見出し画像

なぜ銅の価格がここにきて上がってきているのか?

こんにちは、お金が入るでかねいりです。

5月21日の日経新聞の記事の中で「銅の国際価格が20日、一時1トン1万1100ドル台となり最高値を2年ぶりに更新した」というものがありました。

2020年には、1トン5000ドルだったこと考えると、倍以上になっています。

なぜ、銅の価格が上がっているのかについて調べて考えたことをお伝えできればと思います。


■銅の相場(価格)の推移

「銅の相場の推移」ダイヤモンドオンラインより

2000年は2000ドルを切っていた銅価格ですが、2005年あたりから価格が急上昇。しかし、リーマンショックの影響で急降下。その後、新興国向けの需要が高まり、再び価格が上昇。しかし、中国景気の低迷とともに、価格は減少傾向に。コロナ後には、経済の回復期待から、再び価格が上昇。その後、若干下降しますが、ここにきて上昇し、最高値を出したという経緯です。

ちなみに金や銀はというと?

「金の相場の推移」三菱マテリアルより
「銀の相場の推移」三菱マテリアルより

銅とは、違った推移を見せています。

その理由は、特性の違いです。
銀や銅は、工業向けの材料という位置づけで、その用途の需要が高まる、もしくは高まりそうとなったときに価格が上昇するという傾向があります。
一方で、金は、資金運用の面が強く、安全資産と見なされた際に、価格が上昇する傾向があります。

■なぜ銅の価格が上がっているのか?

今回の銅の価格の上昇は、中長期的に銅の需要が増大するとの市場の見立てからと言われています。

ひとつは脱炭素社会への移行に対する見立てです。
銅は電気を通しやすくEV(電気自動車)の心臓部にあたるモーターやワイヤハーネス(組み電線)などに銅素材が使われます。EVは、ガソリン車の約4倍の銅が必要に。また、太陽光発電と風力発電でも大量の送電ケーブルに銅が使用されます。

次に生成AIも需要増大も影響を与えると言われています。最近、生成AIの開発のニュースは途切れることがなく、開発競争に拍車がかかっています。そして、生成AIの開発に欠かせないのが、データセンター。世界各国ではAI普及を見込んでデータセンターの増設が進んでいます。データセンターへの電力供給などに銅を使った送電ケーブルが大量に必要になります。

■銅の価格の上昇により影響を受けたのは?

コロナ前に止まっていた建設需要が、コロナ後に再開となり、電線やケーブルの需要が急増。その結果、電線・ケーブルの大手メーカー4社は、2023年8月~12月にかけて新規の受注を停止するという事態が起きました。

上記の状況に拍車をかけたのが、銅の価格の高騰でした。銅の価格が高騰したことにより、電線・ケーブルメーカーは、余分な在庫が出ないように生産量を減らしたいという思惑が働きました。

電線・ケーブルメーカー業界の独特の「商習慣」で、仕入れた時の銅の価格ではなく、受注した際の銅の価格で販売するというものがあります。

つまり、仕入れた時の銅の価格が高く、受注した際の銅の価格が低くなった場合、過剰な在庫を持つことで大きな損失が出るリスクにつながってしまいます。

電線やケーブルが不足するという流れは、改善されつつありますが、今後も銅の価格次第で、また不足するということが起きかねない状況と言えそうです。

■銅は新時代の石油の存在に

世界各国による囲い込みや争奪戦も始まっています。インドネシアは、2023年に未加工の銅鉱石の輸出を禁止する方針を打ち出しました。今後の銅相場は、石油と同様、世界景気や地政学リスクに揺さぶられる可能性もあります。

そういった意味から一部では、新産業の成長に不可欠な素材として銅を「新時代の石油」と呼ぶ向きもあります。

経済における銅の重要性が高まっていることがよくわかります。
今後の、銅の価格の動向に注目していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?