に知育のおもちゃ(えさがすぐには取り出せない仕様)におやつを入れて、小屋の布団を直し、チューバッカにお座りをさせて「いい子なんだから、噛んだらだめよ。ね、よしよし。チューバッカちゃん、おやすみ」と言い、頭をなでておもちゃを与えたのだ。
お分かりいただけただろうか?
ずいぶんと長い前置きをしたが
いかなるときでも、いや、こういう些細な所にこそ人間の本性はあらわれるのだ。
それが例え牙をむけたチューバッカであろうと
「もう金輪際、私に牙をむけるんじゃないぞ!」と捨て台詞を吐きおやつを投げつける私と
「いい子なんだから、噛んだらだめよ。ね、よしよし。チューバッカちゃん、おやすみ」と優しい言葉を投げかけおやつを丁寧にあげて、なんなら軽いベッドメイキングをする母。
母は「ほら、怖くない。怯えていただけなんだよね。」というナウシカであり。私はクロトワにもジャイアンにもなれない悲しきスネ夫なのだ。(スネ夫がいいやつなのは知っているよ…)
生きていても、いわゆる牙をむけてくる人に出会うが
母はこうやって歩み寄り、心で会話をしてきたんだと思う。
ありきたりかもしれないが、母は私の尊敬する人であり、最高の母親である。
ナウシカになれなくとも、私も母のような愛が深い人になりたいものだ。
ま、ナウシカもスターウォーズも最後まで観たことないけどね!!!!!!!
おわり
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