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インタビュー編: 機械学習×アルゴリズム取引 Bert Mouler氏

今回はインタビュー編です。リンクはこちらです。

字幕もなくリスニングしながら書いているので、間違えないようには努力しますが、間違えている内容がございましたらご容赦くださいませ。

Bert Moulerって誰?

2007年から株や先物取引を開始、そこから機械学習で取引機会を探すようになる。

インタビュー内容

Q いつマーケットを見つけたのか?そして初めに何をしたのか?

2007年にフィナンシャルアドバイザーである友人に勧められて株を買った。ある銘柄を購入したが、どんどん下がってナンピンをしていった。

そこから、財務諸表やマーケットコンセンサス、テクニカル分析を始めた。当時化学を専攻していたので、テクニカル分析は簡単そうに見えて、色々と試行錯誤や本を読んでいるうちに、そんな簡単ではないことに気が付いて、結局オプションを取引することにした。一晩で億を稼ぐ夢を見て。

しかし、ものすごい勢いで資産は減っていって、出金までした。

絶望した、人生でこんなにお金を失う経験がなかったからだ。

しかし、同時に逆をしていればこんな大金を稼ぐことも出来たと思い、そっち側の人間になりたいと考えた。

それから、興味ある本には全て読み、自分はテクニカル的、数学的な手法が合っていると考え、そっちの方向性に進んだ。

Q なるほど、でも、新しく投資を始める前に大金を用意する必要があり、そのお金でビジネスを学ぶ等他にも沢山のことが出来たと思いますが、なぜ、株に固執したのでしょうか?

正直に言うと何もせずにお金が欲しかったからです。

お金を寝かして、一年後に凄いお金持ちになる。

現実はそんなに甘くなかったですけどね(笑)

Q 最初の一年から二年のトレーディングはどうだったのでしょうか?あなたは、最初はナンピンをして、次はテクニカル分析をしたと言っていましたが、その後はどのような戦略を取ったのでしょうか?

最初はRSIやストキャスティクス等の指標を使用していたが、正直私はかなり下手でした(笑)私は沢山のトレーダーの知り合いがいるが、その中でよく言われていることは、間違ったトレーディングでうまくいくことは、間違った癖を身に着けることになります。私は勝つともっと勝ちたいという欲求が出て、間違えた選択をしていました(笑)

Q では、最初の二年間について要約しましょう。最初の二年間で最も困難だったことや教訓は何だったのでしょうか?

不十分な状態で、リスクを取り過ぎていていたこと、そして、過信し過ぎていたことです。当たり前ですが、もしあなたがまだ若ければ、年20%の成績を叩き出せるなら、いくらでもお金を作ることが出来ます。

Q あなたは最初の二年間物凄い読書をしていたと言っていましたね。そこからアドバイス出来ることはありますか?

A)99%の内容は無駄です、例えば、サポートやレジスタンスに関する話があっても、本の中では、それが機能した話しかしないからです。なぜなら、それがいつ機能していつ機能しないのかについて知る必要があるからです。

しかし、ここで言った悪い本も読むこと自体は良いことがあります。他の人がどのように考えているのかについて知り、新しい知見を得ること、考えることが出来るからです。

例えば、他の人がコモディティスプレッド(commodity-product spread)を取引していたとすると、あなたはそれまでに知らなかった商品を知ることが出来、自分で研究することが出来るからです。

Q あなたはどのようにして定量分析の方面に進んだのでしょうか?

フレームワークが無かったからです。例えば6つのパターンを用意したとしても、もしかしたらその6つのパターンが間違っているかもしれません。

そこで、ビジネス的なアプローチで、参入障壁が高い方法を考えたのです。

例えば、日中にHFTではないデイトレをしようとして、HFTの流動性を活用出来ますが、HFTと競合しない戦略を取ること等です。

より高度な数学の知識が必要になると、より人が少ないというような具合です。

Q なるほど、そこに深入りする前に、あなたの学業に関する背景を聞いてもよろしいですか?

A)学部ではビジネス経済、グローバル&国際的研究学部で生物化学、分子生物学を専攻、修士では情報学(人口知能、機械学習)で、勉強はとても好きだったので、CourseraやADAX等も見ていて、実は、初めての機械学習の授業はCourseraで履修しました。これらはリスクもなく、無理だったときは履修をあきらめることが出来るので、とても気軽に受けていました。

Q ひとつ前の質問でそれが定量分析に進んだ理由ですね、では、機械学習で躓いたことは何でしょうか?

A)正直、機械学習は純粋数学等の学問と比べると簡単です。例えば、平面上の円の面積を求めたいときに、数学であれば、円の方程式から複雑な計算をして結果を導きますが、統計ではモンテカルロシミュレーションで一発で面積が出ます。今まで数学で厳密解を求めていたのに対し、機械学習では推定するだけで良いんです。

Q どのようにマーケットにアプローチしましたか?

A)私は進化的計算(evolutionary computation)を使用しています。計算が過去の状態に依存するため、突然変なことが起きないから好きです。ニューラルネットワークや神経回帰(neurography regression?)等のテクニックは好きではないです、なぜなら、係数を決めなければならず、それが見えないからです。

日中にトレーディングして金曜日には全部現金化します。毎日でも90%ほどのポートフォリオは現金化します。注文は全部指値注文で、あまりマーケットを見ないようにします。なぜなら、あり得ないこと(6σまたはblack swan event)で取引することを回避するためです。

先物と株を取引してますが、リスク管理は一番大事です。インデックスとアップルを取引きすれば、リスクが減るように。

Q では、最初の質問に戻るかもしれませんが、機械学習を全く知らない人に対してどのように説明しますか?

とても簡単な例から言うと、まず平面上に適当な点達があり、そこに線を引きます。どのような線かと言いますと、一番それらの点を表せるような線です。これをベビー機械学習と呼びましょう(笑)

私が使っているのはこの線の傾きがなく、0という原点から始まり、そこから点達を表現する方法を探索していきます。つまり、プログラムからプログラムを書くということです。

Q なるほど、これは関係あるか分かりませんが、日常的に使われている機械学習の例を挙げていただけないでしょうか?

A)Googleは常に機械学習を使っていますね、ユーザーが検索するときに、その人の位置情報や言語等を学習して、その人が欲しい情報を出そうとします。

Q では、質問をトレーディングに戻しましょう。あなたは、機械学習でどのように効率的な投資戦略を構築、発見しているのでしょうか?

A)沢山の人がご存じかどうか分かりませんが、機械学習の強みは30年続いています。私は投資戦略を最適化はしておりませんが、私はベストな時間を見つけて取引しているだけです。私は構造上に深刻な問題が無ければ、使えるデータは全て使って、その中で機能しない戦略は取りません。人によっては2003年以前のデータは使わない等を推奨している人がいますが、私はそれをしません。

Q もし明日に新しい投資戦略を構築したい場合、ライブ運用を始める前に具体的にどのようなステップで開発するのでしょうか?

A)まずは自分のポートフォリオを見て何を取引きしているかを見ます。そして、ある米株の銘柄を取引していたとして、次に私は米株以外で次に流動性が高い市場を探します。為替市場になりますが、恐らくこの場合私はユーロを取引することにするでしょう。そして、ユーロのデータをダウンロードして、目的関数やその他明確な基準がある機械学習のソフトウェアに学習させます。交差検証等で検証の妥当性を確認します。全ての通貨で機能する必要はないですが、シャープレシオ1.5を達成する為なら、5変数未満で達成可能です。やり始める前に知るべきことがあります。それは、市場で最大どれくらいの利益が見込めるか、そして、もう一つは、あなたのシステムがそれに対してどれくらいの利益を達成しているかです。

Q あなたは話したことをもう少し詳しく話してください。あなたは、データをダウンロードしてから、そのデータを機械学習関連のソフトウェアに入力すると言いましたね。具体的にどんな目的で何が行われているのでしょうか?

A)では、まず1万個のシステムをランダムに生成するとします。例えば、あるモデルでは、移動平均線やVWAPを使ったモデルだとします。私は実際には価格パターンや季節性を見ますけど。その一万個のモデルから上位1000個を選ぶとして、それぞれのモデルのルールはバラバラです。そこから、シャープレシオやドローダウン、取引数等の目的関数に基づいて最適なトレーディング戦略が生まれます。私はよりロバスト性と成績により注意します。例えば、あなたは10個のとても優秀な戦略があるとして、それらはそれぞれ違う局面を捉えてくれますよね。

Q どのようにして1万個ものシステムを思いつくのでしょうか?

A)移動平均以外のインジケーターにも様々な変数が株価を説明することが出来ます。株であればTwitterのセンチメンタルや、コモディティであれば限月毎のスプレッド等です。

Q)みんながよく使うような手法(戦略を書いてバックテストして最適化するような)に対して機械学習を使う場合のメリットは何でしょうか?

A)よく皆さんが機械学習はうまくいかないと言いますが、それは違います。例えば、数学的に言うならば、写像(戦略)の空間があり、この空間には任意の戦略が含まれているとします。この空間の中では、四則演算によって任意の損益を生み出せます。要するに時間さえあれば、どんな戦略でも実現可能で、聖杯(biblical system)を見つけるのに機械学習を使う必要はないですが、あまりにも聖杯を見つけるのに時間がかかるので、機械学習を使っているということです。

Q では、機械学習で戦略を見つけることと従来の戦略を見つける方法での決定的な違いは何でしょうか?

A)ここではデータに基づいた戦略とモデルに基づいた戦略があるとします。例えば、移動平均線を使った戦略でも、短期移動平均線と長期移動平均線が交差して取引するようなケースでも様々な変数が存在して、それらを試すのは非常に時間がかかります。また、他にも沢山のシンボルを見て投資判断するのに大量のモニターが必要になったりと人間が戦略を構築するのに限界があります。それに対して機械学習はそれらをまとめて考慮して投資判断に持っていけます。

Q 機械学習ですと必ずしも貴方の中で論理的である必要がなく、うまくいっても原因が分からないと思っていて、私は統計的に説明しやすいことを求めれば良いと思うのですが、いかがでしょうか?

A)昔友人とトレーディングの話をしていて、このチャートがドラゴンパターンだから、これをブレイクしたらうんたらかんたらって話をしましたが、そういうのでもちろん投資判断しませんが、しかし、私たちは将来のことをちっとも分かりません。例えば、最初の人は火がどこから来たのかも分かりません。

だからと言って、火を使うなと話にはならず、火はあらゆる所で使われます。

つまり、分からないと言っても使い道はあるのです。

例えば、S&P500インデックスはあらゆる場面でファクターとして使われます。それがなぜ相関を持つのかについて知る必要もなく、年利20%で運用出来れば10年で莫大な資産になり、誰も理由なんて気にしたりしません。私たちが投資をしている理由はビジネスであり、市場を説明したいだけならエコノミストになればいいと思います。つまり、私たちはビジネスで投資をしているのです。

Q それは非常に良い見解ですね。市場が変化するにつれて、機械学習も進化したりするのでしょうか?

A)それはしません。私のシステムは相対的に単純です。一つか二つの「自由な変数(free variables)」しかありません。

Q 「自由な変数」とは何でしょうか?

A)最適化するための変数のことです。例えば、株価が高値を更新したとしても、それはそれであり、移動平均線で何本分使用しようがあまり違いはありません。そういった個別の変数はそのまま用いてそれらのパラメーターを最適化しません。

解説)モデルの最適化の話であって、説明変数は説明変数であって、最適化しないということです。

Q ライブ運用が開始した時点でどれくらいのレベルでモデルが運用に携わりますか?使う時と使わない時などがあると思うのですが。

ドローダウンがある時に動かしたりすると大抵うまくいかないですが、私がマクロニュースを見てファンダメンタルで取引する例を挙げますが、下降トレンドが見えていて手動で取引しようとしたときに、S&P500等のインデックスであれば、30%等ずっと下がり続けることはありえないので、ロングオンリーの戦略で少し減らしてリスクを減らしつつ、ショートオンリーの比重を増やしたりするようなリバランスを行ったりします。

例えば、システムのそういう調整をして半年間でシャープレシオ4.0、していない場合で3.2だとすると大差はないですが、システムを稼働して一日中何もしないのもつまらないので、自分が間違っていたとしても、過去30年でうまくいっているような戦略があれば多少利益は減らしてもうまくはいっていますし、自分が合っていれば少し収益を足すことが出来ます。

Q どのようなトレーダーが機械学習を使うべきでしょうか?

A)私が知っているマニュアルでトレーディングする人は物凄い自己認識的で自分の投資戦略が機能しているかどうかを確認するのに物凄い時間を使っています。だから、投資は物凄い難しいんですけどね(笑)

だから、機械学習は全ての人にとって必要だと考えています。

また良いことに、機械学習で市場予測をして失敗することももちろんあります。難しいですから。でも、こういった技術はGoogle等の会社に就職する機会を与えてくれます。今ではどの業界でも機械学習を使っていますし、単なる仕事ではなく、とても面白いプロジェクトだらけですから、トレーディングを諦めても良いことはあります。

Q 人工知能と機械学習は一緒でしょうか?違うのでしょうか?

A)学術的には違うでしょう。機械学習は人工知能の部分集合と言ってもいいです。機械学習は膨大なデータの中から学習することを目的とします。対して人工知能はよりヒューリスティック(答えが導けない)です。一般的な話ですけどね。

Q 機械学習で価格予測だけではなくリスクを抑えることも出来ると言っていました。こういった多様化(diversification)について考えをもっと教えてください。(機械学習で出来ることについて教えてください)

A)リスクを抑えることは常に第一に考えることです。まずは、複数資産に分散させます。もしくはペアトレーディング等のように時間方向にリスクを分散させたりもします。もし、余剰資金が出来たら、既存マーケットより、新しいマーケットにリスク分散させます。どんなにシステムが良くても、将来は誰にも分からないので、去年(インタビュー時期2016年)起きたフラッシュクラッシュ等もそうです。

私はPCAやエクイティカーブ(Equity Curve)等の技術を使いますが、株を取引する際は、結局株価をフィルタリングしているにすぎないので、エクイティカーブに投資しているのであって、システムに投資しているわけではありません。それを理解する必要があります。

Q グローバルリスク評価(global risk metrics)といっていましたが、それは具体的にどういうことを言っているのでしょうか?

A)VIXや先物契約の限月別のスプレッド等です。リスクに関する指標もたくさん予測出来ることがあります。

Q では、ボラティリティが上がると分かっていたら、どのように対処するのでしょうか?

A)ボラティリティが大きくなれば少なく投資して、小さくなれば大きく投資するなどです。私が最初にインデックスをロングしていたときは、VIXが大きくなっていったらポジションを閉じる等をしていました。

Q 機械学習がトレーディングにおいてだんだん目立つようになっておりますが、これがマーケットにおいて欠点なのか良いことなのかについてお答えください。

A)良いことだと思います。機械学習でも結局市場を予測しているわけではなく、予測を手伝っているだけですので、取引すれば市場がより効率的になるからです。

Q シストレを専門にやっている人で、今後10年や20年で市場に対してエッジが取れなくなっていくのでしょうか?

A)それはないと思います。取引の時間軸もあるので。スキャルピングであれば100%エッジが取れなくなっていくと思います。

Q 他のトレーダーと沢山情報交換をしているようですが、どういったサークルではどういうメリットがあるのでしょうか?

A)それは素晴らしいと思います。私は一年半前にあるランダムな集団と出会いましたが、それから私のパフォーマンスは3倍になりました。他の人たちがどういった戦略でどれくらいのパフォーマンスが出ているのか分かりますから、自分も同じような戦略を探すようになるからです。また、一般的な話ですと、ほとんどのトレーダーはマニュアルですから、そういった人々とはほとんど議論することはないように見えますが、彼らもシステム等については分かっていることが多いので、どういったインジケーターを使っているか等について話し合うことは出来ます。

あと一人でずっと株価を予測して感情的になるのも寂しいですからね(笑)

Q 継続的な学習に対する態度について教えてください。どのように日々成長しているのでしょうか?

A)私は学校が好きです。世界は新しいことで満ち溢れています。私はトレーディング以外でも他にもビジネスをいくつかやっていますが、本を読んでそれを実行して報酬が貰えるというのは非常に素晴らしいことで、あなたが好きで学んだことをお金にすることが出来るからです。つまり、知識があればあるほど自由になれます。

Q あなたが学んでいることで直接トレーディングに関係のないこともありますが、最近学んだことについて教えていただけますでしょうか。

A)もちろんです。あらゆることについて木構造のようにある構造を持ちます。パターンがあります。

Q 今後5年10年でどのようなことに力を入れたいですか?

A)私の夢はビリオネアになって、子供たちが無料で学校に行けるように支援することです。

(中略、彼の夢)

Q 最後の質問になりますが、初心者がアルゴリズム取引を始める前に何から勉強すればよいでしょうか?

A)まずは基本的な数学と統計の知識は必要です。CourseraやADAXがおすすめです。しかも、無料です。

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