少数株主としての戦い(不正行為の発見)⑦
みなさま、こんにちは。前回、「少数株主としての戦い(弁護士からの通知)⑥」で、株主の権利を行使し、会計帳簿、計算書類、株主総会議事録、株主異動表の閲覧・謄写請求を行い、会計帳簿について謄写料金15万円程がかかり、かつ意図的に無意味な帳簿が送付されたことに、相手方の誠意が全くありません。今回は、その資料から簡単に不正行為が発見できたので、そのことについてお話します。
1.代表者の不正動機
中小零細企業において、会社の代表者が行う不正行為の代表格は金銭の横領といっても過言ではないでしょう。たとえ創業者社長ではない雇われ社長でさえ、自分が偉いと錯覚し、公私混同による資金の私的な使い込みなどがおきているのが現状です。また、社長が会社を自分の物にするため、50%超の議決権を何としてでも取得しようと試みることが多いのではないでしょうか。50%超の議決権株を取得すれば、役員の解任はされず、事実上自由に会社を運営でき、支配できるのです。まさにその点が不正の動機となる一つのポイントで、その点を頭に入れていれば不正行為を発見することも難しくないといえるのではないでしょうか。
2.株主名簿と株異動表
相手より入手した株主名簿とその株の推移をまず確認しました。同族会社なので、株主は親族もしくは近しい人がほとんどであり、代表取締役X氏は、株を与えてもらっておらず、X氏の親からの相続のみとなっていることは既に把握しておりました。
(平成30年末時点の状況)
・発行株式:約4.5万株(うち自己株1.2万株)→議決権行使可能株数3.3万株
・母の株数:約1.3万株(約38%)
・代表取締役X氏の株数:1.4万株(約40%)
・代表取締役X氏の息子・妻:約23%
・監査役:約3%
代表取締役X氏が株取得した経緯に着目すると、
・平成18年には4,500株(親から相続)※本人は従業員時代に株を与えられず
・平成24年から25年にかけて、約8,000株を他株主から取得
・平成25年以降、代表取締役X氏の家族の株が不定期に他株主から取得
X氏が8,000株を他株主より株を取得し、加えてX氏の妻や息子が株を取得しており、議決権50%超をその時期から持ってしまったことが判明しました。
でも、ちょっと待てよと思ったわけです。この会社(祖父母が創業)は非公開会社であり、株の売買に制限があるはずであり、一部を除いて、祖母や母は株の売買について許可した覚えもがないと母から確認しました。
3.非公開会社(譲渡制限付株)の株について
上記で、「株の売買に制限がある」と述べました。多くの中小零細企業では、株式の譲渡(売買)を制限しているため、非公開会社となっております。下記の通り、公開会社は、株の売買は自由となっている一方、非公開会社では制限が設けられています。望ましくない者が株主になることを防ぐためです。当然、上場会社に株の売買制限はないので、必然と公開会社となります。ただ、上場していない会社でも、売買の制限を設けていない会社があり、これは非上場だけれども公開会社となるわけです。
・公開会社:株の売買が自由
・非公開会社:株の売買に制限あり(会社の承認が必要)
売買制限(譲渡制限)を設けられている非公開会社の少数株主は、自由に株を売買できないうえ、会社経営に口出しもできず、また、換金の難しさ故、相続時などにも税金が課されるなど、大変不利益を被るのです。
また、どこを見れば、非公開会社(譲渡制限付き)を確認できるのかと言えば、定款、株主総会の議事録(定款の内容変更)、そして、登記簿です。記のように登記簿に記載されてます。
なお、登記簿は法務局へ行けば誰でも登記簿の謄写をできますが、今ではオンラインでも取得できますので、非常に便利となってます!
4.株主総会議事録の開示
上記2で、代表取締役X氏が約8,000株を取得していることが判明しましたが、株主総会の議事録は、下記の分しか開示されておらず、X氏もそれ以外は開催していないことを、弁護士とのやり取りで認めました。
・平成18年(不知)※X氏が代表取締役に就任した年
・平成22年(不知)※X氏の役員続投が決定され、登記もされていました。
・平成24年(確かに案内がきており、委任状も提出)株主である前社長の株買取り
・平成27年(不知)祖母が亡くなった年で、案内は来ていない。
なお、平成24年は、前社長の株を自己株として買い取ると聞いており、その時は、不正行為がなされているとも知らず、X氏を信用してX氏へ委任をしておりました。よって、上記の中で、平成24年だけが総会実施をしており、それ以外は架空の総会を作り上げていることが疑われたので、その点も調査の重要ポイントとしました。
5.株主総会の議事録での決議内容の確認(株の異動)
代表取締役X氏が、平成24年~平成25年にかけて約8,000株を取得している点に着目し、何か不自然な点はないか実際の株主総会の議事録をチェックしました。
なお、こちらが得ている情報は、前社長が自己株(会社が買い取る株)として、平成24年に株主総会を開催し、その決議を行ったことです。
総会議事録によると
・計算書類の承認
・株買い上げの件
→「創業以来、株主も高齢になり、できるだけ株を買い取ってほしいとの意見多数あり、数回に分けて、株を買い上げることが決議された。
①普通預金1500万円を上限
②会社が所持する土地Aを売却し、ぞれを上限とする。
③500株未満はすべて買い上げる。
といった内容です。こちらを見て、皆様はどう思われるでしょうか。私たちも、最初はこの事実を信じて不正はないのかなと思ってしまいました。
しかし、みなさまはまず疑ってください。それは、
決議内容が非常にあいまいである。
枕詞が「できるだけ」「多数意見あり」等と強調している。
「500株未満・・・」その根拠について、記載がない。
と極めて不自然だからです。つまり、虚偽の議事録内容を作り上げ、敵対する株主に開示してきている可能性があるのです。ある株主へ第三者へ株を譲渡するのであれば、誰が何株。誰に譲渡するのかを記載する必要があり、また自己株式であれば、誰の株を何株いくらで会社が買い取るかを記載しなければなりません。また、自己株式では買取の期間を明確に設ける必要もあり、それを明記しなければないにもかかわらず、その記載がないことからも、疑うべきです。
まだ仮説の領域を出なかったため、前社長にアポを取り、事実確認を行いました。
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