見出し画像

もみの木、わた雪そして星々~12月の心象風景~            

              ☆
その1  もみの木

わたしのおぼろげな記憶


小さな鉢植えのもみの木

赤色のリボン

小さな人形

玉虫色にあやしく輝く飾り玉

もみの木の上には星


薄暗い部屋のなかで

ぽぅーと光を放つもみの木


わたしは眼を開けながらも夢の中にいた


母と二人で飾り付けしたツリー

まだ母のぬくもりがあったころ

               ☆☆

その2 わた雪


スキー宿の夜

ワイン、ビール

男と女たちの賑やかな声、弾ける笑い


窓の外は月も星もない闇

薄白い雪あかりの地面

樹々の隙間を静かに雪が舞い続ける


都会でわたしを待っているであろう女への思いと

ひと月前に出会った女への熱情が交差する

女からもらった深緑色のセータの襟元から

外の雪の冷たさが刺すように入り込んだ


窓が曇る

胸が痛い

わた雪に埋もれるもみの木

                 ☆☆☆

その3 ほし

郊外の高台にある住宅地

外構を飾るイルミネーション

樹々に無数の小さな星が灯っている


坂道を上りながら家路につく

ケーキとプレゼントを持つ手に夜風は冷たい

幼子たちの心のなかにはサンタがいる


ふと遠い過去が蘇る

あのとき女はサンタを待っていた

わたしは背を向けた


漆黒の空は雲に覆われ星もみえない


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?