「歎異抄」を読んでみよう(2)
序 はじめに
「よけいなことかなー」とも思うんだけど、最近のまわりのよう すを見ていると、親鸞さまが話してくれたことと、なーんか 違ってきちゃってるみたいでさ、なんかこのまんまだと、後々おかしなことになっちゃいそうなんだよね。せっかくいろんなご縁で 易しい教えにあえたのにさっ。自分の私利私欲に走って、他力の教えをねじ曲げて良いと思ってるんかねぇ。そんな訳で、かつて 親鸞さまが話してくださったことでおぼえている分だけでも文章に しておこうと思ったわけ。なにより、共にお念仏に生きる人たちが、 今後、疑いの心を持たないですみますようにってね。
ひそかに愚案を回らしてほぼ古今を勘ふるに、先師(親鸞)の口 伝の真信に異なることを歎き、後学相続の疑惑有ることを思ふに、 幸ひに有縁の知識によらずんば、いかでか易行の一門に入ることを 得んや。まつたく自見の覚悟をもつて他力の宗旨を乱ることなかれ。 よつて故親鸞聖人の御物語の趣、耳の底に留むるところいささかこ れをしるす。ひとへに同心行者の不審を散ぜんがためなりと云々。
親鸞聖人は存在したか
現在、日本の仏教信徒の人数では最大である浄土真宗の宗祖である親鸞聖人ではありますが、明治頃には実在しないのではないかという説もあったくらいです。
それは、親鸞聖人がご自身のことを語られす、ほとんど記録に残されなかったためです。
親鸞聖人は、ご自身の信仰は阿弥陀如来から賜ったものであって、それは、自身が見いだしたものではなく、仏様から脈々と続いた善知識にお育てもらった結果であると承知していました。
主著の「教行信証」はそのことが書かれています。そう言った意味でご自身のことは関係ないのです。
しかし、私たちは親鸞聖人が信仰をいただくまで、どのような生き方をされたか、何を考えられたのか、特に、当時禁忌であった妻帯肉食に至った意味を、悪人正機を語られたお気持ちを知りたいと思います。
ですから、吉川英治や五木寛之の小説だったり、ノンフィクションとして書かれている親鸞聖人の人生は、存在する少ない記録を元に、人としての親鸞聖人を知りたいがために作りあげられ、読まれているのです。
その中で、「歎異抄」は親鸞聖人のおそばにいた唯円房が、亡くなった師を思い出して記録したものとして大変に貴重です。
私たちも親鸞聖人にお会いしたいのです。
唯円房が思っていたこと
宗教には「秘伝」と呼ばれているものがあります。
伝授関係において相伝される内容が特別のものであることを示す用語,またその伝授の方法をいう。すでに奈良・平安期以来の仏教教学や学問諸道の家学にみられ,室町末の《日葡辞書》には〈かくし伝ゆる,すなわち隠(かく)いて教ゆる,こっそりと教えること〉と語釈がみえる。類義語に秘事口伝,秘説,密伝,奥説などがある。上の教学,家学から茶道,花道,武道など芸能諸分野に至る教育と練習はおのおの固有の形式に習熟することを基礎として〈稽古〉が重視される。
浄土真宗は、ただ「信じる」ことのみが強調されます。ですから「易行」と呼ばれるのです。
しかし、人はそれこそも「信じる」ことができません。
「何か特別ことが他にあるのではないか」
と考えます。
親鸞聖人の浄土真宗にはそのようなことはまるでありません。
ところが、当時、息子の善鸞によって、異なった信心が流布されたり、心得違いの念仏を広めるものがいたりという状況がありました。
そこで、唯円房いより「異」義・異説が行われるのを「歎」いて書かれたのが「歎異抄」です。
唯円房の気持ち
唯円房が異義・異説を歎いていたのは間違いないでしょう。
しかし、私は歎異抄を読むといつも感じるのです。
歎異抄に描かれている親鸞聖人の姿のなんと生き生きしたことか。
唯円房がいかに親鸞聖人を慕っており、出会えたことに感謝して、感動して、心が震えていたか。
親鸞聖人を思い描き、後々の人に知ってもらいたいと思っていたか。
親鸞聖人の存在に感じた唯円房の感動に触れているように思うのです。
それは、親鸞聖人が法然上人に対して感じていたものと同じだと言えるでしょう。
「歎異抄」は門外不出であった
右この聖教は、当流大事の聖教となすなり。無宿善の機において は、左右なく、これを許すべからざるものなり。 釈蓮如(花押)
歎異抄は蓮如上人により、信心のないものには見せてはいけないと伝えられました。
これから見て行くことになりますが、それぞれの言葉が鋭い刃のような強さがあります。そこから、親鸞聖人がどのような人であったかも知ることができます。
だからこそ、歎異抄の言葉を利用して人々を惑わせて利用しようということも可能です。現代でもそういうことをしている者もいます。
私もその一人と思われるかもしれませんが・・・・
そうであっても、これが縁で親鸞聖人のお言葉がその人に届くのであれば、それでいいのではないかと思うのです。
解説は
歎異抄・執持鈔・口伝鈔・改邪鈔 <東洋文庫 33> 石田瑞麿 訳
を参考にしています。
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