過去問を解くことの有効性

過去問は早い時期に解くべきである

入試問題にはすべての答えが書かれています。
「答え」というのは、その問題の解答ではなく、受験生がどれだけ勉強すればこの大学に合格できるかという「答え」です。
大学によって出題される分野には、ある程度の偏りがあります。たとえそれが同じ偏差値の大学でも、大学によって「ばらつき」が存在します。
それらは過去問に当たることなくして身に付けることはできません。

一般的な受験生は、入試問題の過去問を直前期の力試しに利用される方が多いです。
しかしこれは一番もったいない過去問の利用方法です。
むしろ過去問は、一通り学習を終えた段階で、「この大学に合格するためにはどのような学習をすれば良いのか」という指針を見つけるために解くものなのです。

どのような学習をすべきかというのは人によって変わります。同じ偏差値の人が同じ問題を見ても「私は、近現代史はそこそこできているけど、文化史をしっかりやらなければいけない」と思う人もいれば「文化史はそこそこできるな。でも近現代史が弱いな」という人もいます。
先生や参考書の言葉は、あくまでも受験生全体の平均値を取ったアドバイスに過ぎません。あなたが苦手な部分はあなたが見つけなければいけません。


過去問の解き方

過去問をやるタイミングは、一通りの学習を終わった段階です。一通りの学習を終わった段階で1年分ずつ過去問をやっていきましょう。1年分の過去問を解くことによって、自分の学習方針がある程度見えてきます。見えてきたらそれに対して対策を講じればよいわけです。その対策をある程度学習を行った段階で次の年度の過去問をやっていくのです。
まず手始めに、自分が滑り止めと考えている大学の過去問をやってください。過去問を使いながら知識を固めていくのです。


過去問の学習効果

過去問の学習には、まだまだ大きな効果があります。
それは過去問を解くことで日本史の実力がつくということです。
私は、仕事柄年間1万問以上の入試問題を解いています。
私も日本史の講義を行う前は、自分の専門分野以外については一般的な受験生と同じぐらいの知識しかありませんでした。しかし過去問を多く解くことによって、あらゆるタイプの問題を学習することができ、受験に必要な内容であればどのようなことを聞かれても答えられる状態になりました。
私にとっては過去問が先生というわけです。


過去問に多く見られる「重なり」

過去問にはそれほど多くとかなくても、「重なり」というものがあります。過去問を5~6年分ぐらいやっていると、「これどこかで見た問題だな」といった既視感に襲われます。これは決して同じ問題を2度やってしまったというわけではありません。まったく同じような問題が再度出題されたということです。
例えば琉球の歴史などは、5年分か6年分の過去問を見ると必ず問題が出題されていると言っても過言ではありません。
出題者が出したい部分というのはある程度の偏りがあります。これは出題者が「うちの大学に入る上で知っておいてもらいたいこと」という意味です。
また出題者は「得点差のつく問題」を出したいと思っています。だからといって得点差さえつけば良いというわけではありません。実力のある受験生が得点できて、実力のない受験生が得点できないことで「得点差がつく」問題です。
しかしこのような得点差のつく問題はそんなに多くありません。そのため、得点差がつく問題は重複して出される傾向にあるわけです。


一通り学習が終わった受験生がやるべきこと

一通り学習終わった受験生については、過去問を多く消化することと、自分の知識が抜けないように一問一答などで定着を図ること以外はやるは必要ないと考えています。

自分の受ける大学の過去問でなくても解くべき理由

入試問題には多くの「重なり」があります。つまりよく出題される部分については大学学部を問わずよく出題されてくるというところです。多く入試問題を解くことによって「解きながら覚えていく」という効果があるわけです。
ですから自分の受けない大学の入試問題を練習することは非常に効果的であると言えます。ただ特殊な傾向を持つ大学の入試問題を解くことは効果的ではありません。
例えば東京大学は非常にエレガントな問題を出題します。東京大学の字数指定は絶対とも言えます。 論述問題でありながら一つの解答に受験生を導き出すという点においてはものすごく優れた問題と言えます。だからといってすべての受験生が東京大学の問題で学習すべきかと言うとそうではありません。むしろ東京大学を受験する学生以外は東京大学の問題をやる必要はないと考えます。このことは早稲田大学の問題などにも当てはまります。
ですからこの「カコもん」のシリーズでは、 それらの大学のリリースの予定は現在ありません。全ての受験生が実力を上げる上で 有効な問題を出す大学に絞り込んで出版していきます。ですから Kindle Unlimited などを使って、自分の受ける大学はもちろんのことを受けない大学の問題についても積極的に取り組んで下さい。


自分で過去問を解いているだけでは発見できないこと

ただ最近はインターネットなどで過去問を容易に入手することができます。 ですからわざわざ書物で過去問を解くという必要性がないと感じる人は多いと思います。
しかしそれらの素材については問題と解答が記されているだけ、もしくは申し訳程度の解説が載っている程度のものがほとんどです。
ただ一見受験生が解けないと思っているような問題でも実は解ける問題が多いのが日本史の問題です。一見自分の知らない用語が出てきているように見えても実は自分の知っている知識を動員すれば答えを導き出せる問題が本当に多く、それらの問題は実際多くの受験生が溶けていません。
これは非常にもったいないことです。
本書では、一つの設問に対して原則1ページを用いて、正解の導き出し方について詳しく解説しています。
私自身問題を解いていて、ものすごくエレガントな問題だと感動することがあります。それは一見解けないように見えていても実は受験生の力で解けるように巧妙に仕組まれた問題です。ただこのような問題の多くは受験生は解けていません。
もしこれらの問題がすべて解けるようになれば、多くの受験生は今の実力でもっともっと得点力を上げることができます。
過去問を学ぶということは、 今の実力で得点力を上げることを意味するという側面もあるわけです。


問題には一問一答の該当単元が記されています

全ての問題には拙著『日本史B 一問一答完全版』(東進ブックス)の該当単元が記されています。ですから間違った問題については一問一答の該当する問題にチェックを入れるなどして重点的に学習することが可能です。

本書を使って早めにあなたが行きたい大学に自分の実力をカスタマイズして下さい。それが合格への最短の距離であると考えます。

金谷俊一郎


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