マガジンのカバー画像

『雲仙記者青春記』 新米記者が遭遇した、災害報道の現場

16
記者になったばかりの新米が、突然の大災害に遭遇。1万人を超える避難住民が出ているのに、経験はゼロ。右往左往しながら地元に住み込み、5年後に災害が終わるまで見届けた記録が、『雲仙記…
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

『雲仙記者青春記』第6章 1993年4月28日、立ち直りつつある島原を土石流が叩きのめした

『雲仙記者日記 島原前線本部で普賢岳と暮らした1500日』 (1995年11月ジャストシステム刊、2021年2月3日第6章公開) けた違いの大土石流 「俺はどうあがいても『雲仙記者』にはなれない。『6・3』の修羅場も知らないしな」  あるとき、ぼくと同じころに島原に赴任した他社の記者が、残念そうに言った。  「雲仙記者」。彼の言い方には、ある種の敬意がにじんでいた。  毎日新聞なら浜野さんだ。彼なしに毎日新聞の普賢岳報道は語れない。社内では「普賢岳のことなら、浜ちゃんに聞

『雲仙記者青春記』第7章 謎のボランティア騒動

『雲仙記者日記 島原前線本部で普賢岳と暮らした1500日』 (1995年11月ジャストシステム刊、2021年2月17日第7章公開) 彼らは、一体何者なのか  話は1年ほど遡る。  前線本部に着任して間もない1992年6月末。あるレストランで、ぼくは近くの席の会話に聞き耳を立てていた。その席にいる人たちに気付かれないよう、背を向けて。  「こんないい話はない。被災者は喜びますよ」  斜め後ろのボックス席には、3人の男性と若い女性が1人。  身を乗り出してしゃべり続けている