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少数株主としての戦い(利益相反行為の疑い)⑩

1.前回のサマリ

みなさま、こんにちは。前回、「少数株主としての戦い(検査役選任の申し立て)⑨」で、裁判所に検査役選任の申し立て(第358条)を行い、受理がなされ、相手の主張を聞くこととなりました。相手が疑惑に対しての説明と逆切れをしてきました。それに対して、まだ疑惑が晴れておらず、追加資料を裁判所を通じて提出するよう依頼しました。

2.申立ての概要

代表取締役のX氏が、会社の不当支配を目的として、会社が自己株式として買い取る前代表者の約8,000株を、X氏自身の株を買い取っており、株主総会議事録にX氏が買い取るような決議もなかった。さらには、自己株式を買い取る資金として、会社が所有する土地を売却して捻出するという事実があったにもかかわらず、X氏が買い取ったことから、会社財産を流用して購入した疑いがあり、そのX氏が取得した株の有効性と調査を申し立てるものです。それを裏付ける決定的なものとして、偽造した株主総会議事録を開示してきたこと、ありもしない株主総会の議事録を開示してきたこと、偽造した株主買取通知書を送付してきたことです。

3.相手の答弁書(逆ギレ)

裁判所から代表X氏へ通知されてから、答弁書が送付されました。
弁護士からは、諦めモードで、やはり不正行為が認められませんでしたとの回答がありました。
それは「飛び地である会社所有土地Aを4,000万円で売却したのは事実であり、しかし、大量の商品を輸送するための駐車するスペースがどうしても必要であったため、土地売却資金の一部から自己株式として株主より買い取り、同時期に、残りの資金2,700万円で会社に隣接する代表X氏が所有する土地Bを購入したのことである。それでも会社に5,000万円近い現預金があったが、幾分か仕入れのための流動資産として残しておきたいとのことで、X氏が前社長より8,000株を購入した」との主張です。説得力あるような文章ですが、よく考えてみるとやはりおかしい。
もっともらしい理由をつけて、「誠意ある対応をしましたが何か?」、そして最後は「このような零細企業に検査役の申し立てをするとことは、別の目的があるとしか解しえない」といった内容で、逆切れでした。(笑)しかし、会社法に詳しい方であれば、まず疑わしい行為がこの主張からわかるはずです。弁護士は諦めてましたけど、私はそこで諦めません。

4.会社法356条(利益相反行為)

取締役が会社と売買、贈与、貸付・借り入れとった取引を行う場合、会社の承認(取締役会、株主総会等)の承認を必要とします。普通に考えれば当たり前のことですが、権限のある取締役が勝手に会社取引を行って、取締役だけが有利な取引となり会社財産を無為に費消されてしまうため、当然といえば当然です。会社法の多くは民事上の責任を負うものなのですが、この会社に損害を与えると、特別背任罪(会社法960条等)に該当する可能性もあり、非常に恐ろしいことなのです。なお、特別背任罪は、通常の背任罪とは異なり、会社の取締役に対して特別に課している犯罪であり、法定刑が「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」と重罪であることがわかります。

この、利益相反行為ですが、相手の責任追及の一つの手段となりますので、取締役と会社の取引を探していくと意外とスムーズに発見できるのではないでしょうか。

5.相手の利益相反行為の疑い

話は、相手の反論にたいして、代表X氏が所有する土地Bについて、会社へ売却していることが、相手の反論からわかりました。会社に隣接する土地をなざ、代表取締役X氏が所有していること自体、極めて不自然ではあったのですが、土地Bの売却について母親は株主として承認したことない上、そのような事実も知らなかったうえ、総会がほとんど開催されていなかったことから、そのような決議もあるわけもないのです。よって、この承認を得た証拠の提出を裁判所を通じて、依頼しました。さらに、相手が悪さをしている前提で、代表X氏が土地Bを購入した価格とその経緯についても明らかにするようにしました。裁判所を通じてこのような説明責任依頼をすると相手も、下手な言い訳やごまかしはできなくなるので、少数株主としては非常にありがたいものです。

また、当初開示を頑なに拒否してきた平成24-26年計算書類についても開示し、役員報酬が大企業のサラリーマン程となっており、赤字はその時期2,000万円ほど出していました。(それ以外の年度は平均300万円程度の赤字)

<今振り返って思うこと>
検査役選任を申立て、相手を裁判所へ呼び込み責任を果たすようにさせたことは大きな成功であり、正解でした。裁判外交渉での書面でのやり取りでは、開示拒否してきたものを、申立ての流れの中で、うまく証拠を入手したことは弁護士のおかげです。特に、取締役と会社の取引で大規模な不正行為をしている可能性が大きいので、そこを重点的に調査すると、何か見つかる可能性が高いと思います。

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