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#11 私の所見の書き方

小学校で教師をしています。
 
今の時期は所見シーズンかと思います。色々な所見の文例集や、「このポイントを押さえれば所見は書ける」といったサイトもたくさんあるので、
わざわざ紹介するまでもないかもしれませんが、「私なりの所見の書き方」を今回紹介してみたいと思います。

(子どもの個人情報などもあるので、文例などではなく、あくまで「所見を書く時の考え方」についてお話したいと思います。)

私が所見を書く時に、意識しているのはシンプルに次の二つです。

①子どもの活動した場面をいかに思い出せるか
②「子どもがやったことの価値」にどれだけ自分が気付けているか

ということです。具体的に説明していきたいと思います。



①    子どもの活動した場面をいかに思い出せるか

これは私個人の価値観でしかありませんが、どれだけ速く、文字数を打てるかということよりも、「子どもとどんな授業をしたか具体的に思い出せること」の方が所見を書くうえで大切だと思っています。

そもそも「なぜ所見がなかなか書けないか」
それは「私たち教師が日々やることが多すぎて、一学期どんな授業、どんな活動をしていたかを忘れてしまうから」だと思うのです。

子どもたちは毎日、どの授業でも、何かしらの新しい発見をしています。

「そういえば、6月に風とゴムの力を使った車をつくって授業していたな」というという場面を頭でイメージできれば、「あの時、あの子とあの子が、協力して実験の工夫をしていたな」などと思い出すことができます。

毎日、毎時間、子どもの活動の記録やメモととることも大切ですが、「メモした文の一覧」全てを所見に書けるわけでもないので、やはりその子がその学期に「一番生き生きとしていた場面」をいかに思い出すかが大切ではないかと考えています。



子どもの活動場面を思い出すために、自分がしていることを4つ紹介します。

(1)週案を読み返す
毎週、教務の先生に提出する学習計画案(私たちの自治体では「週案」と呼んでいます。)を4月の一週目から読み直します。

そうすると「ああ、こんなことやったな」「4月の係決めの時〇〇さんが自分から進んで整頓係をやってくれたんだよな」など、忘れてしまっていたエピソードを思い出すことができます。

(それだけ私たちはいそがしさのあまり、毎日何をしてきたかを振り返れていないのだと思います。)

(2)授業の写真を見直す
子どもの活動写真を見直すこともなかなか効果的です。週案の言葉以上にリアルな場面を思い出すので、その時の子どもの様子と所見に書きたい文章がぱっと頭に浮かびます。

例えば生活科の水遊びで、「色をぬった卵パックに水をいれて太陽の光をあてていた写真」などを見れば、その時の水の冷たさや、子どもの生き生きと表情を鮮明に思い出すことができます。

図工の造形遊びや、体育の練習の様子なども、写真一枚を見れば色々なことを思い出すことができます。

また黒板の板書の写真なども効果的です。子どもの意見が沢山出てきた時の板書などを写真に記録してあれば「ああこんな時にこんないい意見を〇〇さんが言っていたな」といった具合に思い出すことができます。

(3)自分の教室にいく
この方法をやっている先生は結構多いのではないでしょうか。放課後、自分の教室に行って子どもの座席のまわりにかかっているものや、ロッカーを見渡すだけ、でもいろんなことを思い出せます。

机の端からちらっとはみ出したそろばんを見て、「ああそうだ。この子は、自分のそろばんを家から持ってきてみんなに、繰り上がりの計算の仕方を教えてくれたな。」など色々ことを思い出すきっかけが見つかります。

教室に貼っている掲示物や、係活動でつくったポスター、きれいに並べられた雑巾などの何気ないものからも、子どものがんばっている様子が思い出されることがあります。

(4)パソコンのチャット等をみる
これは最近気づいた子どもの活動を思い出すための手立てです。

一人一台のタブレット端末が導入され、子どもが授業中、いろいろ気付いたことをチャットする場面も増えました。

普段発言しない子も、チャットなら意外といろんなことを語っていることがあるので、その子の頑張りや考えを知るよいきっかけになることがあります。

またチャットの中に「検索の機能」があれば、その子の名前を検索することで、チャットに今まで書いてきたその子の考え一度で確認することができます。

このようにして、子どもの色々な場面を思い出すようにしています。



②「子どもがやったことの価値」にどれだけ自分が気付けているか

二つ目に意識していることは、その子がやっていた活動に「どのような意味があったのか」を価値づけることです。

(これは教師自身の思いを書くことになるので、「事実のみ」を所見に記載する自治体の先生方には、もしかしたら参考にならないかもしれません。すみません…)

学校生活や、授業の中で子どもたちがやっていたことを、一歩広い視点から見るイメージで所見を考えてみます。

例えば、「どんなときでも漢字をきれいに書いていました」これだけだと「事実」ですが、
この活動にどんな価値があるかを自分なりに考えてみます。
少し例をあげて紹介してみます。

「ポスターなどもいつもきれいな字で書かれていて、○○さんがつくった学級新聞をクラスのみんながいつも真剣に見ています。」(これは事実)
「字をきれいに書くことは相手にも思いを伝えていくうえで大切なことですね。」(その活動の価値)

「パソコンをつかって色々な市の人口や土地の利用の仕方を比較して調べることができました。」(これは事実)
「調べる時に、色々な情報を組み合わせて判断することは、これから先も大切な力ですね。」(その活動の価値)


このように、「事実」+「その価値」で文章を考えることで、その子のやってきたことの意味だけでなく、将来、その子のどんな力として応用できるかか等も伝えられると感じています。

(自治体や学校によっては、「事実のみ記載」で、こういった文を書いてはいけない場合もありますので、その場合はすみません…)

このように「子どもの活動の価値」を所見の文章に加えることで、「その子にしかない文脈の所見」が書けるような気がしています。



①場面を思い出す  ②その価値を考える

今回紹介したこの二点を意識すると、その子のよい部分が見えてくるような気がします。

そこから文章をどのように構成していくかは、また別の機会に紹介できればと思います。



さいごに話が少しずれてしまうのですが、「所見を書く方がよい、書かなくてもよい」と議論があります。

私は、考え方によっては、年に数回所見を書くことは大切かもしれないと思っています。

「所見を書こと」で、普段から子どもの様子を注意深く見ようと思えますし、表現を工夫することで文章を書く練習にもなります。また学習を思い出すことで自分自身の指導の振り返りにもなります。

いそがしすぎて、「子どもの見取り方」「文章の書き方」「授業の振り返り」などの研修を受講する時間はなかなかとれないですが、このように所見を年に数回、真剣に書いてみることで、自分の授業改善や、考え方の整理の時間になっているような気がしています。

(これはあくまで私のライフスタイルに合ったやり方というだけで、決して教師の仕事を増やすことを推奨しているわけではありません。所見を書かずとも、毎日きちんと子どもの行動や授業を振り返っている先生方もたくさんいると思います。)


ここまで長々と自分の考えを語ってしまいましたが、私も今日から本格的に所見を書かねばと思っています…

暑い日、雨の日で体調も崩しやすい季節ですので、先生方も無理されず、お体に気をつけながら残りの一学期をお過ごしください。

※ちなみにこの後、所見を書きながら感じたことはこちらで紹介しています。

最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。