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もぐらの穴

まだ子どもたちが、学校や幼稚園に通っていた頃のこと。それぞれ送り出したあとに、裏山へ散歩に行くのが日課だった。

ある日、道のわきの草むらの中をモゾモゾ動いているものを発見。ネズミかな?うさぎかな?と思ったら、何やら体は茶色、鼻が肌色で尖がっている。

「なにこれ?」と思って、顔をのぞき込むと・・かろうじてお目目らしい「点」がふたつ付いている、もぐらの赤ちゃんだった。

「お母さんはどこに行ったんだろう?このまま前進すると、人が歩く道の真ん中に行ってしまうのに。」

あのお目目はただの飾りなのか、あまり意味がないようで・・・お母さんを探しながら、必死に這って前進するだけ。

「手で持って草むらの方へ返してあげたいけど、人の臭いが付いてしまっては、お母さんから嫌われちゃうかも。」

近くにお母さんがいるかもしれないと思い、できる限り手を加えないで本人の力で戻れるよう「こっちだよ、こっちだよ!」と、誘導しながら応援した。

お目目は使えなくても、やっぱり動物の「感」というものはあるようで、もう一度草むらの方向に行ってくれた。

通りかかりのおばさん2人が「なにこれ~ネズミじゃない?」と言いながら、おしゃべりに夢中になって通り過ぎてくれたので、私も安心してその場を去って行った。

それからというもの、もぐらの穴を見るだけであの時のことを思い出す。

「あのあと無事に、お母さんと会えただろうか・・。きっと今では穴を掘るのが上手になって、立派なもぐらになっているかも知れない・・。もしかしてこの穴は、あの子が掘った穴じゃないかな・・。」

もぐらの穴一つに心が動き、頭の中ではストーリーが展開されるようになってしまった。

結局あれから一度も、もぐららしきものとも会えなかったけど・・もぐらの穴を見ただけで、胸キュンになる。

「出会い」なんて、こんなものなのかも知れないね?!

拙い文章を読んで頂いて、ありがとうございました。 できればいつか、各国・各地域の地理を中心とした歴史をわかりやすく「絵本」に表現したい!と思ってます。皆さんのご支援は、絵本のステキな1ページとなるでしょう。ありがとうございます♡