【06BULLS】遊馬ジェシーの5年間。打席数以上の力
信頼と信念
「ジェシーさん」と選手からもファンからも親しまれている。
人当たりのいい笑顔。コーチャーズボックスに立てば大きな声でチームを盛り立ていた。
2018年に兵庫ブルーサンダーズに入団。今季が5年目。兵庫に入団した当初から、裏方やコーチとしての役割も兼任していた。
06BULLS移籍後はマネージャーとして活動していたこともあり、「桜井(広大)監督から『代打マネージャー』とコールされて通った」という逸話もある。
イベント試合の際はギリギリまで進行の確認などに追われることもあった。自分のことを置いてでもチームのために動く選手だった。
「自分たちは野球を「自分たちの意思だけで」続けられているわけではない。試合を見に来てくれている人やスポンサーに支えられて野球ができている」
入団当初からぶれずに何度もこの言葉を話していた。プロ意識をしっかり持っていた選手だった。
子供たちと
そんな「ジェシーさん」が引退することになった。シーズン前には「生島(大輔)さん以外で年上の選手(堺・じゅんせー選手)がリーグに来たのでうれしい」と語っていた。ジェシーさんも5年目を迎え、28歳になっていた。
「もとからNPBに行けるだけの実力はないと思っていました」ときっぱり言った。「だって僕この5年で年平均8打席ぐらいしか立ってないんですよ」
5年間で46打席。そのうちのほとんどが代打か途中出場。独立リーグに長く在籍する選手でこのような起用をされる選手も珍しい。ほとんどの試合でサードコーチとして試合の序盤を過ごしていた。
しかし、いざ打席に立つ、となると大きな拍手で迎えられた。普段の遊馬の姿勢をみんな見ていた。
「このリーグに来る前、小学校の先生をしていた僕は『みんなの憧れになるように頑張ってくる』と言ってこっちに来ました。結局そんな成績は残せなかったんですけど、それでもこんなに気にかけていただけて……少しはそういったところも見せられたのかなと思いました」
今後はまた教職に戻るつもりだという。
「子供たちを指導していくなかで、またどこかでブルズだったり、色々なチームと野球教室などの接点が出てくると思うんですよね。そんな時にはぜひ色々お願いしたいし、力になれることがあれば力になりたいです」
どんなことにも一生懸命
大した成績は残していないというが、成績以上のものを残した選手だったと思う。
サードコーチャーを務めるときは全力で腕を回し、代打起用があろうがなかろうが試合中何度もベンチ前でバットを振った。
ベンチの中では雰囲気を盛り上げるべく球場中に響く声で選手たちを鼓舞した。
球団の仕事があるときはそこに注力していた。試合前には裏方の仕事も率先してこなした。だからこそ球団の垣根を超えて愛されていたのだと思う。
「年8打席ぐらいしか立ててないのに、この5年間こんなにいろんな方に気にかけていただいて……」と「ジェシーさん」は話すが、それは間違いなく本人の人徳、努力によるものが大きい。
今季、サードコーチャーは他の選手に譲ることが多かった。
「そろそろ僕以外の選手が盛り上げないと」とシーズン中に話していた。
来季、球団名も「大阪ゼロロクブルズ」に変わり、監督、コーチ陣も刷新される。
「ジェシーさん」の一生懸命さを、プレーで、姿勢で引き継ぐ選手が出てくるのか、期待をしたい。
(文・写真 SAZZY)
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