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意外と版元が怒った話

ミヤザキさんが写真共有してるから使わせて貰っちゃった!

ということで、今日は珍しくボードゲームの話です。

珍しくって言っちゃダメなんですけどね。ボードゲームカフェやっているわけですから(汗)

一昨日、とある海外メーカーの方とLINEしていたときの話です。
ちょっとした雑談で、「仕入れた商品、同じタイミングで並行輸入品が出回ったんですよね。なんか代理店から入れてるみたいな事を言っているんだけど、知ってます?」と話をしたところ、意外とお怒りになっていて「知らないから調べる!」という話になりました。

並行輸入も状況が変わっている

私も日本語版のボードゲームを作ったり、直でメーカーから輸入して和訳付きでゲームを売っているので、その辺の事情をちょっと考えれば解ることだったのですが、一昔前と今とではちょっと事情が変わっています。

少し前まで、日本やアジアのメーカーがドイツやアメリカのメーカーと契約してゲームを出す総数は少なかったのですが、最近は、こと評判の良い作品や、大きなメーカーの作品であれば、大抵のゲームが「日本」もしくはもっと広い「アジア」という括りで販売の契約が結ばれています。

どういうことかと言うと、一昔前は、その国の言語で自社のゲームを出す契約を持たないメーカーが殆どだったので、メーカー側はあまり並行輸入に煩くありませんでした。契約が無い国なら、並行輸入であっても売って貰った方が良いわけですから。

しかし、今は、日本とかアジアという括りで販売の権利を与えることが、以前に比べて格段に多くなっているため、大元のメーカーというよりは、その権利を買っているライセンシーメーカーが嫌がる。つまり当然ながら並行輸入はその地域の権利を買っているライセンシーにとって競合となるため、以前より煩くなっているのでしょう。

並行輸入品は和訳つけたらダメだよ

ただ、そのメーカー曰く

(原文ママ)
Let me explain to you, Publisher of Luna only provide languages exclusive not territory exclusive. From the legal side, we can not stop him. But in the business ethcial they should not doing this. So, I will send a warning to them to prevent this, but if they insist to, we can not stop them.

要は、前段では「地域」と書きましたが、正確に言うと「地域限定」ではなく「言語」で契約をしているため、ビジネス倫理的には並行輸入をするべきではないが、法的には止められないと言っています。

裏を返せば

彼らが提供元となる権利を得ている言語(日本語)について、その言語での提供を権利者である彼らに許可を取っていないのであれば、法的に止めることができる(かもしれない)ということです。

勝つか負けるかは分かりませんが、訴えられたら怖くないですか?(汗)
もし、海外の裁判所に来いとか言われたら泣いちゃいます……
オススメしないです。

並行輸入品の取り扱いは端的に止めた方が良い

実はここ数年で世界のボードゲーム事情が少し変わって来ていて、ボードゲームの「新しい権利ビジネス」が生まれています。

どういうものかと言うと、メーカーと様々な国の出版権を契約して、そのライセンスを使って自社で製品を作るのではなく、地域ごとに他社にサブライセンスを与えて、製品を作るビジネスです。

説明ヘタ……

要は「ウチ権利持ってて、アンタの国の言語で〇〇ってゲーム作れるけどやらない?もちろんライセンスは独占だよ。製造費用はアンタ持ちだよ」って持ち掛けて、ライセンスフィーを得るわけです。ライセンスの又貸しです。

この規模が結構エゲツない。

ライセンス買ってる会社は、商品は作らずライセンスフィーで儲けているわけですから、結構手当たり次第にライセンスを確保しまくって売る、いわば「プロの営業部隊」です。沢山の言語でゲームが出せれば出せるほど儲かるわけですから、出来るだけ、全世界にあまねくライセンスを売りに行くわけです。どちらかと言うと「あなたのゲームウチの国の言語で作らせてもらえませんか?」と声を掛けられるのを待つ「受け身」だったボードゲームのライセンス市場が、「あなたの国の言語で作りませんか?」という攻勢に転じているので、今までよりも広く権利が蒔かれ、多くのゲーム、多くの地域(言語)でそれぞれ「権利元が存在する」ことになっていくでしょう。

そうなれば、当然揉めますよ(汗)

日本のメーカーは優しいので、多少お目こぼししてくれるかもしれませんが(もちろん怒られるかもしれません)、海外のメーカーが優しいとは限らない。大きなリスクと言えます。そんなリスク犯すことないですよね。

動き早い

話していたメーカーが「どこだ?」と聞いてきたので、当該の並行輸入店を教えたら、すぐにコンタクトを取ったらしく「連絡したら、今後は売らないと言っている」と連絡がありました。動き早いな(笑)

ただ、メーカーの人の話を聞く限り、販売店がちょっと整合性の取れない嘘?とも取れることを言っていたようなので、そこは軽く指摘しておきました。(単純に言語の壁で齟齬があっただけかもしれませんが)

彼らは、日本語で製品を売るライセンスを購入しているので、キッチリ対応します。権利に対して対価を払っていないのであれば、侵害しないように商売をして欲しいと思います。

あ、あと、「大元のメーカーがいいよって言ったから良いでしょ」って、割と日本語版の権利元とユーザ間で揉め事があると出てくる話ですが、大抵「日本語の権利持ってるメーカーが良いって言うならウチ等は構わないさ」くらいのニュアンス(権利者は複数いる中で「ウチはいいよ」)だと思った方が良いです。ちゃんとそう言ってくれるメーカーも居ます。

どうしてもビジネスとしてやりたいなら、日本で他に扱うところはないのか?という確認をして、もしあるなら、そっちに問合せた方が良いと思います。(まあ、OKは出ないでしょうが……)或いは、大元のメーカーとちゃんと契約してください。契約しないとトラブルの元ですよ。

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