見出し画像

白い願いごと~七夕の夜に

 私の願いごとって何だろう。
 あれもしたいこれもしたいと思っていたのが、今は何をしたいとか考えることがなくなった。
 言葉が出てこない。


 「死ぬ時って苦しいのだろうか」と聞かれた。
 まだ死んだことがないのでわからないが、昔、死にかけたことがある。
 10代の頃に、バイクで事故を起こした。気がついたら救急車の中。意識は戻ったけど、目が開かない。言葉が出てこない。
 痛いとか恐いとか何も思わなかった。大量に血を流しているのに痛くもない。苦しいなんて全然思わない。「死」って言葉すら浮かばない。頭の中が麻痺している。目は開けることができなかったが、名前や住所を救急隊員から聞かれて応えていた。けっこうしっかり言えていたと思う。
 何も考えられなかったが、問われたことにははっきり応える。
 ああしたいこうしたいと思うことはなかった。助かりたいと願うこともなかった。

 選挙が近づくと政治家がいろんな意見を言う。言葉がどんどん出てくる。
 今までも各政党いろんなことを言ってきたけど、どれだけのことが実現したのだろうか。我が国は言霊ことだまの国なのに、政治家が言葉を発する度に、言葉の価値が下がるようだ。
 言葉は霊を持っているので、しゃべった言葉は実現しようとする。短冊に書いた言葉は実現しようと動き出すし、相手に「死ね」と言葉を発すれば呪いの言葉となって実現しようとする。だから、むやみに呪いの言葉を発してはならない。
 そんな大切な言葉なのに、選挙前の政治家の言葉はバーゲンセールのように流される。
 政治家は、言葉だけでなく、何をしてきたのか、行動を見なければならない。相手を見極めて選挙では投票しなければならない。


 七夕には短冊に願いを書く。
 上っ面の政治家の言葉ではなく、自分の、私自身の、言葉にできる願いって何だろう。

 漠然とした「世界が平和になりますように」なのか。
 卑近な「若い女の子と仲良くなりたい」なのか。若いエキスを吸い取りたい。って、そんなことを言葉にすればヘンタイやん。エロい言葉は短冊には書かない。
 書かないだけでなく、行動にも起こさない。今時、ちょっと若い子に声をかければセクハラになる。心の中で思っているだけ。


 言葉をもてあそんで、ネットに「誘拐する」などと書けば、行動にうつさなくとも、言葉を発するだけで犯罪だ。思うだけなら何も起こらないのに、言葉にしたことで犯罪になる。そんな人間が増えてきた。


 日本は言霊ことだまの国。言葉には魂があり、言葉は現実になろうとする。だから短冊に言葉を書く。
 言葉って難しい。


 さて、短冊に書く、私の願いごとって何だろう。
 選挙の声を聞く度に、言葉のむなしさを感じる。
 いろんな思いがあるけど、言葉にできない。

 今年の七夕は、白紙の短冊を笹につるそうか。


 「あなたは七夕に何を願う」という企画に参加します。
 何も考えていない自分に、「願い」を書くということを思い出させてくれた。救急車の中で、自分からは言葉が出てこないのに、問われたら言葉が出てくる。企画にあった言葉をさがす。

 「願い」を考えたけれど、言葉が出てこない。
 出てこないのに無理に引き出すこともない。言葉が熟成するのを待っていてもよいだろう。だから今年は白紙の短冊を提出する。

 白紙を提出すれば、また来年に夢をつなげることができるだろう。


 こんな内容でも参加できますでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?