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12月は師走、走る教師の教員免許更新制度やっと廃止へ、職員室は臨時採用教員だらけ

 12月は師走(しわす、しはす)。
 教師が走ると書いたが、本当は「師」は僧侶のことで、坊主が走るということのようだ。「走る」の方も、坊主が各家庭に馳せ参じる。「師が馳せる」で「師馳す(しはす)」となったのが、「馳す」が「走す」になった。という説がある。これは確実な説ではなく、師走の語源は「わからない」というのが正解らしい。

 現実に、年末の教師はよく走る。
 年末だけではない。春休みも、夏休みも、冬休みも、教師は働いている。走っている。春、夏、冬に休みがあるのは子どもの方で、教師はずっと働く。いくら働いても、早朝から深夜まで働いても超過勤務手当は出ない(事前に雀の涙ほどの手当を払っているという法律から)。年休をとろうにも、自分が休むと迷惑をかけると思って休まない教師。休めるのが子どものいない長期の休暇中しかない。
 昔々のまだのんびりしていた時代は、せめて夏休みくらいのんびりさせてやりたいと、管理職も大目に見て、少し早く帰したりもしていたタイムカードもなかった時代。今は夏休みだろうが、朝から晩まで時間を管理され、行事や研修がみっちり入っている。

 年末なんて、中学校の3年生の先生は大変だ。年明けから入試が始まる。入試の準備。資料を準備しなければならない。ちょっとでも間違えたら子どもの人生が変わる。ものすごく緊張しながら準備する。
 一方で、まだ進路が決まっていない子もいる。希望通りにいかない。受けるのはいいのだけれど、ほぼ確実に落ちる。昔は、そういう場合は絶対に受けさせなかったが、今は希望通りに受験させる。けれど、落ちた後にどうするかを決めておかなければならない。
 そんなの落ちてから考えたらいい。そうはいかない。受験に失敗した直後の子どもに、考える余裕なんてない。受験に失敗して、現実から逃げ出した子は何人もいる。子どもにとって大きな試練が入試なのだ。その準備があり、教師は年末には走り回っている。

 手当のつかない超過勤務なんて当たり前だ。だからブラック企業だと、教師のなり手がない。超過勤務手当を当たり前につけて、給料を上げれば、優秀な人材は自然と集まるのに、それはしない。
 今の職員室を覗けば、正規の教員だけでないのがよくわかる。ぱっと目につく外国人講師。教師ではない。講師だ。教師のアシスタントとして雇っている。
 周りには年配の教師が多い。定年退職の後に、再任用している。再任用なら安く雇って、仕事は今までと同じことをさせることができる。
 教育を安く抑えるために、非常勤の講師が多い。普通の先生のように見えるけど、毎日来ていて担任もしている常勤の「講師」もいる。育休や産休の臨時採用教員もいる。それが職員室だ。

 さあ、そこで教員免許更新制度
 再任用の先生は、定年まで、該当の年になると「更新ですよ~」という連絡をもらっている。それで研修を受けていないのは、よっぽどの先生だ。自分の管理もできない先生に進路指導なんてしてほしくない。
 問題は、大学で教員免許をとったのに、教師にならず、ペーパー教師の人。教師になったけど、一度退職した人。使わないから更新を忘れ、更新の連絡も来ないし、気がついたら資格がなくなっている。免許をとったときには、「10年限定」なんて聞いてない。免許が失効している人が増える。臨時採用の教師をさがそうと思っても、免許が失効している人だらけ。

 教員免許更新制度は平成21年(2009)より導入された。
 文科省は、「教員免許更新制は、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。」と言ったあとで、「※ 不適格教員の排除を目的としたものではありません。」という言葉をわざわざ書いている。なかなかやめさせることのできない公務員に対するおどしであるのが丸わかりだ。さからったらやめさすぞ~というわけだ。

 それが、「教員免許に10年の期限を設け、更新講習を受けなければ失効する教員免許更新制について、2022年度の早い時期に廃止し、23年度から新しい研修制度を始める考えを明らかにした」。


 それは、やっと実現した現実的な策なのだが、現場の教師には、2009年から2022年なら、2回講習を受けた人と、1回だけの人が出てくる。
 中途半端やなあ。

 いかに教育を真剣に考えていないかがよくわかる。
 思いつきの政策ばかり押しつけられる。

 教育を大切にするには、人を大切にしなければならない。○国製のタブレットを子どもたちに配ることではない。ベ○ッセの事業を発展させるために英語教育をすすめることではない。一人のカリスマ教師にリモートで全国一斉の同じ授業をさせることではない。一斉ではなく個々にあわせて授業を配信するコンピュータが同じプログラミングで作られていることではない。みんな違ってみんないい授業をつくるためには、教える人を大切にしなければならない。お金の使い方が間違っている。

 まあ、とりあえずは、教員免許更新制度廃止を「よし」としようか。

 見出し画像のtome館長の作品「職員室」は、下の名前をクリックすれば元の記事が見られます。



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