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たとえ誰の役に立たなくても幸せに生きるための練習を始める

20年後、わたしはどうしているだろう。というか、どうありたいだろう。そんなことをふと考えた。ちょっと前までは、60歳の頃には日本の重鎮の作家になってノーベル文学賞候補になって…なんて妄想をしていて、さらに妄想だけじゃ飽き足らず「実現させるためには逆算して今何をしなければいけないか決めなきゃ!」なんて思って、なるはやで芥川賞を取るためには、今年は文学界新人賞に応募して、それから…なんて考えていた。

いやいや。待て待て。60歳でノーベル文学賞取れる人生の逆算とか、今のわたしにできるはずがない。てか、誰もできない。実際にとった人をつかまえても、やっぱりできるはずがない。前の日記にもつながるけど、賞をとれるかとれないかは、売れるか売れないかと同じで、他人が決めること。自分にはどうしようもない。

そもそもなんでそんな60歳になりたいかといえば、やっぱり「すごい人」って思われたいからなわけで、それはわたしの本当の望みではないなってことは昨日気づいたわけですよ。さらに「すごい人」になれる確率はものすごく低くて、自分の努力だけでどうにかなるものではなくて、もしなれたとしてもそれで幸せになるとは限らなくて。そんなものに一生を捧げていいのだろうか。不幸な人生になる確率めっちゃ高いじゃないか。てか、ほぼ確定じゃないか。

誤解されないように言い訳すると、努力したくないと言ってるわけじゃない。「すごい人になるための努力」は不毛なんじゃないだろうか。もっと、自分が本当に望んでいることに対して努力をしたほうが楽しいはずだ。その結果、たまたま、すごい人と思われるかもしれない。が、それはオプションで。人生計画に入れてはいけない。というか、世の中のすごい人って、きっと、そういうふうに生まれているような気がする。

おととしも昨年も、わたしは仕事を引き受けすぎて(仕事しながら演劇と朗読劇をしていたからだろという説もある)、追い立てられるように働いていた。それがコロナで仕事がなくなって、家にいるようになって、自分のことを考えられるようになった。

さらに、コロナに対する世界各国の反応や対策が全然違うのを見て、今までと違う世界が見えてきた。日本の価値観しか知らないまま死んでいくのは、もったいないなと思った。忙しさに追われてた時は、旅行なんてしなくていいって思ってたし、自粛中はオンラインでどこでもつながるからわざわざ行かなくてもいいって思ってたけれど、今はすごく外国を訪れたい。メディアが映さない光景を見て、住む人の声を聞いて、ひとりの異国人として空気を感じ取ってみたい。もちろん、海外旅行ができるようになるのは、まだ先だろうけれど。

今日は、ものすごくめずらしく拭き掃除をした。ただ捨てるだけじゃもったいない布があったので、急に思い立った。ダイエットにもなるかもしれないという下心もあった。白く埃がつもっていたところがきれいになっていくのを見て、楽しい気持ちになる。こういうふうに暮らしていけたらいい、と、啓示のようなものがひらめく。

仕事ばかりじゃなくて、わたしは生活もしたい。料理もしたいし掃除もしたい。自分のいる場所の居心地をよくして、おいしいものを食べて、健康に気をつけて、体を長持ちさせて、自分で自分の機嫌を取って生きていきたい。そんな技術を20年かけて身に着けていきたい。

仕事をすると誰かの役に立つ。だから仕事をすると、とても充実して幸せな気持ちになる。でも60歳になったとき、70歳になったとき、そして80歳、90歳になったとき、わたしは誰かの役に立ち続けられるだろうか。求めてくれる人はいるだろうか。

たぶん60歳を超えると予備校も大学も、そろそろ若い人に譲ってね…というムードになり肩たたきや実質定年のようなものになるだろう。ライターはよくも悪くも仕事をくれる人とのつながりに依存しているので、年食って偉そうで面倒くさいなあと思われたら仕事は減っていく。体と頭がずっと元気とは限らない。病気もする。人に迷惑をかけるようになって死んだ方がましだと思うときもあるだろう。

誰かの役にたつ「仕事」だけではなく、自分の役に立つ「生活」にも向き合っていきたい。どうしたらわたしは心地よく毎日を過ごせるのか、そろそろ自分研究を始めていかないと、間に合わないかもしれない。

誰も求めてくれない。他者から評価されない。社会の役にも立たない。でも、それだけが人間の価値ではない、と堂々と胸を張って言えるように生きていきたい。誰から求められなくても、誰の役に立たなくても、自分で自分を幸せにする技術を身に着けていたら、きっと最期まで穏やかに生きられる。

写真は2年前の台湾旅行。八百屋さん。10月だったのでマンゴー終わってたけど。ああ、6月。マンゴーのシーズンだなあ。


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