【 #球春到来 】【和歌山ウェイブス】フレッシュな陣容で連覇を
事務所訪問
この日、御坊総合運動公園で朝から夕方まで練習が行われる予定だった。
しかし、前日から降り続いた雨で屋外での練習は中止。
球場に向かう道すがらその報を受け取った。
車を停め、電話で西河洋樹球団代表と話をする。「室内練習場が昼から取れそうなのでいかがでしょうか?もしよかったら時間もあるので事務所にお越しいただければ…」
ということで唐突に事務所訪問が始まった。
事務所内には西河代表、松本聡コーチ、藤原楓コーチ、田井良樹広報。
和歌山ウェイブスの歴史を彩った選手たちが今季から球団運営に携わっている。
「みんな選手だったんだよなぁ」と西河代表。昔話に花が咲く。大阪ゼロロクブルズが千葉ロッテマリーンズのキャンプに選手が参加しているという話で、「そういやロッテにいるんすよね、根本(根本和也ブルペン捕手)。まさかあいつが佐々木朗希のボール受けてるなんてな…」と、堺シュライクス時代の同僚の話をする松本。とてもじゃないけど書けないエピソードを話す藤原。その傍らで黙々とポスターを作っていた田井。
バットを持つ手にスマホを、ボールを持つ手にマウスを持ってそれぞれの仕事に邁進している。
若い世代の経営陣になるが、彼らがこれからの球団の歴史を紡いでいくことになるのだろう。
龍神村へ
龍神村。温泉で有名な場所だ。
事務所からおよそ40分ほど。世界遺産である奇絶峡を通り過ぎた先の山道を走り、目的の室内練習場、龍神ドームに到着した。
「山道をずっと走ってて、本当に室内練習場があるのかなと思ったら本当にあった」とは西村憲監督。
本来丸1日の予定だった練習は3時間になった。西村監督、松本・藤原両コーチがメニューを決めて選手に出す。
早速室内での練習が始まった。
とは言え、野球専門の室内練習場ではない。
ネットのあるところでのバッティングは限られている。
そこで考え出されたのが丸めた新聞紙を使ったトスバッティングだ。
新聞紙を丸めて中心部分をテープで固定。
中学生の休み時間のような感じだが、これなら何かを壊すこともないし怪我をすることもない。
さらに不規則な動きをするため芯でとらえることが難しい。そしてバットが当たっても、全身を使ってバットを振らないと前に飛ばない。
打ち始めたときは四苦八苦していた選手たちだが、次第にバットから快音が響くようになってきた。
余談ではあるが、普通通りのバッティングも実施。ネットに向かって限られた時間を余すことなくバットを振り込んでいた。
いい雰囲気
首脳陣、経営陣ともに刷新された。もちろん選手も入れ替わっているが、選手やコーチとの間にはいいムードがあるように思えた。
「全体練習が終わった後に『自主練習』という時間を作っているんですが、最初のころは選手自身も何をしていいかわからずまごついていたけれど、日が経つにつれて自主的に自分たちの課題に向き合うようになってきた」と西村監督。
「松本・藤原のコーチ二人もよく頑張ってくれています。最初こそ僕が全部見てやってましたけど、今は投手を見れればいいので。みんな成長していますよ」
松本コーチは現役時代同様選手との距離も近く、藤原コーチは選手に「鬼」と言われるようなフィジカルメニューを選手に課していた。
そして選手同士も互いに教えあうなどしながら3時間の練習はあっという間に過ぎていった。雰囲気がいいですね、そう西村監督に話したら予想外の答えが返ってきた。
「雰囲気がいいって一言でいうけど、それって選手みんなの内面が充実していることですからね。これは大きいです」
数年間和歌山の取材を行っているが、毎年ギスギスした雰囲気もなく、自然とチームの空気や関係性が出来上がっていると感じる。
こうしてチームの一体感が出来上がっていく。選手の実力と共にムードが醸成されていけば、連覇も見えてくるだろう。
昨年ドラフト候補だった小川佐和、高卒1年目ながら防御率1点台をたたき出した小﨑雅斗ら軸になる選手はいる。開幕までにプラスαの力をつけていきたい。
最後に西村監督に特に注目する選手がいるか聞いてみた。
「誰かひとりってことはありません。全員に可能性や伸びしろがあります。全員が推しです」
西村監督率いるウェイブスがどのような戦いを見せてくれるのかが楽しみだ。
(文・写真 SAZZY 取材日:2月21日)
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