![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124932352/rectangle_large_type_2_73b14d64585a750a2534a1be8fd18d8d.jpeg?width=800)
もみの木、わた雪そして星々~12月の心象風景~
☆
その1 もみの木
わたしのおぼろげな記憶
小さな鉢植えのもみの木
赤色のリボン
小さな人形
玉虫色にあやしく輝く飾り玉
もみの木の上には星
薄暗い部屋のなかで
ぽぅーと光を放つもみの木
わたしは眼を開けながらも夢の中にいた
母と二人で飾り付けしたツリー
まだ母のぬくもりがあったころ
☆☆
その2 わた雪
スキー宿の夜
ワイン、ビール
男と女たちの賑やかな声、弾ける笑い
窓の外は月も星もない闇
薄白い雪あかりの地面
樹々の隙間を静かに雪が舞い続ける
都会でわたしを待っているであろう女への思いと
ひと月前に出会った女への熱情が交差する
女からもらった深緑色のセータの襟元から
外の雪の冷たさが刺すように入り込んだ
窓が曇る
胸が痛い
わた雪に埋もれるもみの木
☆☆☆
その3 ほし
郊外の高台にある住宅地
外構を飾るイルミネーション
樹々に無数の小さな星が灯っている
坂道を上りながら家路につく
ケーキとプレゼントを持つ手に夜風は冷たい
幼子たちの心のなかにはサンタがいる
ふと遠い過去が蘇る
あのとき女はサンタを待っていた
わたしは背を向けた
漆黒の空は雲に覆われ星もみえない
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?