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「圧倒的」「社会の底流をあぶり出す」 コンテスト審査の講評

日本民間放送連盟賞は、全国7つの地区審査で、報道・教養・エンタメ各分門の最優秀となった3作品が、中央審査に臨みます。

先日、九州・沖縄地区でWEB審査が行われました。RKBのTVドキュメンタリー『イントレランスの時代』は、地区で報道番組の最優秀賞に選ばれました。「イントレランス」とは「不寛容」という意味で、1916年公開のサイレント映画の題名でもあります。
昨年の連盟賞では、ラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』は、優秀賞でしたので、今回はもう一つ上を目指しています。

WEB講評での、4審査委員の発言をまとめました。

【S委員】
私は『イントレランスの時代』は2位としたが、1位とした審査委員が2人、2位が2人で、点数的には圧倒的な強さだった。
『イントレランスの時代』は、チャレンジングな作品。100年前の映画「イントレランス」は大傑作とも大失敗ともいわれている作品。これを冒頭にもってきて、「不寛容が現代日本で進行しているんじゃないのか」と語っていく。
ゴツゴした構成、次に何が出てくるのか分からない構成は、斬新で好き。これは教養番組かなとも思ったが、胸を打つ。今の現状をこういうふうに見るんだ、と。
個性的な番組。他にこういう手法はない。

【H委員】
圧倒された。今の時代が不寛容だとはっきりと見せつけられた。
神戸記者でなければできなかった。難しい構成だが、一人称でうまくできていた。
テレビで、川崎のヘイト、沖縄差別を扱うのは難しい。難しいものを慎重に扱っていて、訴えるものがあった。
日本第一党の桜井党首は、都知事選で18万票を獲った。そんな今の社会の底に流れるものをあぶり出していた。今のコロナの時代までも見事につないでいた。
神戸記者は、前の作品『シャッター 報道カメラマン 空白の10年』でも、テレビで一人称に取り組んでいる。一人称は難しいのだが、そうではない、と見せてくれた。
方法論として面白かった。

【M委員】
報道番組部門で選考する基準は何か。「今の時代とどう切り結ぶか」「どう映像として残すか」だ。『イントレランスの時代』は、ダントツだと思っている。
ヘイトデモやヘイトスピーチはここ数年問題になっているが、テレビ報道できちんと扱った例はほぼない。ヘイトの問題に向き合い記録したということだけでも高く評価していいだろう。
お子さんの障害も含めていて、「報道活動という方が相応しい」「ドキュメンタリーの完成度としてどうなのか」という議論はあるだろうが、欠点を差し置いても今、私たちはどうすべきか突き付けられた。 

【F委員】
現在の日本が直面している不寛容な空気が、挑戦的に描かれていた。障害を持つ子の親という立場で、やまゆり園の加害者と向き合う。
不寛容がどこから来るのかという問いについて、客観報道とは言えないかもしれないが、圧倒的な説得力があった。在日の問題、沖縄差別を同じように描いていた。オムニバス的な構成には課題もあったが、問いかけているものが圧倒的だった。

 ※中央審査は、秋に開催されます。

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