プライムビデオが選ばれる理由
はじめに
Amazon Prime Video(以下プライムビデオと称する)は特に、日本で人気を誇る有料会員制プログラムである。動画配信サービスが人気な現在で特にプライムビデオに着眼して、競合他社と比較し何故プライムビデオが選ばれるのか、その理由を分析してみたい。
Amazon primeとは
Amazon prime(以下アマプラと称する)とは、Amazon.comが2005年にアメリカ合衆国でプライムサービスを立ち上げ、2007年に日本でも開始された有料会員制プログラムである。年間プラン4900円(税込)・月額プラン500円(税込)で迅速で便利な配送特典や、プライム会員特典に含まれる Prime Video、 Prime Music 、Amazon Photos、 Prime Reading等のデジタル特典を追加料金なしで使うことができる会員制プログラムである。学生には割引もあり半額で利用することができる。さらに、初めて利用する人の不安を解消するために体験期間が設けられており期間内は無料でサービスを受けることができ、アマプラの解約はオンラインで簡単に手続きができる。
理由
「なぜアマプラが人気なのか。」
アマプラが人気な理由は、他との識別されたコンテンツの豊富さであると考えられる。月額500円というコスパの良さで動画見放題、音楽聴き放題、写真保存し放題、送料無料などの利点があること、全てのサービスにおいてクオリティが高いことなどがあげられる。
アマプラは配送サービスの充実さだけでなく、ミュージックコンテンツ、動画配信サービスにも展開している。ミュージックコンテンツにおいて、他の人気コンテンツである2社と比較した際、値段も安価で、曲数も圧倒的に豊富である。そして、同サービスは動画サービスもかなりのコンテンツの充実さがある。
そこで、私たちは最も有名なアマプラの動画サービスに焦点を当てたい。そして、もう一つの人気な理由は圧倒的な価格の安さである。ミュージックコンテンツ市場においても、動画サービス市場においても、圧倒的な差をつける安価であり、上位を占めている。しかし、こんなにもサービスが豊富で完璧に見えるアマプラではあるが、もちろんデメリットも存在する。これから、メリットとデメリットを合わせて紹介する。
メリット
・月額500円で映像を見るだけでなく、様々な特典やサービスを受けられる。
・安い
・無料体験期間が1ヶ月もある
・配信されている作品数が他社と劣らない
・学生割引がある
デメリット
・サービスが多すぎて使われないものが多い
・無料期間が過ぎると自動で契約が更新される
・2000円以上購入すればプライム会員以外も送料無料になる
・倍速再生に非対応
・ファミリー共有する際視聴履歴も共有される
・作品の再生前に広告が表示される
以上のことよりメリットは多いが、これらのデメリットより他社のサービスと比較して自分に合ったサービスを選択する方がよいだろう。
利用者情報
動画配信サービス利用率の1位はプライムビデオで5人に1人が利用している計算になる。そんなアマプラの認知率は、60.0%、利用率26.9%、現在利用率23.3%である。対するNetflixは、認知率54.4%、利用経験率11.7%、現在利用率9.1%である。認知率についてこの2社に大きな差はなかったが、利用経験率と現在利用率を比較してみると差がみられた。利用経験率と現在利用率が高いということはNetflixと比べて、アマプラは継続率が高く、解約するユーザーが少ないことを意味している。
これらのことからアマプラには、再び利用したくなる、また、ずっと利用したくなる魅力があることが理解できた。アマプラの利用者を年齢層別で見ると、18〜34歳の増加率が最も高くなっている。年齢が若ければ若いほど有料動画サービスを利用する傾向が高い。アマプラには、学割プランも用意されており、大人の半額である月額250円で同じサービスを受けることができる。無料体験期間が6ヶ月という点も、学生が始めやすいため若者の利用者が多いのだと感じる。250円というコスパの良さは、学生の強い味方となっていると考えられる。
プライムビデオを選ぶ人は、月額料金をなるべく抑えて動画配信サービスを利用したい、無料期間にしっかりとサービスを試したい人、独占配信のコンテンツやCS放送などで配信されているコンテンツに興味がある人、最新作などのレンタル・セル作品や、その他の動画配信サービスも一緒に楽しみたい人などであると考えられる。
STP分析
ここまでアマプラの概要、魅力について考え述べてきたが、ここからは実際に企業のマーケティングでも用いられているSTP分析を使って、アマプラのヒットの理由について述べていきたい。STP分析をすることにより、市場でのアマプラのサービスの優位な立ち位置を探し出すことができるようになる。STP分析とは、マーケティングの父とも呼ばれるコトラーが提唱した手法で、「誰に」「何を」に重要な視点を考えるのに適している。
Segmentation(市場を細分化する)
通常であれば、STP分析をするにあたり、市場を細分化してニーズの似ている顧客層ごとに分類することでコンセプトを明確にしていく。
細分化するために、地理的変数、人口動態変数、心理的変数、行動変数の4つに分けて考える。
市場に存在する顧客を、年齢や性別などの様々な軸でグループ分けし、自社の製品やサービスとの相性を見極める。
今回は、分ける必要性がないと考えたので、動画を見る人、見ない人の大きく二つに分けて考えることにする。
Targeting(狙う市場を決定)
「全世帯をターゲットにしている。」
アマプラは価格を大きく変更することなく事業を進めてきた。さらに、低価格で豊富なサービスを利用することができ、学生も大人も値段をあまり気にすることなくprime会員になることができる。他の動画配信サービスは顧客の「映画やアニメが見たい」という意思がある人のみが顧客になる可能性があり、利用されるがアマプラの場合は、豊富なサービスの中から、知りもしなかったサービスに偶然出会い利用者になることも考えられている。これは顧客離れを防ぐことにもつながっている。
Positioning(自社の立ち位置を明確にする)
下のポジショニングマップについ説明していきたい。U-Nextは作品タイトル数が22万以上であり、他社と圧倒的に差をつけてはいるが、月額料金2189円であり、国内動画配信サービスの中で、最も高価である。それ故に、左上に位置している
一方で、Huluは作品タイトル数が10万以上であるが、月額料金1026円であり、国内動画配信サービスの一般的な価格であるため、真ん中よりに位置している。さらに、Netflixは様々な価格プランがある。ベーシックプランが880円と一般的な価格より少し安価ではあるが、今回比較している4つのサービスの中で、推定される作品数が唯一の1万以下であり、作品数が圧倒的に少ないため、真ん中よりの右下に位置している。Amazon Prime Videoは推定ではあるが1万作品以上あり、価格は圧倒的に安価である。その点が入会しやすく、続けやすい価格帯になっているのでないだろうか。
この4社を比較した際に、Amazon Prime Videoは安価で、作品数は多くもなく少なくもない。それ故、Netflixより少し右上に位置している。結果から値段とタイトル数が比例していることが分かった。しかしながら、Amazon Prime Videoはそれなりの作品数と種類があるのにも関わらず、他のサービスをつけてのこの安価である。そこで、アマプラは学生や新社会人、あまり動画配信サービスにお金をかけたくない人をターゲット顧客としているのではないだろうか。
さらに国内動画配信サービスの中で、特にコンテンツオリジナル作品に力を入れているAmazon Prime VideoとNetflixのそれぞれの国内オリジナル作品をカテゴライズしていきたい。
まずNetflixは私達が確認できた現在視聴できるNetflixオリジナル作品が97作品存在した。下図を確認していただくとわかる通り、アニメーション作品が5割近くを占めており、その次に、ドラマ作品が多いことがわかる。Netflixは火花や、浅草キッド、全裸監督といったNetflixに入会していない人も認知している高評価且つ、有名なオリジナル作品が多い印象だ。しかしながら、Netflixは愛の不時着、ストレンジャー・シングス 未知の世界、梨泰院クラス、イカゲームといった国内外の作品、特に韓国の作品を視聴する理由として入会している人の方が多いと思われる。実際に、この4作品は国内のNetflixオリジナル作品視聴ランキングでも国内の作品を抑えて上位に君臨している。国内のオリジナルコメディ番組は2つしか確認できなかったが、ロバート秋山によるクリエイターズファイル(~2021)と、今年から配信サービスが開始した千鳥の二人が主を務めるトークサバイバーである。
トークサバイバーの配信は、コメディのカラーは異なるがAmazon Prime Videoオリジナルのドキュメンタルシリーズの影響も少しは関係しているのではないだろうか。
一方で、 Prime Videoは私達が確認できた現在視聴できるPrimeオリジナル作品が56作品存在した。下図を確認していただくとわかる通り、コメディが5割近くを占めていることが分かる。その次に、前者同様にドラマ作品が多い。 Prime Videoで最も有名な国内オリジナル作品は、2016年から配信が開始したダウンタウンの松本人志が監修を務めるドキュメンタルシリーズである。この番組は数々の名シーンを残しており、この作品を見たいがために登録したひともいるのではないだろうか。
シリーズは10にも及び、地上波でオリジナルが配信されたり、海外の9カ国でも配信されていたりすることから、この番組が大変人気であり、支持率が高いことが分かる。実際に、シリーズ1は配信された1週間で、アマプラオリジナル作品の中で、最も多いストリーム数と最も長い視聴時間を記録している。さらにドキュメンタルと異なったリアクションがメインのFREEZE、車愛好家の芸能人が自ら車で戦う戦闘車といったアマプラオリジナルは、他社に比べオリジナルバラエティー作品に力を入れていることが分かった。
二つの動画配信サービスオリジナル作品を比較して、Netflixに比べ、Prime Videoはバラエティー、コメディオリジナル作品に力を入れていることが分かった。両者の共通している点はドラマ作品が二番目に多くの割合を占めていることである。しかしながら、Prime Videoのオリジナルドラマ作品を問われた際に大半の人は答えられないのではないだろうか。一方で、Netflixのオリジナルのドラマ作品を同様に質問された際、Netflixの入会者以外も答えられる人が多いと考えられる。なぜならば、コマーシャルや、マスメディア等で宣伝している作品のカテゴリーが両者とも異なるからである。
実際、アマプラはドキュメンタルのCMが多く見られているのに対し、Netflixは最新のオリジナルドラマ作品が多く見られる。つまり、アマプラは割合も多いコメディを売り出していて、Netflixは割合が最も多いアニメではなく、二番目に多いドラマ作品を売り出していることが分かった。さらに、アマプラは次々と新たな作品を配信するのではなく、ドキュメンタルやバチェラー等の同じ作品のシリーズが多く配信されている。それゆえ、新たな顧客ではなく、既存の顧客がいかに離れないかを重視しており、次に新たな顧客の獲得を考えているのではないかと考えられる。
まとめ
ここまで、アマプラがなぜヒットしたのかについて考え述べてきた。STP分析をした結果から、アマプラの強みは価格の安さとサービスの豊富さだということが改めて分かった。これらのことから、比較的安価で様々なサービスを楽しめるため、初めて動画配信サービスを利用する人でも気軽に始めることができるのだと考えられる。
アマプラはこれまでに、会員数が世界中で2億人突破しているなど好調であるが、この先もこのように順調に会員数を伸ばし続けることができるのか、また、現在会員である顧客がこの先ずっと会員のままで居続けてくれるのかなど課題は多いだろう。顧客離れを起こさないためのアマゾンの取り組みについて今後も私たちは目が離せないだろう。
<参考文献>
・「動画配信サービスの最新利用率ランキング!3位はNetflix、2位はTVer、1位は…!」 (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000060722.html)
閲覧日2022年4月20日
・「Amazonプライム、全世界の会員数が2億人を突破」
(https://corriente.top/amazonprime-reached-200million/) 2022年4月20日
・「Amazonプライム会員〝2億人突破″圧倒的に支持を集めるワケとは?」
(https://asagei.biz/excerpt/28031) 2022年4月20日
・「Amazon Prime Video利用者509万人、Netflix 171万人。重複は減少。ニールセン調査」 (https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1171970.html)
2022年4月25日
・「動画配信サービスどれがいい?決め手の調査結果【独自アンケート】」
(https://net-torisetsu.jp/vod-questionnaire/) 2022年4月25日
・「Amazonプライムについて」(https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=G6LDPN7YJHYKH2J6) 2022年4月25日
・「【最新2021年版】動画配信サブスクをガチで比較してみた」
(https://www.biborock.com/entry/dougamihoudai-compare) 2022年4月25日
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