コズロフ博士の、忠実なる番人

 視界を埋め尽くす吹雪は、未だ止む気配がなかった。辺りにはノヴォ・ロシア正規兵の死体が7つ。まだ生きているものは3人。作戦は、完全に失敗していた。

 アレクセイは、目の前にそびえる機甲鎧を見上げていた。それは彼の知るどんな機甲鎧ともかけ離れており、摩耗した機械部品の塊のように見えた。白い雪原に立ちはだかる、暗灰色の巨人。それは、背後の研究所跡を守る番人のようであった。

 かつては生体工学の最先端であったその研究所は、その研究成果と共に、一夜にして雪原に呑まれた。数十年前のことであった。

雪原の下に埋もれた研究成果を、いま再び発掘せよとの国家プロジェクト。アレクセイが、その栄光ある第一陣に選ばれたのはつい10日前の事であった。それがこんなことになるなんて。番人の虚ろな瞳が、雪原に這いつくばるアレクセイを、なおも睨みつけていた。

 せめて本部へ生きて帰らねば。アレクセイは巨人に背を向け、走り出した。

【続く】

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