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【インタビュー】神戸三田にやってきた元NPB戦士と首位和歌山の原動力

(取材日 5月9日)

アンダースロー転向・工宜

現在2位の神戸三田ブレイバーズ。この日、5月9日は首位和歌山との対戦。本州最南端の球場「串本サン・ナンタンランド」に向かった。

この日の試合は、先発の西村太陽をはじめ投手陣が粘り、3対3の引き分けに持ち込んだ。

そんなブレイバーズに新たな投手が加わった。坂本工宜。登録名は工宜(こうき)。2019年まで読売ジャイアンツに在籍していた投手だ。

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(ウォーミングアップ中、戦況を見つめる工宜)

試合前に橋本大祐監督は工宜について「リストが強い。バッターを相手に投げるのは久しぶりと聞いているけれど、強い球を投げられる」と評し、この日の登板を明言した。

チームが1点を勝ち越した8回裏に出番がやってきた。チームに合流して間もなく「ぶっつけ本番だった」と振り返ったというマウンド。先頭の佐藤大介に四球、松本聡、深谷力に連続安打を浴び、1死満塁のピンチを作るも4番の西河洋樹をフォークで三振、5番の甘露寺仁房を右飛に打ち取った。

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(ピンチを切り抜けてほっとする工宜と、小倉寛夢捕手)

「ワクワクしながら、そして緊張感もありながら、楽しく投げることができました。1点リードしている場面だったので0点で抑えることを考えていました」

一年半ぶりの実戦マウンドをこのように振り返った。

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ご存じの方も多いと思うが、工宜は巨人時代はオーバースローで150キロ近いボールを投げていた。

しかし、この日マウンドに上がった工宜はアンダースローだった。

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今球界で「絶滅危惧種」とも言われているアンダースローに転向した理由についてこう語った。

「プロの世界で戦う中で、オーバーで投げるのではなく特徴を作って勝負したいと思いました。フォームはオーバーで投げていた時と同じボールを投げられるように一から作っていきました」

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(重心が前になる、いわゆる「パワー型アンダースロー」。球速が出やすいフォームでもある)

実際、アンダースローでは投げるのが珍しいとされるフォークを使ったり、ストレートやスライダーは打者もかなりのキレを感じていたようだった。

「これから一試合一試合を大事にして投げていきたいです」

神戸三田のサブマリンはチームとともに浮上を狙っていく。

強打の2番打者・松本聡

和歌山ファイティングバーズが強い。前年の覇者・堺シュライクス相手に5戦5勝。得点はリーグトップ。失点はリーグ最少。ホームランこそないが、4月末の時点でチーム盗塁24は断トツのトップ。

この日も9回裏二死から佐藤大介のタイムリーで追いつき、終盤にはピンチの場面から登板した山川直人が3回1/3イニングを投げ切った。

「メチャメチャ雰囲気がいいんですよ」と話すのは、松本聡。チーム屈指のムードメーカーだ。

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(和歌山のSNS映え担当(?) 松本聡(左)と渡邊開登(右))

「実は左足を肉離れしてたんですけど、そうすると体突っ込まなくなってよく打てるって聞いたんですよね。怪我明けで今日からサードに戻ったんですけど、そうしたらヒット一本しか打てなかったっす…」

とは言え、その一本は工宜から打ったもの。実は松本、昨年もジャイアンツとの交流戦で3安打、今季も元ジャイアンツの村上海斗(堺)からヒットを打っており、「巨人キラー」ぶりを発揮している。

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(工宜からセンター前にヒットを放つ松本)

「やっぱりピッチャーの精神力が凄いです。西垣(彰太)も山川もあれだけ投げてるのにすごいタフです。打線もどこからでも打てるし走れるし、生島(大輔)さんが6番を打っているんだからそりゃ強いって感じですよね」

この日も、キャッチャーがボールを投げることすらできないほど、完璧な盗塁をチームで何度も決め、何度も得点圏にランナーを進めた。

「今日のチームも先制点が取れてすごくベンチの雰囲気がよかったんですよ。ただ、今日の試合はミスが多かったですね。試合が延びて、雨でグラウンドがあまり使えなくて、勘が戻ってなかったってのもありますが、こういうところ締めていかないといけないですね」

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(初回、犠飛を打ち、迎えられる深谷)

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(9回裏、同点のホームを踏んだ渡邉開を出迎えるナイン)

まだシーズンは始まったばかり。それでもチームのため、地域のためと、選手が奮闘する。その中心にはサードから大声を出し続ける松本聡の姿がある。

「(現在最多勝の)西垣から練習でホームラン打ちましたからね。これからもっと調子あげていきますよ!」

3月に取材に訪れた際には「和歌山は『大穴』って書いといてください!」と不敵な笑みを見せていた松本。いよいよ優勝争いの『本命』に躍り出つつある。

松本自身も打率.349、15安打と二番打者として申し分ない成績。もっといい雰囲気を作り出すために、松本は今日も声を出し続ける。

(取材 SAZZY)




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