見出し画像

キラキラよりエモいがいい「フィルムカメラ」

導入

現代では、片手に収まる小さな便利機器「スマートフォン」の普及によって簡単にいつでも、どこでもきれいな写真が撮れるようになった。その一方で、スマートフォンの普及によって若者のカメラ離れが起きていた。一昔前は、家族旅行や卒業旅行などでカメラを持って思い出作りをしている人たちが多かった。思い出をより鮮明に残したいと感じている人が増え、必然的に顧客はカメラの画質を求めるようになった。そのため、メーカーは顧客満足度を上げるためにカメラの画質を上げるようになった。今では、スマートフォンでもきれいな画質で写真を撮れるようになったのに、2021年若者の間でフィルムカメラが人気になったのはなぜだろう。今からこの謎を紐解いていく。

フィルムカメラの人気になったのは…

フィルムカメラについて説明する。カメラ本体に別売りのフィルムを入れて撮影することで、画像を記録できる仕組みを持ったカメラのことである。特徴として、手軽に買え、持ち運べるようになったカメラであるが、その場で見返すことができないことや、画質は粗い・ランニングコストがかかるといったデメリットも挙げられる。このように、一見デメリットが目立つフィルムカメラであるが、昨年は莫大な人気を誇った。なぜ人気になったのか紐解いていく。

人気になった理由として、我々はまず5つの理由を導き出した。

このような理由を考えた根拠として、私たちは次に三つのことを書き表した。

 一つ目は、デメリットをメリットとして変換することができることである。例えば、その場で見返すことができないといったデメリットは、現像するまで見られないことから、どんな風に撮れているか分からないといったワクワク感を消費者たちが感じることができるといったメリットとして変換できる。また、画質が荒いといったデメリットは、きれいな画質で写真が撮れるカメラにはない、味のある写真を撮ることができるというメリットに変換することができる。このように、デメリットとして捉えられていたものが、捉え方によってメリットとなり、フィルムカメラの価値を高めていったのである。これをより詳細に説明するため、様々な分析方法がある中、SWOT分析を用いて説明する。

 SWOT分析とは、マーケティングにおいて有名な分析の一つである。SWOT分析は「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」の頭文字SWOTから名付けられた、事業分析のツールである。

 SWOT分析では、一般的に自社の事業の状況を、内部環境(自社がもつ資産やブランド力、品質など)のプラス要因の「強み」とマイナス要因の「弱み」と、外部環境(自社を取り巻く、市場や競合、法律など)のプラス要因の「機会」とマイナス要因の「脅威」に分けて整理する分析方法である。この分析を行うメリットとして、強み・弱みといった企業内部の要因だけではなく、脅威や機会という外的要因まで取り込むことで客観的な視野を持った戦略が可能になることであることである。その企業や商品の強みだけではなく、脅威や弱みといったマイナス面も考慮する分析方法であれば、私たちが考え出した1つ目根拠の説明も可能であると考えたため、今回はこの分析方法を用いる。

 インスタントカメラの強み・弱み・機械・脅威について、私たちは高画質で撮れる写真では味わえない味の出た写真が撮れること、弱みは画質が粗いことや現像するまでに指定の場所に行かなければならないこと、機会は指定の場所や機械でしか現像できないことを逆手に取り、確実に思い出に振り返る時間が取れることや古風なモノが流行しているということ、脅威は一眼レフなどの高画質で写真が撮れるカメラであると考えた。これらを踏まえてクロス分析を作成した。それが、下記に示した図である。

【SWOT分析】

S:Strength (強み)
W:Weakness(弱み)
O:Opportunity(機会)
T:Threat(脅威)

これらの分析から、インスタントカメラは画質の粗さや現像する手間といったデメリットの部分を利点として捉え、それらを活かした戦略を立てていることがこの分析方法を用いてわかった。

 二つ目は、英語の「emotional」からきた「エモい」という語源について、1980年代のアメリカで広がったロックミュージックの一つのジャンルである”Emo”から派生した言葉である。メロディアスで情緒的に心情を吐露するような歌詞が独特の音楽ジャンル、emotionalを略したもの。その後、カルチャー好きの若者へ伝播し、現在のインターネットスラング的な用法へ広まる。2018年10代女子の流行語大賞一位となった。

 次に平成レトロの流行である。その流行った理由として、三つある。一つ目は、新型コロナウイルス流行による生活スタイルが大きく変わったことにより、平成の生活や時代の空気感により郷愁の入り混じる羨望。二つ目は、流行を生み出す若者の世代が、平成に幼少期を過ごしたという世代にまで若返ってきたこと。三つ目は、個性を表現したい若者が多いことである。共感性の高い、懐かしいアイテムやカルチャーを発掘すること自体が自己表現の手段となり、懐かしき平成の宝により注目された。このことから社会的要因があったと考えられる。

三つ目は、準拠集団の影響が考えられる。準拠集団とは、個人の行動は、個人の価値観や信念などによって決定されるだけでなく、個人がなんらかの関係を持つさまざまな社会集団の影響を受ける。こうした個人の行動に影響を与える集団を準拠集団と呼ぶ。その準拠集団の中でも間接的準拠集団に括られる『願望集団』の影響が大きいのではないだろうか。

憧れの芸能人やインフルエンサーなどがフィルムカメラを使っている様子や、実際に使用し撮影した写真をインスタグラムなどのSNSに載せることにより消費者は「同じものを使いたい」と感じ影響され購入する。そして、憧れて買った消費者も同じようにSNS上に使っている様子や写真を投稿する。しかし、一般人の我々の投稿を見て憧れて買うという人は少ないだろう。それゆえに、なぜ投稿しそこに影響され瞬く間に広まって言ったのだろうか。その理由の中に『共感型顕示的消費』がある。

インターネットが普及し、SNS時代となった今の顕示的消費者は「どうだ!すごいだろ!」と"見せびらかす"という要素は弱まり、SNSを通じて形成された準拠集団に対して、顕示的消費自体を楽しみ、「知識があることを示したい」、「他者の役に立ちたい」に加えて「他者から承認されたい」、「他者から共感を得たい」という"共感型顕示的消費"が発生している。この消費は従来の誇示型顕示的消費とは異なり、自分の所属する準拠集団からの共感を主目的としている。所属するというのは、なにかの団体ではなく、SNSであれば自分のフォロワーや同じような投稿をしている界隈の人のことを指すと考えられる。

【まとめ】

フィルムカメラは、画質が悪く、本体代に加えて現像代・時間がかかることから、デメリットが多く感じ取られるため一見消費者が興味を示さないような商品であると考えられる。

時代の流れに伴って画質が進化していくカメラを使っている我々にとって、画質が悪いことは逆に味があると捉え、指定の場所に行かなければならなしというコストと時間がかかるフィルムカメラは、思い出を確実に振り返られる時間を獲得できるというデメリットをメリットとして捉え、便利になりすぎた世の中に逆らっているように感じ取れた。

また、SNS社会になり、「エモい」、「インスタ映え」という言葉が浸透しSNSを意識した生活をするようになってきた。そのため、流行のモノを取り入れ自己発信用の行動をするようになった。フィルムカメラも自分たちの中で完結ではなく、SNSに撮った写真や撮っている姿を投稿するという行動をしている。

さらに、憧れの人の私生活を簡単にみることができるようになり同じものを購入し投稿することによって自分のフォロワーに見られ「いいね」という共感を得られることによって承認欲求が満たされる。

【参考文献】

◆ Instagram 清水寺 @kyoto_np (写真)

https://www.yamanashibank.co.jp/fuji_note/culture/emoi_imi.html(2021/7/14 ヒノキブンコ)

https://www.jaaa.ne.jp/wp-content/uploads/2020/03/49award_08.pdf (塩見 ありさ)

https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/92723/ (2021/8/31 山本 健太)

https://www.jmrlsi.co.jp/knowledge/yougo/my01/my0113.html(JMR生活総合研究所)

https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/? action=repository_action_common_download&item_id=20398&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1(田中 剛)

いいね、フォローしてくれると学生のやる気につながります