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大人だって成長できる-インテグラル・ライフ・プラクティス

今回は、成長・発達について、そして、そのための方法論について記載します。

「成長は、子供時代だけのもの」「体力・美貌・知性、あらゆるものの獲得は20歳がピークであり、そこから先は衰退の曲線をどう緩やかに保つかが課題となる」とお思いではないでしょうか。
まったくそんなことはなく、私たちは死ぬその瞬間まで成長を続けることができるのです。
(また、個人だけでなく、組織もまた、成長を続けることができるのです)
それを探求し続けているのが「成人発達理論」「発達心理学」という分野。
しかし、その詳細を述べることはここでの目的ではない。ここでは「つまりどうしたら成長を続けられるのか」を伝えたい。そのための有効な実践方法として「インテグラル・ライフ・プラクティス」を紹介します。

最初に、インテグラル・ライフ・プラクティスとは何か、を説明するため、書籍「インテグラル・ライフ・プラクティス」より一部引用します。

われわれが自己の成長や成熟を深めていこうとする時には、外部により与えられるトレーニングを受動的に消費するのではなく、主体的に自らの実践を設計していく必要があるのです。
インテグラル・ライフ・プラクティスとは、今日のような時代と時代の境において、自己の治癒と成長を、信頼に足る枠組みに立脚して実現していくための方法論なのです。

インテグラル・ライフ・プラクティス ケン・ウィルバー著


発達のための実践の地図-インテグラル・ライフ・プラクティス
発達のための実践の地図-インテグラル・ライフ・プラクティス

この方法論では、4つの領域それぞれにおいてのトレーニングを、バランスよく行うことが重要だと説いています。
4つの領域とは、「体」「頭・心」「精神」「シャドー」を指します。それぞれ以下で説明していきましょう。

「体」領域


その名からわかる通り、体をいかによいコンディションにするか、に注力すること。
たとえば、適度な運動、筋トレやジョギング、ウォーキング、体操的なヨガの実施。
たとえば、良い食事をとること、インスタントな食事を避けること(コンビニ食、インスタントフード、ラーメンなど、添加物、油、糖分を多く含むものを避ける など)
たとえば、体の好きなようにさせてあげること(たまには目覚ましをかけず、体がおきたくなるまで寝させてあげる など)
私たちは、頭先行でものを考え、体はその考えを実行すための従者として使いがちです。
ボディワーカーの小笠原和葉先生の言葉を引用するなら、「ソマティック・インテリジェンス(身体知性)」に気づくためのトレーニングともいえます。
ちなみに、「週に一度はラーメンが食べたい」「仕事中に甘いものが食べたい」など、特定の状況で特定のものを食べたくなる方がいたら、残念ながら油や糖などの取りすぎです。
中毒症状とまではいいませんが、体に思考・欲望が操られている状態にある可能性が高いので、この領域から見直すのが良いかもしれません。

「頭・心」領域

考える・感じる ということに意識的になり、その精度を高めること。
たとえば、仕事をより生産性を高めるための新たな情報のインプット。
たとえば、心理学やシステム思考など、人の考え方・視点の多様さに関する情報のインプット。
たとえば、対話や、会社であれば1on1への参加、ワークショップへの参加など、他社と自己の違いを気づくための機会を設けること。
たとえば、カウンセラーやコーチと定期的に時間をとり、自分の考え方のくせに気づくこと。
なお、発達心理学では、意識の発達とは、自己中心の考えにとらわれるのではなく、他社の視点でものごとをみられるようになるプロセスのことを指します。

「精神性・直観」領域


日常的な心の動き・働きを鎮めて、意識を空にする。そのときにふと湧き上がるものに意識を向けること。
たとえば、美術館で美術作品を眺める。
たとえば、自然の中に身も心も浸す(登山に行く場合でも、一緒に言った仲間としゃべっているときはこの状態にはならない。例えば一人登山などがよりよい)
たとえば、座禅、マインドフルネス、瞑想的なヨガなど、さまざまな瞑想の実施。
思想家の田坂広志先生は、書籍の中で、瞑想の実践の難しさに触れています。より誰でも自然に行うことができることとして、自然の中に身も心も浸すことを推奨されています。

「シャドー(影)」領域

ここが、最もわかりづらく、しかしながらもっとも重要な領域になります。
シャドーとは、排除、否定、抑圧された心の側面、私たちの中の一部を指します。
シャドーに気づく大きなヒントは、自身の感情が大きく動く、特に怒りや不安、恐れの感情が沸き立つとき。その裏にシャドーがある可能性が高い。
わかりづらいので、具体例を。
たとえば、楽器演奏家の家庭に、幼いころから、楽器の練習を重ねてきた子がいたとしましょう。遊びたかったけれど、親に怒られるから、遊ばずに楽器を練習し続けた。
この子は、遊びたかったときにも練習を続けるため、その心を抹消しなければならなかった。そのため、意識しない心の深いところで、「遊んでいる人たちは未来を見据えていないかわいそうな人」「僕は親に褒められて、ゆくゆくは立派な演奏になるんだ」という風に、自己正当化のためのロジックを組み立てて、楽器の練習を重ねた。「遊びたかった自分」を、自分から、切り離した。
そうして大人になった人が、ある日、自分の家族が、あるいは子供が、練習もせずに友達と遊びに行く姿や、家でのんびりとスマホを見ている姿を見て怒りがこみあげてくる。
「なぜあなたたちは時間を無駄にするのだ」と自己正当化された形の怒り。その裏にあるのは、「僕も遊びたかった」という叫び。
このような形で、感情が揺らめいたときにそこをヒントに心を深堀りすることで発見することができます。
発見したら、あとは、眺めていればいい。「ああ、私はまたこのことで怒っている。本当は、遊びたかったんだな」と。
シャドーに気づくことは、自分の心を静観し、客観視する練習を重ねないと、自分で自分に気づくことは難しい。
おすすめの実践方法としては、「頭・心」モジュールでの内容と重複しますが、カウンセラーやコーチの力を借りる方法が効率的です。
(カウンセラーのスキルは、日本では、マイナスの心理状態をゼロに戻すことのみに使われている印象ですが、そのスキルをゼロからプラスにすることに活用することが一般化したらいいのに、と思います)

なお、ここまでお読みになってお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、IARPの方法論も、浅い実践では上記4領域をすべて抑えることは不可能です。
(経験の長い方であれば、すべての領域を補うこともできますが)
ですので、IARPで日々実践されている方も、ご興味ありましたら、上記の 穴のある部分 をどう補うか、ご検討されてみるのもよいかと思います。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございました。
偉大な哲学者アリストテレスは、「幸福とは、持って生まれた能力や可能性をできる限り実現し、充実した活動の中で実現される」と述べました。
自己成長を続けた結果として、アリストテレスの言うように、自分の能力を最大限発揮して生きられたら、素敵だと思いませんか。
ぜひ、そのためのツールとして、インテグラル・ライフ・プラクティスをご活用いただけたら幸いです。

なお、今後、私がIARPの講師実施後の時間帯で、近くの喫茶店などで、インテグラル・ライフ・プラクティスのワークショップ/共有会ができたら素敵だなと思っています。
ある程度、私自身も実践を重ねてきましたので、それぞれの領域を深掘るための、実践に基づいたアドバイスもできるかと存じます。
ご興味ある方、こちらからご連絡ください。

ワークショップの内容イメージ(30分から1時間程度)
・クラス参加の感想共有
・インテグラル・ライフ・プラクティスの説明
・ワークシートを用いてそれぞれご自身のプランを考え、共有(できる範囲で)

より深く知りたいための方の参考文献


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