ボルダリングジムでブチギレたあの日

昨日の続きです。

書いていて自分でもこんなクライマー本当にいるのかよ、とも思ったんですが実際いたし、思い返してみると刑事事件を起こしたクライマーとか別のベクトルでやばい奴もいて、ソロスポーツ故にそんな人種が集まりやすいのかな、と思いました。個人的な因果な可能性もありますが。

ある日ジムへと足を運ぶと、見かけない顔があったんですね。若くて体格が良くて、一目見て強いクライマーだとわかりました。

既に交流したクライマーによると、普段通っているジムがクローズしたとかでここに流れてきた、と言うことです。

まぁだからと言って何が変わるわけでもないし、軽く挨拶だけしていつも通り登ってたんです。そしたらですね、そいつが突然気が狂ったように踊り出したんですよ。なんかやばい地縛霊でも取り憑いたんか?ってくらい脈絡もなく。

なんで踊り出したのかは今でもわからないし、わかりたくもないんですけど、近くに可愛い女子クライマーがいたので多分求愛ダンスみたいなものだったんじゃないかと思います。人間にそんな本能あったっけ?って思うんですけど、前世がハエトリグモだったとかそういう感じかもしれません。

で、気づいたんだけど、こいつめちゃくちゃうるさいの。

なんか今度は大声で週刊少年ジャンプの新連載についての感想を口にしてるんですよ。それで少しでも反応する人がいたらすぐさまロックオンして強制的に話しかけるっていう、目を合わせたら死ぬ妖怪みたいなことしてんの。

やべぇ奴が流れてきてしまったな、と。ちょっとガチでネタにしちゃいけない感じなのかなとも思ったんですけど、登りを見るときちんとオブザベーションして設定通りの綺麗なムーブだし、強いし、それだけなら見惚れるレベルなんですよね。

クライマーとしてのインテリジェンスと、社会に求められるインテリジェンスは必ずしも一致しないし、比例すらもしないんだな、と思いました。

それでも馬鹿のことを気にして登らないのも勿体無いんで「どうかこいつが常連になりませんように」って祈りながら登り始めたんです。壁が貼り変わる直前で宿題もあったんで、そっちに集中しようって感じで。そうしたらそいつが、

「ガンバッ!ガンバッ!ガンバッ!」

ガンバ連打ですよ。しかも変に緩急をつけて明らかに煽ってる拍子なんです。例によって女子クライマーが近くにいたんで、彼女を笑わせて気を引くためにふざけていたのかもしれません。

「ガンバッ!サンバッ!ルンバッ!」

マジで腑が煮え繰り返ると言うか、怒髪天を衝くと言うか、日常生活ならともかくボルダリングに置いてここまで腹が立ったのは初めてでしたね。

で、その空気を察してか周りも「やっべ」みたいな空気感になるじゃないですか。女の子も多分苦笑いをしていたんだと思うんですけど、それでも馬鹿は止まらないんですよ。

「ガンバ!お前が積み重ねてきた全てをそのホールドにぶつけてやれ!」

ってさ、今ハマってる週刊少年ジャンプの新連載の影響なのか知らんけど、糞みたいな台詞を吐いたんですよ。核心のゴール取りで。

もうこんなの応援じゃないし、馬鹿が目立つために渾身のトライを利用したようなもんなんで、流石に怒りで集中力が失せちゃって、不作法ですが壁をぶっ叩きながら降りましたわ。

(引用元:漫画「ドラゴンボール(完全版)」20巻)

んで、それを見ても出てきたのは「もう一回遊べるドン」ですからね。この空気感でこいつすげぇなと逆に感心しましたよ。メンタル鋼の錬金術師じゃん。

僕も大人なんでその場ではそれ以上声を荒げたり、掴みかかったりはしなかったんですけど、その直後からはそいつが見えていない体で過ごしたし、相手する人間も日に日に減って拠り所がなくなったのか、いつの間にか見なくなりましたね。

なんか誰かのインスタだかYouTubeだかで映ってた気もするんで、多分別の場所で楽しくやってるんだと思います。

僕はこいつが前に通ってたジムが潰れた原因はこいつの存在だと踏んでるんで、クライマー諸君はこのキングボンビーがホームジムにやってこないことを祈りながら震えて眠れ。

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