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【令和4年度】一級建築士 設計製図合格発表の総評と所感

こんにちは、かねっつです。
本日もnoteをご覧いただきありがとうございます!

本日12月26日は、令和4年度 一級建築士の合格発表日でした。


合格された方々、本当におめでとうございます!!
この試験を受けるまで、多くの犠牲をしてきたと思いますが、ようやく荷が下りた気持ちだと思います。特に角番だった方、辛い思いをしてきたと思います。本当によく頑張りました。この経験をぜひとも今後の人生にも役立てるように活躍していってください。微力ではありますが、今後のご活躍を祈念いたします。

そして惜しくも合格に及ばなかった方、まずはお疲れ様でした。
この1年、お金も時間もフルで使ってきたのに…と後悔の念があるかと思います。まずは悔しい気持ちを本気で感じてください。長くても2日は自己反省するべきだと私は思います。そして3日目からは、『来年こそ絶対合格する』という意識表示を掲げてください。全ての試験は、メンタル面で受かります。(もちろん日々の勉強も大事です)
ナゼ、一級建築士が欲しいのか。ただ試験に挑むのではなく、取得する理由を明確にしていない限り、どれだけ頑張っても気持ちで負けてしまいます。私は、常に一級建築士を取った自分の未来像を思想していました。強い意識を持つことです。来年は必ず勝ち取ってください!!応援しています。

前置きが長くなりましたが今回は、【令和4年度 一級建築士設計製図の合格発表を終えて感じたこと】を綴ります。
私の受講生さんで受かった人、落ちた人の違いや、試験元からの総評を見て感じた私個人の所感も書き留めますので、是非参考にしてください。

※この記事を読み終えるのに、約7分かかります。

■合格率は、2年連続の9%台

「今年も総合合格率、10%いってないのかよ!!」
第一声に放った言葉です。昨年も9.9%でした。設計製図の受験者10,509人に対して合格者数は3,473人。合格率は33.0%です。昨年は35.9%なので▲2.9%となりました。年々、合格率が下がっています。
今年は学科の試験が割と簡単な方(というか、ほぼ過去問に近い問題ばかり)でした。その点、設計製図で難しくして合格率を調整しようとする試験元の考えが見え見えです。これには本当に腹立たしい。。。
建築士法の改訂で、実務経験がなくても受験できるようになってからというもの、22~25歳の受験者が多くなっていることも分かります。その内の約71%が大学生というのも正直驚きです。これだけ人気の試験なのに、狭き門です。やはり実務に直結した採点なのだと感じました。

■ランクⅢの理由は、基礎的な不適合

今回の採点ポイントは大きく分けて2つです。

  1. 貸事務室の面積が基準以上であるか。

  2. 地盤条件を踏まえた基礎構造になっているか。

やはりこの2点が合否を分ける大きな採点項目でした。他にも『階段の不成立』『避難経路』『道路高さ制限』も挙げられています。
『階段の不成立』は、塔屋が1ヶ所しかないのに塔屋に行く登り表記の階段が2ヶ所あったり、単純に上下階の位置がズレている不整合が考えられます。(上下階の不整合はランクⅣとも考えられる)
『避難経路』は重複オーバー(とくに最上階の無窓室からの避難)が主な失格要因かと思います。あとは単純に避難経路の計画欠落(壁などで経路を遮ってしまった計画)が考えられます。2直(2以上の直通)の階段がない場合は、法的な欠落なのでランクⅣと考えられます。
『道路斜線制限』は標準回答例を見ると、かなり細かく書き込んでいます。昨年の集合住宅から重要視されていた道路斜線制限ですが、今年の課題では庇の出寸法を考慮するか否かまで細かく書いてありました。日射遮蔽に配慮したいからといって、闇雲に庇を計画しても良いわけではなくなってきています。
採点結果はランクⅢが32.4%、ランクⅣが28.5%と、今年もランクⅢが目立ちました。やはり課題条件の未達成構造不適格ランクⅢの主な内容になっているのだと感じます。

■合格した受講生の復元図面

私が担当した受講生さんの内、半分が合格しました。本当に嬉しい限りです。(正直、自分の合格より嬉しい。)
ですが、残り半分が合格できなかったのも事実です。その点については復元図面と講師の方々のご意見を伺って改善していきたいと思います。

ランクⅢやⅣになりやすいと不安になっていた部分で見事合格した項目を簡単に解説したいと思います。

以前の記事で、どういったものがランクⅢやⅣになるかを考察した記事をまとめています。ぜひコチラもチェックしてみてください。

  • 南側ではなく北側を主出入口としてしまったケース

課題条件にも『駅からの動線に配慮して~…』といった文言が記載されていないため、北側主出入口でも問題ないのではないかと判断していました。実際に合格した受講生さんでも、北側を主出入口とした計画がありましたので、とくに問題はありませんでした。

  • 2.5mのベタ基礎を描いて下部に斜線で地盤改良と描いたケース

受け持った受講生が1番多く作図し、講師としても合否の判定に頭を抱えたケースです。今回は表層か柱状か明確に表現していない『地盤改良』と表現することで、合格になった受講生さんは多いです。標準回答例でもコンクリート杭を描いているため、減点ではあったと思いますが、ランクⅢにはなりませんでした。

▲合格した受講生が描いた地盤改良の作図。基礎を作図してその直下を地盤改良と明記している。
  • 屋上庭園のスラブを200mm下げていない断面図の表現としたケース

私の採点では、『バリアフリーが重要視されているのでスラブをFLから200mm下げる必要がある。』とお伝えしました。受講生の中でも屋上庭園を断面図で表現した人は、スラブを下げずに描いていたので、厳密に言えば段差を考慮していない計画に見られます。ですが、細かい部分なので採点官もそこまで採点していなかったようで、ランクⅢにもならないようです。

余談ですが、標準回答例を見ると階段に引き出し線で【階高、段数】の表記がありました。バリバリの『バリアフリーに配慮しているよ。』というアピールが見受けられます。試験元の採点ポイントには出ていませんが、来年の試験対策では重要視したいところです。

▲標準回答例より。バリアフリーに対応していると明確に記述している。
  • 北側および南側に延焼ラインを記載していないケース

あるときSNSで騒がれていた法的な重要失格項目。詳しくは、前段でご紹介した私の記事をご覧ください。
結論から言うと、道路境界線に延焼ラインがなくても合格でした。また標準回答例にもそのような回答は無かったので安心しました。
ネットの情報には流されないように注意しましょう。。。


ご紹介が少ないですが以上が合格していたケースです。
また惜しくも不合格になってしまった受講生さんの復元図面には以下のようなものがあります。

  • 貸事務室の面積が3,000㎡未満

  • 基礎スラブがなく、1FLから杭が出ている

  • 基礎構造の表現が薄い

  • 最上階の貸室a~bが採光無窓となっている→重複距離に影響?

  • 避難経路が居室内通過となっている

  • 最上階のシェアオフィスの貸室が狭く、ラウンジが広すぎる

  • 岡立柱がある

※あくまで当日の合否結果から推測した所管です。決定的な理由ではないため、参考の一部としてください。

今後の講師会議でも問題点や改善点をまとめていくと思います。詳細がまとまったら可能な範囲で共有したいと思っています。

■印象度のいい図面は合格率アップ

受け持った半分の受講生さんが合格しましたが、共通して思うことは『作図の書き込み具合が密である』ということです。多少のミスや誤字はあります。中には復元採点会でランクDをつけた受講生もいます。ですがその受講生さんは、字がきれいで線の濃淡もキレイです。要するに印象がいい図面であったということです。
限られた時間の中で初めて見る課題なのですから、出来上がった成果物に不安を抱くのは当たり前です。その部分を上手く誤魔化すには、印象度が良くなくてはいけません。今回合格した受講生さんは、印象度が良かったことが合格した共通点だといえます。


最後まで、ご覧いただきありがとうございました!

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