見出し画像

メメモリの世界観について考える2~生命の樹~

【※重要※】この記事は同シリーズ第2回目の連載となります。1回目見たことないよ~という方は先にそちらをご覧になってからこの記事を読み進めてくださいね。


 はろはろ、鴇乃カナタです。先日公開した第1回の記事が好評だったので、早めに筆をとりました。今回も深堀り、していくぞ!
《第1回の記事はこちら↓》

 前回取り上げたのは「ふたつの神器」であるロンギヌスの槍ティクーンの杖について
 
これらは神あるいは天使がもたらしたものであり、それぞれ破壊と再生のような能力を持っている、ということをご説明しました。
 今回の記事は、その神器をもたらした神や天使が住んでいるとされる「生命の樹」「メメモリ世界の行く末」について考察していきます。

生命の樹って何?

 まず、生命の樹とはなんぞや、という話ですよね。様々な作品で取り上げられる題材なので知っている、あるいは聞いたことがある、という人も多いかもしれないので、先に原典の方を解説しておきます。

生命の樹(せいめいのき、Tree of Life)は、旧約聖書の創世記(2章9節以降)にエデンの園の中央に植えられた木。命の木とも訳される。生命の樹の実を食べると、永遠の命を得るとされる。
旧約聖書において神がアダムとイブ(エバ)をエデンの園から追放した理由は、知恵の樹の実を食べた人間が、生命の樹の実までも食べて永遠に生きる事がないようにするためであったとされる。

Wikipediaの「生命の樹」のページより抜粋

 おそらく、一般的に知られているのは生命の樹ではなく、知恵の樹の方ではないでしょうか。アダムとイブ、禁断の果実、失楽園、などはかなり有名なお話です。
 ざっくり解説しておくと、神はエデンの園という楽園に沢山の樹を植え、その樹になった実はひとつの例外を除きなんでも食べていいとしていました。そのたったひとつの例外が、知恵の樹の実だったのです。
 知恵の樹とは、善悪の知識の樹。つまり、その知恵の樹の実を食べることで、楽園では神様しか知らないはずの善悪を人間も知ることになってしまうわけです。しかし、

……人間が善悪を知ることに問題なんてあるの?

 そう思われる方もいると思います。私だってそう思う。
 ですが、このお話において重要なのは「人間が知恵の樹の実を食べてしまったこと」、つまり、「食べてはいけないと命じた神の命令に背いてしまったこと」そのものなんですね。
 神様は神様自身だけを唯一絶対としており、自分のペットである人間が言うことを聞かなくなったら困るわけです。命令に従って動くはずのロボットがプログラムされていない勝手なことをし始めたらみんなビックリしますよね。それと同じです。
 そのため、二人が命令に背いたことを知った神様は、罪に対しての罰として二人を楽園から追い出してしまいました。この出来事を「失楽園」と呼びます。ちなみに、この時二人を神様の命令に背くよう唆したのが蛇であったため、蛇はその後の世界において手足をもがれ地を這う生き物になったと言われています。

 ……と、知恵の樹についてはこのあたりでしょうか。今回登場するのは、知恵の樹ではなく、生命の樹の方ですね。
 生命の樹は、その樹の実を食べると神に等しい永遠の命が得られる……ということ以外には目立った記述のない樹なのですが、メメモリでは極めて重要な役割を持っています。

翠ロザリーのメモリー第2話

 前回ティクーンの杖を紹介した時にはあえて触れなかった前半の内容に触れていきましょう。

この世界は生命の樹と、生命の樹に住む天使によって守られている。
そして生命の樹の根からは邪悪の樹が伸び、そこには人類の破滅を願う悪魔たちが住んでいる。 その悪魔たちが復活しようとしていた。

 悪魔は前回教皇について取り上げた時に少しだけ登場しましたね。教皇に取り付き、クリファの魔女を暴走させ、世界を滅ぼした黒幕です。
 天使の方はティクーンの杖をもたらした時以来の再登場となります。なんで神器の両方とも神様がくれなかったの~の疑問は未解決だったのでそのままになっていたわけですが。
 残念ながら、天使が領主──プレイヤーに直接接触してきたことはありません。情報の大元は、ロザリーが語ったもの、そして最近追加されたモルガナという異世界人のもの、──あるいは、メルティーユのメモリーに一瞬だけ登場したとある天使の名前がほぼ全てです。

Q.最近追加されたロザリーは天使じゃないの?
A.いいえ、ロザリーは天使ではなく「使徒」です。

使徒ロザリーのプロフィール

 使徒とは、天使と契約を交わし力を分けてもらった魔女のこと。メモリーによると封印されていた悪魔の覚醒に天使側も焦っているからこそ契約がトントン拍子に進んだそうなので、普段は使徒契約は滅多に行われない、と解釈した方が良さそうです。
 ちなみに、カリタスの使徒の「カリタス」とはラテン語で愛を意味する言葉。愛の天使から祝福を受け取ったからこの名前なのかは不明ですが、自分を庇って亡くなった領主への愛を二百年もの間持ち続けたロザリーにはよく合っていますね。
 さて、そのロザリーがなぜ天使と契約出来たのか、ですが、それについてはメモリー内で語られています。

使徒ロザリーのメモリー第5話の一部分

 どうやら、契約する相手は天使側が選んでいるようですね。 天使は神の僕(読み方はしもべ。意味は部下、家来に近い)なので、その天使の力を分け与えられた使徒は天使の僕。つまり、神の僕の僕。部長の部下である課長の部下の俺、みたいな感じでしょうか。
 その事についてロザリーはボイスでこう語っています。(耳コピなので間違いがあればごめんなさい)

使徒は天使の僕。奴らの命に従う責を負うが、儂らは世界を救う旅の途中……それこそ天使たちが最も望むことじゃ。それゆえに、儂に力を与えたのじゃろう。

ロザリーのボイスより

 天使の望みは世界の救済。それは、悪魔が世界を滅ぼそうとしており、天使はそれに逆らい世界を、ひいては生命の樹を守る使命があるからです。
 では、どうして世界を守ることが生命の樹を守ることに繋がるのでしょうか。今回の疑問の答えを教えてくれるのは、ソテイラです。

ソテイラのボイス

──生命の樹になる実は、世界そのものである。

 これが、メメモリの世界観を考察していく上で最も重要な部分になります。
 生命の樹とは、あらゆる命の源。そのあらゆる命の中には、人間やその他の生き物達が生きる世界という舞台そのものまで含まれているのです。

翠ロザリーのボイス

 ……さすがに詳しすぎない?
 まさかのロザリー陰謀論ある?
と唱えたくなるところですが、それは置いておくとして。
(ロザリーは元々悪魔を封印するティクーンの杖を扱うために育てられた神官であり、二百年前の世界の滅びにも直面しています。そこからの経験談?)
 地の底から何かが這い上がってくるのであれば、大地がひび割れたり押し上げられるのは理解できますよね。でも、それなら『空へと墜ちる』のはおかしいのではないか。
 実はこの、『堕ちる』あるいは『墜ちる』という表現は以前にも登場しています。それがオープニングムービーです。

OPムービー1
OPムービー2

 堕ちる、墜ちるはどちらも落ちると似た言葉ではあるのですが、ただ単純に物を落としたような感覚ではなく、もっと深いところへ急速に落下するような、あるいは一度向かったら戻れない場所へ向かって進んでいくような意味を含みます。たとえば、堕天使の堕、の字は天使であることを捨てて地獄へ、神の命に逆らい罪を犯して悪魔になることを示す言葉です。
 それを把握した上でムービーの画像を見ると、不可解な点がありますよね。そう、二枚目の『宙に浮かんだ大地』です。
 空島のような名称で呼ばれる、何らかの力(大抵は極めて強力な磁力等)で空に大地が浮かんでいる現象はファンタジーなら珍しくはありませんが、少なくともこのメメモリ世界においてそれは「堕ちた」と表現されるような異常事態なのです。
 ではここで、最初に表示したロザリーのメモリーから抜粋した一文をもう一度。

そして生命の樹の根からは邪悪の樹が伸び、そこには人類の破滅を願う悪魔たちが住んでいる。 その悪魔たちが復活しようとしていた。

 世界を維持する大元である生命の樹、その音からもう一本の樹が伸びている、つまり二つの樹は根で繋がっているのです。
 キリスト教において、悪魔とはそもそも堕天使のことであると考えられています。つまり、生命の樹のようにキリスト教やユダヤ教の気配を色濃く感じるメメモリ界の天使と悪魔もまた、元は同じ存在だった可能性が高いということ。
 つまり、これまで謎の黒幕だった悪魔とは、元々は天使だったが何らかのきっかけで神に逆らい堕天したもの。その結果、神の創造物である生命の樹とそこから生まれたいくつもの世界を破壊しようとしている、という推測が出来ます。
 そして、天使達はそれに対抗すべく人間に例の「槍」と「杖」を渡したり、人間の魔女を使徒にしたり、と行動しているわけですね。
 槍と杖がメメモリ界に登場したのは二千年前。つまり、少なくとも二千年もの間二勢力は争い続けているということ。でも、ちょっと待って。
 世界は、ひとつではない、のです。
 ソテイラの発言からするに、世界はたくさん──それも、数え切れないほど沢山実っている可能性も考えられます。

ソテイラのメモリー第1話
ソテイラのメモリー第4話

 上手くぼかされていますが、ソテイラの言う「ケーキ」とは「世界」のことでしょう。それを踏まえてソテイラのメモリーを翻訳すると、こうなります。

ソテイラの世界はソテイラが何らかの手を加えたことで壊れてしまい、修復不可能になったため全てを片付けてまっさらにしてしまうしかなかった。
他の世界はどうなっているのかと覗いてみたら、そちらも大半が同じような状態だった。
主人公の世界は『ちゃんと』自然や生き物があって美しい。=それさえ残っていない世界がほとんどである。
※ソテイラは「実家」をまっしろでなにもない、と表現している。

 それを踏まえた上で、最後のメモリーを見てみましょう。

ソテイラのメモリー第6話

旅先で出会う物語にはほとんど関われない
=世界の行先に介入してはならない
→他人が作った世界だから?

本当の力が戻る、ソテイラを捨てる
=魔女としての力は強くないが、それは仮の姿である
→本当は「世界を作ることが出来る」程の力を持っている?

 怪しさ満点でヤベー奴の気配がしてきたわけですが、最後の最後の一文。これがソテイラの発言の中で最も重要であると筆者は考えます。

──ソテイラの『祝福』を、これからもずっと善き人たちに。  

 祝福とは、神に真摯な祈りを捧げた者に対して神から与えられる恩寵です。恩寵とは、神からの恵みや慈しみのこと。つまり、人間が自ら他者に与えるものではありません。
 実際、敬虔(読みはけいけん。意味は信心深く、自己を強く出さず慎ましいこと)な信者であるフォルティナのボイスでも「あなたの行く道に、幸あらんことを」と語っています。
 幸あらんことを、ということは「幸を与えますよ」という能動的な動きではなく、「幸せがあることを『願っている』」という意味です。
 言葉のあやかもしれませんが、自らの意思で祝福を与えようとしているソテイラは……

──ソテイラの正体は、異世界の神あるいは天使である可能性。

 と、しれっと混じってる割にガチでヤベー奴だったという結論が考えられるわけですね。ま、あくまで推測ですが。
 ソテイラの正体推測で少々脱線してしまいましたが、おそらく中身は人外であるソテイラから見て、多くの世界が崩壊してきているということは、天使VS悪魔側の戦いはかなり悪魔側に傾いているのです。(悪魔が崩壊させたにせよ、ソテイラのように自ら壊してしまったにせよ、生命の樹や世界を壊すことは悪魔の最終目的と矛盾しないため)

 ああ、そういえば皆さんは砂時計というものを知っていますか?上下左右が概ね対称的な形で、水平な場所に立てて置くと砂がサラサラ~と流れるあの砂時計です。
 この砂時計が、メメモリにも登場しています。気づいた人がいたらすごいですね。

メメントモリ公式YouTube
【MV Special Ver.】[神呪の魔女]イリア (CV 花澤香菜/Song by Daoko)【メメントモリ】
動画内より
同上

 画像だけでは分かりづらいのですが、この砂時計は一度砂が全て流れ落ちた後、反転しています。かなり意味深なシーンなのでよければぜひ動画内でその場面を確認してくださいね。(動画内0:55付近~)

 そしてこの砂時計と似たような形のものが、ゲーム内にもあるのです。

ゲーム内スクショ
ゲーム内「無窮の塔」からの切り抜き

 正直相当近くに寄ってみないと気づかないと思うのですが、この砂時計の中に閉じ込められているのは──二本の樹であると筆者は推測しています。
 上側、つまり表側は、緑が生い茂る豊かな大樹。対して、下側には上と比べて緑が少なく、細い枯れ枝ばかりの枯樹(あるいは単に樹の根っこかもしれないが)が描かれています。底には黒い泥、あるいは水のようなものも見えますね。
 そして、二本の樹は一本の幹で繋がっているように見えます。

……繋がった二つの樹?見覚えがありますよね。これこそまさに生命の樹と邪悪の樹だと思われます。おそらく、実際にここに樹が存在しているのではなく、象徴としてのアイコンに近そうですが。
 それがなぜここにあるのか。どうして無窮の塔なのか。
 無窮とは、永遠、永久のような果てのないものを示す表現です。実際、現在実装中の階層でも1000階を超えていたはず。中世に近い世界観を持つメメモリ世界のどこかにそんなものが生えていたらビックリしますよね。
 つまりここは、メメモリ界ではない、いくつも存在する世界のどこかではないか、と推測されます。時空の洞窟もクリア後に杖が表示されていることを考えると、おそらくはそうですね。
 ティクーンの杖が持つ「浄化」ではない方の能力──生命の樹に存在する世界間の移動。それを象徴する建物です。
 世界間を自由に移動できるなら、前回の記事の最後に取りあげたソテイラが持っているよく似た杖にも説明がつきます。あれで移動してきたんだなぁ、ということですね。……つーかパラデア達がいるところは間違いなく別世界だしな!そうじゃないと困る!
 
メメモリ世界において、重要な象徴である砂時計。それが、イリアのMVではひっくり返っていたのはなぜか。

世界を逆さまにひっくり返すことが、悪魔の目的だから。

 それこそが、OPムービーやロザリーの発言で「堕ちる」または「墜ちる」と表現されていた天変地異として表現される事態の正体だったのです。
 だから、ソテイラも言っていましたよね。焼いたケーキを、「ひっくり返した」と。
 完全に崩壊した世界では生命の樹と邪悪の樹のバランスもまた壊れ、世界は悪魔に支配され破壊され続けている。それを何度も何度も小さな世界の中で繰り返した末に、最後には本当に樹本体ごとひっくり返り、終焉が訪れる。そのために天使達は抗っているのではないか。これが筆者の予測です。

 ……ということで、メメモリ世界の成り立ちと悪魔の目的がおおよそ分かったところで今回はここまで。最後までお付き合い頂きありがとうございました!
 次回は今後の行く末を考える上で最も重要な人物である「イリア」について考察していこうと思います。次回をお楽しみに!

OPムービー3

※記事内に掲載された画像、スクショの転載はお控えください。記事に関する感想コメやツイートは大歓迎です。
※長くなりすぎるのでカットした「モルガナ」のメモリースクショを添えておきます。

異世界≒大樹になった他の実の世界からの来訪者
ティクーンの杖=天使の杖である証拠

オープニングムービーをもう一度見たい方


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?