見出し画像

地形を知れば防災も楽しい。「デジタル標高地形図」を軽い感じで見てみる。

防災って堅苦しくて楽しくない…

そういうイメージがありますよね。でも楽しく防災の「きっかけ」を作る方法があるんです。その1つが自分の住んでいる地域の「地形」を知ること。想像力を膨らませて地形を知ると、土地の成り立ちや、どんな災害にあっていたのかも推定出来るんです。

ただ、あれもこれも見るのは難しそうでしんどい…

そこで地形に興味を持つ第一歩として個人的にオススメなのは、国土地理院の「デジタル標高地形図」。地域ごとに地形がカラフルに1枚に示され、一目でどんなところかわかります。入り口にはもってこいです。

今回は堅い話を抜きにして軽い感じで見ていきます。興味を持つ「きっかけ」になればと。

「デジタル標高地形図」何がわかる?

関東地方の地形図

関東のデジタル標高地形図です。カラフルですね。

色で何がわかるかというと、標高の違いです。
低い方から、青→緑→黄→オレンジ→赤と変わっていきます。

関東でまず注目するのは、首都圏など人口が多いところは青や緑など低い土地が多い…。西や北に行くほど標高が高くなっていて、そこには箱根、富士山、浅間山、赤城山などなど火山も多くなっていることがわかります。

何が言いたいかというと、低い土地は繰り返された「川の氾濫」によって形成された土地。高い土地は火山の「噴火」や、周辺に積もった火山灰などが長年「風」で飛ばされたり、「土砂崩れ」で流されたりして形成されたと推定できるんです。土地の隆起や沈降は「地震」の影響も考えられますよね。土地が動くということは多くは地震ですので。

つまり「繰り返された災害によって形成された土地に住んでいる」ということになります。

「東京」詳しい地形図見ると…

東京都区部の地形図

もっと詳しく見てみましょう。

こちらは東京都区部の地形図。皇居のある付近を境に左右で大きな差があることがわかりますね。平たんな土地に思える東京区部でもこれだけ大きな違いが…。

真っ青な東側は江戸川、荒川など大河川が流れ、ゼロメートル地帯も広がっていることがわかります。つまり、川が氾濫すれば広範囲で浸水してしまうことになります。

西側の高い土地(武蔵野台地)などでもよく見れば細かい筋状の起伏があり、水が集まりやすい低い土地では「内水氾濫」(下水への排水機能が追いつかなくなり水があふれる)などで浸水のおそれがあることに。

川の土砂が積もってできた東側の土地では地盤が弱いところが多く、地震の揺れにも弱い…などと地盤の強弱も類推できます。

「大阪城」なんでそこに?でも断層が

次に大阪に目を移してみます。

大阪平野の地形図

昔は湿地帯も多かったというのがなるほどと思えるほど低い土地が多い…。淀川の下流にはゼロメートル地帯が広がっています。大阪湾の近くは開発によって土地が出来ていますがその多くが青色です。つまり、川の氾濫や津波、高潮などで浸水しやすい土地であることが推定できます。

さて、真ん中に小島のようにある「大阪城」。

お堀に囲まれているからそう見えますが、南北に延びる台地の上にありますね。「上町台地」です。

何でそこに…。

その理由の一つとして、平たんな土地を見渡せる、かつ浸水しにくい場所にあるからだと推定できます。敵の襲来にも水害にも備えられる、という感じです。

ただ、この台地、なぜ出来たのかというと、過去繰り返し発生した「活断層」による地震でできたとされています。

台地の左側は南北でライン状になっているのがわかりますよね。かつて海岸線が近かったことから浸食によってこのようにわかりやすい高低差が出ているところもありますが、そこには「上町断層帯」という「活断層」が存在しています。この断層の動きによって隆起して台地になったのです。

何が言いたいのかというと…いつかはこの断層帯が動いて大地震が発生、この「台地周辺が激しい揺れに襲われる可能性が高い」こと。地震本部によると、活動の平均間隔は「約8000年」で、最後の活動は「約9000年前以前」とされています。

数十年や数百年に一度などとされる大規模な水害に比べて、活断層による地震の間隔は数千年とか数万年単位とはるかに長い間隔。人間の寿命からすればほど遠い間隔、歴史にもない時代を含めた間隔です。

そもそも昔の人は活断層による地震が繰り返されるなんて知らないでしょうし、水害のほうが多発していたわけで、台地に大阪城を作ったことは仕方ないことです。

でも、現代の人は地震のリスクがあることを忘れてはいけません。

故郷「伊豆大島」を見てみると…

故郷 伊豆大島の地形図

さて、最後に見るのは私が生まれ育った故郷「伊豆大島」の標高地形図です。とても美しく自然豊かでいいところです。大好きです。

火山島ですから真ん中の山頂付近に火口がありますね。その周辺の標高が最も高く末広がりに平たんになっていく…。

北西の一番平たんな土地が広がっているところに空港がありますね。作るならそこしかない、と言う場所です。

伊豆大島南部の地形ズーム(実家がある)

私の実家がある伊豆大島の南部をもっと詳しく見てみます。

まず気づくのは山頂火口よりも南にポコポコと小さな山が。さらに南東側には馬のひづめのような跡が2つみえます(馬蹄形地形などともいいます)。そのうち1つ、海に面しているのは波浮港という風光明媚な港です。

かつての噴火の形跡「波浮港」

実はこれらはすべて、昔の噴火の形跡です。大島は山頂の火口だけでなく、北西ー南東にかけてこのような小さな噴火の形跡が数多くあります。つまり、噴火のリスクが火口以外にも数多くあることがわかるんです。

さらにさらに…斜面に沿って谷筋が沢山あるのがわかりますよね。

ガリー(ガリとも)です。

何だガリーって…雨などの水の流れによって地表面が削られてできた地形のことをいいます。つまりこの地形の周辺では繰り返し土石流など土砂災害があったことも示しています。大島では砂浜もこのガリーの流れの終着点に多く見られます。

伊豆大島南西部の「砂の浜」 遠くには利島

ということで、私の実家近くには「噴火」のリスク、「土砂災害」のリスクが多いことがわかります。実際に大島はこの2つの災害に繰り返し悩まされてきました。ただそれと同時に美しい地形や自然の恵みを供給しています。

何度も言います。

関東も大阪もそうだったように、私たちは災害で形成された土地に生きています。

興味を持ったら「地理院地図」で

かなり簡単に説明してきましたが、多少は地形図に興味を持っていただけたでしょうか…。

もし興味を持っていただいたならば、次は「地理院地図」を試してみてほしいです。

「地理院地図」でデジタル標高地形図もみられる

地名がわかる通常の地図に重ねながら、ここまで紹介した「デジタル標高地形図」のほか、ブラタモリでもよく出てくる「赤色立体図」、全国の標高を示した「色別標高図」も見ることが出来ます。「活断層」や「地質」についても知ることが出来ます。ズームアップも簡単です。

この「地理院地図」非常に優れもので、3Dで地形を見ることも出来ます。また、過去に撮影された航空写真や衛星写真から、自分が住んでいる地域の「今昔」も確認できます。災害時の航空写真なども。

まだまだ確認できることは沢山ありますが、詳しく説明すると長くなるのでここでは割愛します。いずれまた機会があれば説明します。操作に慣れるととても便利で私もヘビーユーザーです。

地形を知ったら、歩きながら考えてみる

さて、こうした地図で地形を知ってもらえたならば、最後にやってほしいのは「実際に歩いてみること」です。

理解が深まるし、いつもの風景が違って見えて楽しいです。

伊豆大島 道を歩きながら地形を考える

「ここの土地は低いな…」「この坂は何だろう…」「あの山は…」

片手に地元のハザードマップを持っていると、さらによいと思います。「浸水」や「土砂災害」「地震」「噴火」など、地形と災害のリスクは一致することが多いからです。

また、ハザードマップには記載されていないリスクにも気づくチャンスをくれます。

「浸水リスクは書かれてないけど川の近くでこの土地は低い。土砂災害のリスクは示されていないけど、斜面が近くにある…。大雨の時に近づくのをやめておこう」などなど。

ここまで行くのは少しハイレベルかもしれませんが、やってみるとそんなに難しくないです。

でもまずは、軽い気持ちでいいので地形図を見てみてください。

実は「あなたの防災」がスタートしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?