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おかいこさん #方言note in埼玉

「おかいこさんは、なかなか、かわいいべ。」

僕は小さい頃、よく親戚の家に遊びに行っていた。そこには、おばあさんが、今では珍しい藁ぶき屋根の家に住んでいて、2階で蚕を育てていた。当時は、蚕を育てている家は少なかったのだが、昔ながらのやり方で育てて、出荷していたようだった。

「桑の葉を、いいあんばいに、こう、おっぴろげておけば、勝手に食うから」

畑でとってきた桑の葉を、いい感じにばらまくのだが、僕は苦手で、おばあさんは、上手に広げていた。僕は、おかいこさんが、その葉っぱをモリモリ食べるの見るのが好きだった。

「そろそろ、昼飯だから、新宅に行ってみんべ」

お昼を食べに、おじさんの家に行くのだが、この家は敷地内に、私鉄の線路が走っている。山から掘り出したセメントを運ぶ貨物が通ると、地響きがする。

「この道を上がんのが、この歳だと、よいじゃね。あんたみたいに、わけぇなら、あがれるんだけんどなぁ」

ちなみに、僕はこの線路が好きだった。線路の上に寝そべった事もある。夏の日だと、鉄の焼けた匂いがして胸が熱くなった。

「うどんは、しょっぺい感じがいい。めんつゆは、真っ黒がいい。」

昼はうどんが良い。こちらの家では、手作りのうどんが、いつも大量に合った。これが美味しかった。

関東のうどんは、関西の違って色が濃い。
真っ黒だ。色と同様に、味もしょっぱい。ただ、食べだすと美味しくて、たまに思い出して食べたくなる。

「また、休みになったらこいや。野菜、つくっておくから。」

作っておくというのは、野菜を育てておくという意味ではない。取った野菜を洗って、泥を落として、袋に詰めて、スーパーで売ってる状態にしておく事を「つくっておく」言う。手間をかけて、野菜を作っておくよ、という意味だ。これは、辞書にも載っていない。

埼玉は、地域によって言葉と文化が異なる。私は長い事、秩父の家にお世話になっていたので、この地気に文化が好きだ。秩父祭りの掛け声も好きだ。

蚕が葉っぱをモリモリ食べる音と共に、おばあさんの野菜をつくっておくからという言葉が、今でも頭に残っている。

田舎と都会の真ん中の地域、埼玉。
盆地が多くて、夏が暑いけんども、人も熱いべ。暑い夏には、かき氷がうまい。たまには、食べに秩父に来たらいいべ。来るのが、ちょっと、よいじゃないけんど、みんな、いい人だからさ。

「おかいこさん」を育てているうちは、最近減ったなぁ。
あの頃は、かわいかったなぁ。

(おしまい)

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こちらの作品は、猫野サラさんの「#方言note」参加作品です。
サラさん、とても素敵なイベントをありがとうございます。七夕まで募集しております~😆


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