憂鬱・ピンセット
日に日に不安が募るような日々を送っている。充実した社会との共存を実現している友人たちとの格差に慄き、SNSはほとんど見ることができない。
1日5時間のアルバイトを4月からほとんど毎日続けている中、昨日今日と珍しく2連休だった。しかし天気はすぐれず気分も上がらず、寝たりスマホを流し見したり、タバコを吸ったりと、そんな1日だ。
実家も特段穏やかな居場所というわけでもないし、卒業と同時に目標も現在地も見失ってしまったというわけ。
そんな自分は、平日の昼間からスネの毛をピンセットで丁寧に抜いてる。家族が出払ったリビングで、昼間から、しかも成人した人間が。しかしこんなに静かに集中して何かをしていることは本当に久しぶりで、気づけば1時間ほど経っていた。
抜いてはティッシュに置き、抜いてはティッシュに置く。ピリッとする小さな痛みに反してキレイになっていくスネ。なんだろうこの気持ち。このシンプルな一連の動作に、トレーニング後の筋肉痛のような、妙な心地よさを覚えていた。
何かを書いたり作ったり、最近はほとんどそういう気持ちが枯れ果てていたのに、どうしてもこの状況を書き残しておきたいという使命感。少しずつ頭に湧いてくるイメージ。
『鬱には筋トレ』と、さまざまな人が発信しているが、本当は『鬱にはピンセット』なのかもしれない。
実際、実家に戻ってから2ヶ月くらいは毎晩ランニングしたり歩いてみたりしていたが、頭の片隅にずっと「憂鬱なままマッチョになったらどうしよう」という、わけの分からない不安を抱えていた。
走れる元気があるだけマシだったのかもしれない。しかし、走っても走ってもしがみついてきて離れない不安の塊は、いつしか身体にまで不調を及ぼし始める。
振り切ることができないなら、根本から抜く。もしかして、真理に気づいちゃったのかもしれない。
またどうしようもなく落ち込んだときにスネの毛をピンセットで抜いてみて、どんな気持ちになるのか、試してみようと思う。
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