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セックスアニマルの人は人として生きることによって人となる

 人間の特徴は何か。人間が他の動物と違うのは何かと問われてどう答えるのだろうか。
 火を使う。
 他の動物は火を使えないから火を恐がる。ジャングルで寝るときは火を焚くのだと、我々昔の人間は答えがちだ。だが、火を使う鳥など他の動物の火を使う報告がある。火を使うことが人間の特徴ではない。
 では、言葉を使うことか。
 言葉、鳴き声で連絡を取り合う動物はいるが、人間は言葉を使って考えることができるようになった動物であるといわれる。迷路を覚えたネズミが、その迷路の抜け方を言葉やテレパシーを使って他の仲間に伝えることはできない。アリやハチは餌のありかを仲間に伝えるが、それも言葉によるものではない。
 人間は、自分の考え、思考を言葉を使って伝えることができる。自分の喜びや悲しみだけでなく、他の人間の喜びや悲しみも、言葉を使うことによって伝えることができる。

 それだけではなく、言葉を使うことによって考えることができるようになった。言葉を使うことによって、言葉で考えることができるようになった唯一の動物が人間なのだ。


 動物は、仲間が死ぬと悲しむが、いつまでもそれを考えていたら生きていけない。それを忘れ自然の中で生きていく。人間は、人の死を言葉によって伝える。生きているときの活躍も、言葉によって伝え、一族でその言葉を共有し、物語が生まれた。
 我々の祖先は狼である。我々の祖先は神の国から地上へ降りてきた一族である。そういう一族の歴史を言葉によって伝え、一族で歴史を共有して絆を深めてきた。


 野生の動物は、人の見ている前でも平気でセックスをするが、人間は特殊な人以外は、人前でセックスはしない。
 誰とでもセックスするチンパンジーと違い、人は、「つがい」を作りセックスをする。そのために、それを他から見えないようにかくすのだ。かくすことによって、つがいの絆を深めていく。本来はフリーセックスアニマルであったであろうのに、変化してきている。人間はコミュニケーションをする動物なのだ。
 チンパンジーはグループ間の移動が多いので、多種のあいさつが生まれた。セックスもあいさつの一つとして発展したのだろう。セックスがコミュニケーションの手段となっている。チンパンジーにとっては、フリーセックスは異常ではなく通常なのだ。

 フリーセックスのチンパンジーも人間も、近親相姦はタブーとなっている。タブーとなっているということは、時々破る者がいるからタブーが生まれる。動物番組などでも、何年ぶりかに会っても、親子は認識できる。そのために近親相姦は起きない。ところが人間は、生き別れで出会った親子は、親子だということがわからない。そのために恋に落ちる悲劇もある。

 生まれ落ちたらすぐに立ち上がる草食動物と違い、人間やサルが親子になるのは、長い子育てをするからだ。母子の関係にしても、母親は、おっぱいを吸わせることによって、おっぱいを吸われることによってホルモンが分泌され、母性本能が生まれてくる。生まれた子をすぐに殺してしまう女は、まだ母親になっていないのだ。
 父親は、生まれ落ちた物体を、初めは我が子という認識も少なく、母親と一緒に子育てすることによって父親になっていく。だから、子育てをしてこなかった父親は、実の娘を性的対象にできる。父親として娘に接するのではなく、オスとしてメスに接しているからだ。逆に、義理の父親であったとしても、子育てを何年もすることによって、実の娘のようになり、義理の父親にも父性が生まれてくる。
 これが、本能で生きるのではなく、言葉を使ってものごとを考える人間の姿なのだ。


 親子関係だけではなく、人にはコミュニケーションが大切だ。
 AIの進化により、機械が子育てをするような未来が来るかもしれないが、そうすると、人間の脳は本来の発達をするのだろうか。コンピュータによる言語は身に付くだろうが、人間本来のコミュニケーションをするための言語は育たないのではないか。同じ人間同士でも、リモートによる会話では人間本来のコミュニケーションとは違うものが生まれているのではないだろうか。その微妙なニュアンスは、気づかなければそのまま見逃されてしまうものだが、人間の心をいびつなものにしていくのではないだろうか。
 人間の進化は、とてつもなく長い時間をかけて生まれたものだ。コンピュータ化により、それをほんの短い時間で変化させてしまえば、どこかにひずみが生まれるのは必然である。そして、それに気づいたときは、もう手遅れになってしまう事態が起きているかもしれない。

 人が人になるために、どうすべきか考えなければならない。

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