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私は現役バニーガール

私は現役バニーガールである。そして何もかもが源氏名以外は個人情報は全て秘密のお店で働いている。お店には指名制度もなければ、連絡先交換はNG、もちろん写真撮影もお触りも一切禁止されていて、破れば客は出禁。女の子もクビ。夜のお店にしてはめちゃくちゃ厳格だと思う。指名がないから女の子たちは必ず一時間交代で客席をランダムに回る。キャバクラ版回転寿司みたいな感じ。私はそんなお店で伝説のバニーガールになり、そして現在も現役バニーガールとしてばりばり働いているのである。

今のお店は最終的に自分が落ち着いた店で、私は元々キャバクラで接待女をしていたから、接客自体は慣れている。
大抵が過去の経験則からの使い回しで、「何歳に見える?」と聞かれたら、10歳くらいサバを読む。「それは盛りすぎ」と言われれば、「首見てるんですよ。首って一番年齢が出るので。お客さん、首めちゃくちゃ綺麗だから若く見えますよ!」と言えば納得の上で拍手喝采。でもこれってめちゃくちゃ嘘。基本的には首に皺なんてできない。首が老けることなんてないのである。
時計とかもそう。今の時代でアナログの時計をしてる人って大抵が高価なファッションとして取り入れているから絶対に時計を褒めること。これは徹底的に。すると一気に客に気に入られるっちゅーわけです。水商売が向いてる、向いてないって論点で話す人がいるけども、「人が何を求めて店にやってくるのか」という根本的なものをきちんと理解していれば、後はお安い御用、誰だって人気のキャストになれる。

そういうわけで、私は伝説のバニーガールになったわけである。

私はホステス業として、本当に沢山の人を見てきたけれど、一人、とても不思議なお客さんのことがあまりにも印象的で、日常的にふと頭によぎることがある。あの人は一体なんなんだろう?
そのお客さんは大抵お店オープンの30分後くらいにやってきて、必ず一時間で帰って行く。
お酒はいつもハイボールを頼むのだが、問題はここにある。というのも彼はハイボールを飲む前にカバンから青い食紅を取り出してそれをグラスに混ぜるのだ。薬物か?と思ったけれどどうやら本当に食紅らしく、一体なんのために、と思う。「青色があると落ち着く」と言うが、では一体普段はどんな生活をしているのだろう。色々聞いてみても「落ち着く」しか答えず、それ以外のことは話したがらない。
店長も他のバニーガールの子たちも見慣れているせいか、特に興味を示さない。どう見ても異質な光景であるはずなのに、ここに居る私以外の人たちはそれをごく自然に受け入れ、気にしていないのだ。
一度店長に聞いてみたことがあるが、明らかに目つきを変え「詮索するな」とのことだった。だから私は他の女の子にこそっと聞いてみたら、彼女たちも目つきを変えて「知ってどうするの?」と言った。
長いことホステス業をやってきたけれど、お客さん以前に、みんなが何だか異様な気がしてならない。このバニーガールのお店には何か大きな隠し事でもあるのだろうか?

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