見出し画像

グリア細胞 まとめノート

 こんにちは、すい@医学生です。
 今回は「脳とグリア細胞」(工藤佳久)という本を参考にグリア細胞についてまとめていきます。雑談感覚で読んでいただけると幸いです。

 いきなりですが、脳内にはどんな細胞が存在しているかご存じでしょうか?脳内の細胞の割合は、

  神経細胞 10%
  グリア細胞 90%

なのです。
 よって、今回はグリア細胞が主役になっています。


1.脳細胞の種類

 脳細胞は主に5つの種類があります。

  ①神経細胞
  ②オリゴデンドロサイト(希突起神経膠細胞)
  ③アストロサイト(星状神経膠細胞)
  ④ミクログリア(小神経膠細胞)
  ⑤上衣細胞

 このうち②~④(⑤が入ることも)の細胞たちをまとめてグリア細胞と呼ぶのです。
 さらに、このグリア細胞たちは二つに分類されます。

  ①マクログリア   (オリゴデンドロサイトとアストロサイト)
  ②ミクログリア

 これは大きさによって分類したものです。
 では、何の大きさかというと、細胞ではなく細胞体の大きさで分類しているのです。ミクログリアは細胞体が小さく、ほとんど突起しか見えないので(そのため、線状に見えます)、「ミクロ」と名付けたのです。
 つまり、

  小さい細胞体のグリア細胞=ミクログリア

ということですね。
 個人的には、これは非常にわかりづらいと思います。なぜならミクログリアの機能が何のなのか名前からは類推できないからです。
 大きさではなく、機能から名付けてほしかったものです…

 ところで、「グリア」という言葉の意味についてですが、

グリア細胞=膠細胞=接着剤細胞

脳とグリア細胞 工藤 佳久

と言う意味だそうです。
 グリア細胞が見つかった当時は、どんな機能があるか特定されておらず、ただニューロンを接着しているだけだと考えられていたことからこの名前が付いたそうです。

 ここからは余談なので、飛ばしていただいて構わないのですが、

 実際に、グリア細胞は神経伝達を行わないのです。
 しかしながら、2008年に緑蛍光タンパク質(GFP)でノーベル化学賞を受賞したロジャー・チェン先生が蛍光カルシウム指示薬を作り、Caの流れを可視化することができるようになったことで状況が変わりました。

 どういうことかと言うと、その蛍光カルシウム指示薬とCaを脳に入れてみると、グリア細胞が光ったのです!
 これはグリア細胞がカルシウム輸送に関わっていることの証明になり、これを機にグリア細胞の機能について解明されていきました。

脳とグリア細胞 工藤佳久

 また、グリア細胞の発生についてですが、

  神経幹細胞→神経細胞
 これが十分に増殖すると、
  神経幹細胞→グリア幹細胞→アストロサイト、オリゴデンドロサイト

脳とグリア細胞 工藤佳久

と変わることで、発生するそうなのです。
 したがって、神経細胞とグリア細胞は発生学的にも近い存在といえるでしょう。

2.神経細胞

 神経細胞の構造
  脳表面に細胞の核を持ち、軸索を脳の内部へと伸ばす。
 働き
  Naを介して電気信号を体中に伝える。

 脳の構造は、皮質と白質に分かれますが、

 ①皮質
  黒く見える細胞体(核がある部分)が脳表にあることからこの名に
 ②白質
  脳の内部にある軸索(脂質)は白く見えるためこの名に

と神経細胞の構造から脳のマクロの構造へとつなげることができます。

 ちなみにまた余談ですが、

 フグ毒(テトロドトキシン)はこのNaチャネルを阻害するので、神経細胞が障害されて手足や呼吸筋などが動かなくなり、窒息死を起こしてしまうのです。

 ここで、触れなければならないことは、神経細胞には「跳躍伝導」というものがあることです。
 先述のように、電気伝達はNaが拡散していくことによって伝わっていきます。ただ、そのまま軸索の中を拡散するのではスピードが遅いですよね?

 そこで、「跳躍伝導」を行うことで新幹線並みの速度で電気伝達を素早く行っているのです。その「跳躍伝導」を担っている細胞がオリゴデンドロサイトと言う細胞です。

3.オリゴデンドロサイト

 まず名前の由来ですが、

 オリゴ=少ない、希れ
 デンドロ=突起、尖った部分
 オリゴデンドロサイト=突起の少ないグリア細胞=希突起膠細胞

 次に、神経細胞の電気伝達の仕組みについてですが、

  ①刺激によりNaが細胞内に流入する。
  ②そのNaを刺激に隣のNaチャネルが開口し、Naが細胞内に流れ込む。
  ③これを繰り返すことで、遠くまでNa濃度を落とさずにNa刺激を伝えることができる。

と次々にNaチャネルが開口することで信号を伝達しています。しかしながら、これではすぐ隣にNaチャネルが必要で、それぞれが開口する時間を待たなければならないので、時間がかかります。

 そこで、オリゴデンドロサイトの役目なのです。

 オリゴデンドロサイトの働き
  絶縁体であるミエリン鞘(髄鞘)を軸索に提供する。
 →Na濃度が減衰することなく、ある程度離れた部分まで拡散する。

 これによって、神経伝達を早く行うことができるのです。
 ちなみに、オリゴデンドロサイトが髄鞘を提供しているのは中枢神経だけです。交感神経線維には髄鞘は存在せず、末梢神経ではシュワン細胞という細胞が代わりにこの役目を担っています。


4.オリゴデンドロサイトとシュワン細胞のミエリン鞘の違いは何でしょうか?


最も大きな違いは、 
 オリゴデンドロサイト=希突起膠細胞(突起が少ない)
 シュワン細胞=乏突起細胞(突起が無い)

ということです。
 つまり、オリゴデンドロサイトは突起によって髄鞘を提供している一方、シュワン細胞では細胞体自体(正確には一つの突起?)が髄鞘になっているのです。
 
 さらに、オリゴデンドロサイトは1つの細胞につき、いくつかの神経細胞に突起を伸ばしています。
 つまり、同じ情報が別々の神経細胞をたどる場合に、情報を統括し、一つの情報としていくつかの神経細胞の情報を統合している可能性があるのです。

 また、髄鞘はミエリン鞘とも言いますが、このミエリン鞘の断面をご存じでしょうか?

 オリゴデンドロサイトの突起がぐるぐると神経軸索に巻き付き、バウムクーヘンのように何重にもなっているのです。

脳とグリア細胞 工藤佳久

 これはシュワン細胞も同様に何重にも巻き付いているようです。
 そして、このミエリン鞘とミエリン鞘の間をランビエ絞輪といい、Naチャネルが集合しているのです。
 これは生理学でも有名な話なので聞いたことくらいはあるかもしれませんね。

 


5.アストロサイト

 アストロサイトは未だにはっきりと解明されていない働きも多いのですが、

 アストロサイトの働き
  ①脳実質を突起で支えている。
  ②血液脳関門を形成している。(BBBの形成)
  ③CaやKといった電解質、栄養を運んでいる。
  ④グルタミン酸など神経伝達物質を分泌する。

 などの働きがあります。

 特に、④のグルタミン酸は神経伝達物質の一つで、これは神経から別の神経へと興奮させることができます。
 神経のみからしか分泌されないと考えられていましたが、アストロサイトも神経伝達に関わっているようなのです。

 また、①では脳実質を支えているとありますが、これは脳梗塞が起きたときに顕著に効果が発揮されます。
 アストロサイトは神経細胞に比べて、虚血に強いので、脳梗塞が起きてもしばらくの間は脳内で生存して、脳実質を支えているのです。

 ちなみに、オリゴデンドロサイトは逆に虚血に弱いと言われています。そのため、多発性硬化症などの脱髄疾患があるくらい繊細な細胞なのです。

 ところで、アストロサイトに選択的に発現するアストロサイトマーカーに中間径フィラメント蛋白質のGFAPがあります。
 これは脳が障害を受けた時に、細胞内浮腫が生じることで、肥大した反応性アストロサイトになってGFAPの発現が異常に上昇するのです。

6.ミクログリア

 ミクログリアの構造
  グリア細胞の10%を占める。
  不活性型:突起が多い。(損傷が周りに広がらないようにするため)
  活性型:突起が消失し、細胞体だけになり丸く見える。貪食を行う。
 ミクログリアの働き
  マクロファージと発生も働きも同様。(マクロファージは死んだ細胞や貯まったゴミを貪食し、掃除してくれる細胞です。)

 また高坂新一先生によると、

 ミクログリアに特異的に存在する蛋白質であるIba1はマクロファージにも存在する。

ことが分かっています。ちなみに、Iba1抗体はミクログリア活性型でないと陽性にならないようです。
 つまりは、「貪食できる形態の時にIba1抗体が陽性になる」という点で共通しているのです。

7.上衣細胞

 脳室の周りを取り囲んでいる細胞で、脳室と脳実質を隔てています。グリア細胞に分類されるときもありますが、別に上衣細胞として分類されることもあります。


8.まとめ

  ①神経細胞
  ②オリゴデンドロサイト(ミエリン髄鞘を作る)
  ③アストロサイト(BBBや骨格を作る、グルタミン酸の輸送)
  ④ミクログリア(マクロファージと同じ働き)
  ⑤上衣細胞(脳室を囲っている)

 最後に、参考にした「脳とグリア細胞(工藤佳久)」という本の紹介です。ぜひ読んでみてください。

・今回触れなかったグリア細胞のより詳細な機能が分かる!
・発見の経緯や脳細胞の歴史が学べる!
・対話形式で読みやすい!

 他の記事もどうぞ。






 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?